時計を手にするきっかけなんて、色々あっていいじゃない! Watch meets Culture
カルチャーな腕時計たちVol.4
DCコミックスとRJ

DCコミックスといえば、アメコミ二大巨頭のひとつ。1934年に設立して以降、『スーパーマン』や『バットマン』『ワンダーウーマン』『グリーンランタン』などのヒーロー作品を次々と発表。コミックのみならずアニメ化や映画化も果たし、世界中で高い支持を獲得し続けている。なかでも圧倒的人気を誇るDCコミックスの代表作に『バットマン』が挙げられるが、この作品とのコラボレートを実現した腕時計がある。それも、子ども向けではない。『バットマン』が描く闇の世界を高級機械式時計で表現した、実にアーティスティックなタイムピースなのだ。

“スーパーヴィラン”をモチーフにした「ARRAW THE JOKER」

全米有数の経済都市であり、一方で凶悪な犯罪が頻発する都市ゴッサム・シティ。この街を舞台に、大富豪ブルース・ウェインが“コウモリ”をモチーフとしたスーツを着用してバットマンに変身し、時に特殊車両バットモービルや小型戦闘機バットウィングを駆使しながらさまざまな敵と戦っていく──。1939年に月刊誌『Detective Comics』で登場したこのヒーロー作品は、以後、アニメや映画、ドラマ、ゲームなど、多くのメディアで展開され、世界的な知名度と人気を獲得する。

コアなアメコミ・ファンであればともかく、一般的に馴染み深いのはやはり映画作品だろう。『バットマン』の実写映画が初めて公開されたのは1943年のこと。その後、1949年には『バットマン&ロビン』が、1966年には初の長編映画となる『バットマン/オリジナル・ムービー』がそれぞれ公開されたが、それから20年以上の時を経て製作された『バットマン』(1989年)は、監督に鬼才ティム・バートン、ブルース・ウェイン(バットマン)役にマイケル・キートンを起用し大ヒットとなった。

そして、この作品で強烈なインパクトを与えたのが、ジャック・ニコルソン演じるヴィラン(=悪役)、ジョーカーの存在だ。バットマンとの戦いで化学薬品の中に身を落とし、一命はとりとめたものの自身の顔が著しく変化してしまい、結果、異常な性質が顕在化。グリーンの頭髪に真っ白な顔、極端なまでに吊り上がった口元を携え、紫のスーツに身を包み、高笑いする──。異常さを表現するキャラクター設定としては出色の出来だ。そんな“スーパーヴィラン”をモチーフとした腕時計が2018年にリリースされた。それがRJの「ARRAW THE JOKER」だ。

RJ
ARRAW THE JOKER
221万4000円

テクスチャー感のあるホワイトダイアル、時分針やインデックスの随所にあしらわれたトランプのスート、そしてパープルまたはグリーンのストラップを組み合わせることで、“ジョーカー”を見事に表現。ストラップは他にブラックラバーも付属。世界限定100本。自動巻き、チタニウムケース、ケース径45mm。

『バットマン』誕生75周年の記念モデルが始まり

RJは2004年にスイス・ジュネーブで創業した気鋭のブランド。コレクションはすべて、海や地球、宇宙といった、人間の手が及ばないものから着想を得てデザインされ、それらを歴史やカルチャーといった人間の手が介在した要素と組み合わせることで独特な世界を築き上げている。そんなRJの独創性を象徴するのが同社が積極的に展開するコラボレート・モデルの存在だ。

さかのぼること2015年、RJは1980年代の名アーケードゲーム「パックマン」とコラボレートしたタイムピースを発表。以後「テトリス」や「スペースインベーダー」「スーパーマリオブラザーズ」など、アーケードゲーム・コラボを次々と展開し、話題を呼んでいる。そして、このコレクションと時を同じくして発表されたのが、DCコミックスとのコラボレートによる「バットマン-DNA」コレクションだ。2015年、『バットマン』の誕生75周年を記念して世界限定75本が発売された「バットマン-DNA」を皮切りに、翌2016年には第2弾となる「バットマン-DNA ゴッサム・シティ」を、さらに2017年にはコレクション第3弾の「スカイラブ バットマン」をそれぞれ発表。これらの成功を受けて、2018年に新たにスタートしたコレクションが「DC ヴィラン」である。

コラボレーション第2弾となった2016年発表の「バットマン-DNA ゴッサム・シティ」。ケースはポリッシュ仕上げとサテン仕上げがアシンメトリーに組み合わせられ、そのフォルムはバットモービルを想起させる。また、3層構造のダイアルにはスーパールミノバを塗布。その上にアプライドされたゴッサム・シティが暗闇で浮かび上がるようになっている。現在は販売終了。
2017年に発表された第3弾「スカイラブ バットマン」はスケルトン仕様で、ブリッジ上にバットマン・ロゴを配したモデル。バットマン・ロゴにスーパールミノバが塗布されていることに加え、サファイアクリスタルのケースバックにはメタライズ加工(金属膜化)によってゴッサム・シティの地図が表現されている。現在は販売終了。

モチーフは、犯罪者の“二面性”

「DCヴィラン」は『バットマン』に登場するヴィランにフォーカスを当てたコレクション。その第1弾としてリリースされたのは前述の「ARRAW THE JOKER」、そして「ARRAW TWO-FACE」の2モデルで、後者もまた、バットマンの大敵であるトゥーフェイスをデザインモチーフとしている。ゴッサム・シティの検事ハービー・デントが硫酸の入った小瓶に当たり、顔の左側に傷を負ったことでヴィランと化したトゥーフェイス。その名が示すとおり二重人格の犯罪者で、コイントスによってすべての行動を決定するキャラクターで、映画では1995年作品の『バットマン・フォーエバー』に登場。トミー・リー・ジョーンズの怪演によって、その異常な姿が見事に描かれている。

RJ
ARRAW TWO-FACE
279万7200円

時計の右半分と左半分で異なる仕上げを施すことで、“トゥーフェイス”の二面性を表現。時計本体もさることながら、カーフレザーのストラップもプレーンとストラクチャードを組み合わせており、キャラクター性をより強く感じさせるデザインになっている。ブラックラバーストラップが付属。世界限定100本。手巻き、チタンケース、ケース径45mm。

そんな「DCヴィラン」の2モデルがベースにしているのは「ARRAW」。ケースの2、4、8、10時位置に装備されたバンパーをはじめ、独特な形状のラグ、アロー型の時分針を備えたRJの旗艦コレクションだ。このモデルをベースに、「ARRAW THE JOKER」はチタン製のベゼルにジョーカーのモチーフをびっしりとエングレービング。ダイアルにはジョーカーの真っ白な顔を想起させるぼかし処理がハンドペイントで施されるとともに、時分針の先端とインデックスにはトランプのエースを象った意匠に。そして極めつけは交換可能な3本の付属ストラップ。ジョーカーのスーツ、そして髪の色にインスパイアされたパープルとグリーンのアリゲーターストラップを用意しているのだ。

チタン製のベゼルにはジョーカーのモチーフをエングレービング。ベゼル全体にこのモチーフをあしらうことで、カオスな状況を表現している。
石膏のような質感のホワイトダイアルはひとつひとつハンドペイントで製作されたもの。ジョーカーの肌の色を彷彿とさせる、印象的な仕上がりだ。

一方の「ARRAW TWO-FACE」は、ヴィランの二面性を表現するべく、時計本体を左右異なるデザインにした。ダイアルは左半分をすっきりとしたデザインにまとめる一方で、右側をオープンワークにし内部のムーブメントを可視化。ベゼルも、左半分はサーキュラーサテンブラシ仕上げで美しく仕上げつつ、一方はストラクチャード仕上げを施しており、時計の右半分はまさに、硫酸で負傷したトゥーフェイスの半身を想起させるものだ。

つまりが「DCヴィラン」は、高級時計に用いられる技法を駆使して製作されたコレクション。モノの価値が分かる大人のアメコミ・ファンが手にしてニヤリとできる、完成度の高いコラボレーション・ピースなのである。

ダイアルは左半分をシンプルに、右半分をスケルトン化する大胆なクリエイション。トゥーフェイスが意思決定を行う際に用いるコインのモチーフも配され、これは秒針として機能する。
右側のベゼルとケースにはストラクチャード仕上げが施され、酸を浴びたトゥーフェイスの姿を表現。

DCと並ぶアメコミのビッグネーム
「マーベル」とのコラボもスタート

RJ
RJ X スパイダーマン
279万7200円

2018年、RJはアメコミのもうひとつのビッグネームであるマーベルともコラボレート。そのファーストモデルとして発表されたのが「RJ X スパイダーマン」だ。トランスパレントのダイアルには、ラッカー仕上げによるスパイダーマン・ロゴが浮かび、ケースバックにはメタライズ加工でスパイダーウェブ(蜘蛛の巣)も表現されている。世界限定75本。手巻き、ステンレススチールケース、ケース径48mm。

問オールージュ●03-6452-8802
www.eaurouge.tokyo

  • Text竹石祐三、