MAX重力加速度1.2G! GT-Rのフル加速も再現できる日産ドライビングシミュレータ

僕らの手に届く価格帯のEVリーフもあれば、世界に誇るスーパーカーGT-Rも作り出す「技術の日産」。そのハイレベルな開発力を支えている存在の1つにドライビングシミュレータがあります。

エンジンレスポンスの味付け、走行モードのバランス確認や、走行中に迷わず操作できるコックピットのスイッチやダイヤルまでも、リアルなドライビングシミュレーターがあるからこそ煮詰めて編み出せるというもの。

現代のクルマづくりにおいてなくてはならない存在ですよねー、と、アタマでは理解していましたが、実際のゲンブツを見て思わず「なんだこの巨大なテクノロジーの塊は!」

最新世代のフルサイズシミュレータ

実物大のバイクコントローラにまたがって、画面内のバイクを操作するハングオン(セガ・1985年)から連なる体感ハードウェア・コンテンツの歴史。近年は視覚をジャックするVRゴーグルの台頭によって、よりリアルにコトを”感じる”ことができるようになりました。さらに聴覚や触覚を”感じさせる”ハードウェアやコンテンツも登場してきており、これからはもっともっと、デジタルでよりHi-Fiな体験ができるようになるんだろうなあと嬉しさもひとしおです。

Oculus Questを手にしながらそう考えていたとき、自動車メーカーの日産から「ウチのドライビングシミュレータを体験してみませんか?」とお誘いがありました。なんと。ドライビングシミュレータといったら、体感ハードウェア・コンテンツの究極形の1つ。これは学びある!と感じ、二つ返事で体験会に参加してきましたよ。

向かった先は神奈川県厚木市にある日産テクニカルセンター。その敷地面積は116万平方メートルという広さで、なんでもディズニーランドとディズニーシーがすっぽりとはいるサイズなのだとか。1万5000人ものスタッフが常に車の設計、試作、実験を行っている技術開発拠点で、日産の心臓部の1つです。

GT-RやフェアレディZといったスーパーカー・スポーツカーから、セレナのようなミニバン、ノートといったコンパクトカーなどなど、オールラインナップでほとんどのカテゴリのクルマを作っている日産ですもの。使っているドライビングシミュレータもスゴイものなんだろうなあ…と思っていたら!

そこには想像を遥かに超える物体がありました。

日産が過去に利用していたドライビングシミュレータはクルマと、クルマを動かす土台&アクチュエーターと、180度プロジェクタースクリーンで構成されていたとのこと。僕が想像していたドライビングシミュレータHexapodがまさにソレ。

 

しかし2017年に導入されたこのドライビングシミュレータは、直径6.5メートルのドーム内にクルマを入れ、7台のプロジェクターで360度スクリーン、5.1チャンネルスピーカーで立体音響を実現してる! Zガンダムの全天周囲モニターか、エルガイムのフロッサーシステムか!

その上でドームがレール上を自由自在に動きまくる、超巨大なフルサイズドライビングシミュレータシステムになってる!

6本のアクチュエータで傾き(プラスマイナス15度)、回転(プラスマイナス160度)、高さ(プラスマイナス0.25メートル・最大0.9G)を制御するときた。

さらに45メートルと15メートルのレールの上でドームを動かし、最大1.2Gまでの前後左右の重力加速度を体感できるシステムとなっています。フィジカルすぎやしませんか。

ハイレスポンス&ローレイテンシで脳がダマされる

ドーム内のクルマのハンドルを握り、アクセルを踏むと、リアルタイムで車両運動のシミュレーション計算が行われ、3D CG映像、立体音響を生成。同時にドームがダイナミックに動きます。視覚(映像)、触覚(振動、加速度、ハンドルの反力)、聴覚(音)でリアリティを追求しているのですね。

映像そのものは、最新のドライビングゲームのような写実さはありません。シンプルなCGです。しかし速度感はストレートに伝わってくるし、道路のどの部分を走っているのかもつかみやすい。

加えて触覚を刺激するシステムが入っていることで、操作感覚というか、乗車感覚がめっちゃ本物なんです。

アクセルを床まで踏み込んで加速すると身体がシートに沈み込み、ハンドルを切ると身体が振られて遠心力で外側に引っ張られる。勢いよくコーナリングをすると、内側のタイヤが浮き、外側のタイヤがぐにゃっと潰れるような感覚もハンドルから伝わってくる。うわ、めちゃくちゃリアル。リアルすぎて脳がバグります。これ、実車で実際に道を走っているものだと訴えかけてきます。

レイテンシの低さにも驚きです。サイズのわりには軽量(とはいっても1.5トンはある)なドームを、実車と同じレスポンスで動かすって難しいのではと思ったのですが、ハンドル、アクセル、ブレーキの動きとドームの動きにいっさいの遅れを感じません。小刻みにハンドルを動かしてもストレートに追従する。この打てば響きまくりなハードウェア…ほしい!

ドライブモードを変更したときの感覚の差も明瞭で実にすばらしい。ハンドル、アクセル、ショックアブゾーバーのレスポンスの差が手応えとなって伝わってきます。スポーツモードはヘビーな乗り味だし、乗り心地のいいスタンダードモードはややダル。車種や走行シチュエーションによって異なる、最適なモードのチューニングにもこのドライビングシミュレーターが活躍するのでしょうね。

試作車をつくる前の3Dデータの状態からでもクルマの挙動をチェックできるし、急に人が飛び出してきたシチュエーション、圧雪路から凍結路など路面状態がいきなり変化したときの動きも確認できる。急に人が飛び出してきたシーンなど、テストコースでも実験しにくいことを高精度でテストできるこのドライビングシミュレータ。自動運転の世の中も差し迫っていますし、その開発もコレが活用されているんだろうなあと思うとわくわくしっぱなしです。

なおシステム全体の気になるお値段はナイショですが、少なくともtoto BIGを当てたくらいじゃとうていセットアップできないみたいですよ…?

取材協力・日産自動車
https://www3.nissan.co.jp/