Reno、CC、iQOO、RedMiなど知らない名前のスマホが増えている
新ブランドスマホが次々登場、カメラやゲームに特化したスマホの時代がやってくる

スマホの名前を聞けばメーカー名がわかるように、各社のスマホには特定のブランド名が使われている。iPhoneはもちろんアップルのスマホだし、Galaxyならサムスン、Xperiaならソニーといった具合だ。だがここに来て、複数のブランド名で製品展開を行うスマホメーカーが増えている。いったいなぜだろうか?

 カメラ重視のスマホでファーウェイに挑む、OPPOの「Reno」

数あるスマホの中で、カメラ性能が優れている製品はどれだろう?おそらく多くの人がファーウェイの名前を挙げるのではないだろうか?ライカと協業したカメラを搭載するファーウェイの「P」シリーズは、世界的にもカメラ性能の高さは高い評価を受けている。カメラ性能を数値化して評価する世界的な評価指標、DxOMarkでもファーウェイの「P30 Pro」は2019年7月時点で最高点を付けている。

スマホのカメラで独走ともいえる強さを見せるファーウェイに挑もうとしているのが、日本でも7月3日に新型スマホ「Reno 10x Zoom」を投入したOPPOだ。OPPOのスマホと言えば、新興国では高い人気を誇っている。その秘密の1つは高画質なセルフィーを撮影できるフロントカメラ性能の良さ。SNSにセルフィーを上げコミュニケーションをとる東南アジアや中国語圏の若者たちにOPPOのスマホはバカ売れしているのだ。しかしそのOPPOが今、セルフィーではなく「カメラフォン」として新しい製品展開を始めている。それがRenoなのだ。

高画質カメラを搭載するOPPOのReno 10x Zoom

iPhoneのモデル名と言えば「XR」や「XS」、Galaxyなら「S」や「Note」のように、OPPOのスマホの代表的なモデルは「R」の型番が付いている。しかしこの「R」シリーズはここ数年フロントカメラ性能を年々意識してきたことから、「OPPO=R=セルフィー」という固定されたイメージが植え付けられてしまった。OPPOが日本に上陸した時もしきりに「カメラフォン」というアピールを行っていたが、アジア各国市場を常に見ている筆者は大きな違和感を覚えたものだ。「OPPOと言えばセルフィー」これが誰もがもつイメージなのである。

OPPOのスマホはこれまでセルフィーを強化したモデルが多かった

OPPOはカメラが上下に動く「FIND」など高性能なスマホも出しているが、そのFINDも高画質なフロントカメラを普段は隠すためにモーターでカメラを動かすギミックを搭載したのだ。つまりOPPOの製品はどれをとってもセルフィーとは切り離せない製品という印象を消費者に与え続けてきたのである。今回発表されたRenoは、そのイメージをうちやぶるべく登場した新しいスマホなのだ。

製品名が機能を表す。新ブランドは成功体験からの脱却だ

Reno 10x Zoomは光学8倍ズームレンズを本体内部に横に配置する、ペリスコープ構造を持った製品だ。従来の高倍率ズームレンズ搭載スマホはデジカメのようにレンズが飛び出すものが多かったが、Reno 10x Zoomは普通のスマホの厚みの中に高倍率レンズを収納しているのである。ちなみにファーウェイのP30 Proも同等機構のレンズを備えているが光学ズームは5倍。OPPOのほうがより高倍率なレンズを搭載しているのだ。この8倍ズームレンズを基本に、ハイブリッドで10倍、デジタルでは最大60倍ものズームを実現している。

Reno 10x Zoomはこの高倍率ズームレンズの搭載だけではなく、フロントカメラにもこだわりを見せている。普段はフロントカメラは隠れており、使うときだけモーターでせりあがってくるのだ。この構造が本体上部の左側を支点にして、扇が開くように出てくるのである。この構造だけでもなかなか面白いが、フロントカメラ画質は1600万画素とOPPOの製品としては控えめだ。例えば日本でも発売されているOPPO R17 Proのフロントカメラは2500万画素。こうしてみると、やはりRenoはフロントカメラよりもメインカメラを重視した製品ということがわかる。

フロントカメラは扇形のように動く(写真は下位モデルのReno)

Reno 10x Zoomは名前にわざわざ10倍ズームとつけるくらい、ズーム性能にはこだわりを見せている。これがファーウェイのスマホなら、新製品はズームに優れている、とカタログに一言記載するだけで誰もがその性能を信じて購入を意識するだろう。しかしOPPOのスマホがいくらいいカメラを搭載したところで、消費者はすぐに飛びつかないだろう。そのため、長ったらしいもののわざわざ機能説明ともいえる10倍ズーム、の名前を製品名につけているのだ。

そしてさらに、従来のOPPOのイメージを打ち破るために、新たにRenoというブランドを立ち上げ従来製品とは全く違うラインであることを大きくアピールしているのである。OPPOのスマホの世界シェアはサムスン、ファーウェイ、アップルの上位3社から少し引き離されてはいるものの、それに次ぐ4位グループにつけている。だが今後も販売数を増やしていくためには新しい消費者層にスマホを買ってもらう必要がある。そのためにはこれまで積み上げてきた「セルフィーに強いメーカー」のイメージを打ち破る新しい製品が必要なのだ。そしてそれがRenoなのである。

海外でもRenoの広告は従来のOPPOをイメージさせない、大胆なものが多い

類似のアプローチは新興国でOPPOのよきライバルといえるVivoも起こしている。今年になってから発売した「iQOO」はハイスペックなCPUを搭載した、Vivoらしからぬ製品だ。VivoのスマホもOPPO同様、セルフィーに特化した製品が多い。そしてVivoは新たなユーザー層獲得のために、ハイエンドフォンを投入する道を選んだのだ。しかし従来と類似の製品名では見向きもされないだろう。iQOOはその読み名もちょっと気になる存在だし、他のメーカーなら絶対につけない読みにくそうな名称だ。そんな名前をあえて付けることで、従来のVivo製品ではないことを訴えているのである。

スマホ新興メーカーのシャオミも、7月2日に「CC」というブランドのスマホを立ち上げた。CCには様々な意味が込められているが、その1つがカメラだ。シャオミのスマホは高速CPUを搭載しながら激安価格でユーザーを集めてきた。しかしその結果、ユーザーの大半は30代を超える男性ばかりになってしまい、スマホの流行に敏感な層からはそっぽを向かれてしまうようになってしまった。CCは社内の20台前後の社員が集まり製品開発を行ない、従来のシャオミのユーザー層とは全く異なるスマホを作り上げた。

シャオミの新スマホ「CC」は若いユーザーを狙った製品だ

Reno、iQOO、CCはいずれもこれまでの自社の成功体験をいったんリセットし、新しいユーザーを獲得することでスマホの販売数を引き上げるための戦略的ブランドだ。そしてそれらの製品が自社内でも競争を行うことで、最終的には製品全体の魅力を引き上げることになるだろう。この動きは今後他社にも広がりを見せるかもしれない。

低価格ブランドは分社化、ブランド分割でメーカーの魅力を引き上げる

スマホの新ブランドは新しいユーザー層開拓だけではなく、自社製品のブランディングを高めるために行う動きもある。前述のシャオミは今年に入ってから低価格ブランドの「RedMi」を分社化し、シャオミ本体とは切り離す動きをはじめた。「高スペックで低価格」で有名なシャオミのスマホは現在「Mi」と「MiX」という2つの製品を柱にしている。しかし実情は「低価格でそこそこのスペック」な格安スマホが売り上げの大半を占めている。その格安スマホがRedMiなのだ。

RedMiは1万円台のスマホながらも高画質カメラを搭載するなど、スマホのライトユーザーには十分な製品になっている。インドではスマホ全体の売り上げ順位のうち、RedMiが複数入るほど人気になっている。それほどまでにRedMiのコスパは高く、シャオミの顔となる存在にもなっているのだ。

シャオミで売れているのは実はRedMiという低価格モデルだ

ところがRedMiが売れれば売れるほど、シャオミのスマホ全体に「安物」のイメージが付きまとってしまうのだ。考えてみれば、アップルストアには安物と呼べる製品は一つも置かれていない(たとえ低価格な製品があっても安っぽくはない)。だからアップルの製品に対して誰もがあこがれやブランドを感じるのだ。一方、スーパーの特売品コーナーのような製品と同じ場所に高性能な製品が同時に置かれていたらどう感じるだろうか?少なくともプレミアム感といった印象は得られないはずだ。

シャオミはRedMiを切り離して別会社にし、シャオミ自身は前述したように「CC」そして既存の「Mi」「MiX」の3つのハイエンド製品を中心に展開。これによりシャオミというブランドそのものの価値をさらに高めようとしているのだ。一方RedMiは低価格に徹して台数を出すことで、シャオミ全体の世界販売シェアアップをけん引する存在になるだろう。

早くも登場したRedMiブランドのスーツケース。こんなグッズ販売もファンを増やすきっかけになる

シャオミ以外でも、OPPOは「RealMe」というブランドでどうように低価格スマホの展開を始めている。またファーウェイはすでに長年にわたり「Honor」ブランドを本体と切り離して中国で展開中だ。Honorは安物というよりも、若い世代に特化した製品として独自の展開をしており、ファーウェイのお店には寄り付かない若者を引き付けている。1つのブランドのスマホがすべての消費者をカバーするのではなく、ファッションブランドのようにターゲットごとに異なるブランド展開をするのがこれからのスマホのトレンドになるかもしれない。

ファーウェイのHonorは古い時期からファーウェイ本体と切り離されて運営されている

スマホメーカーの列順は2019年にはいりファーウェイがアップルを追い抜いたと思いきや、米中貿易問題で窮地に陥り、またアップルも新製品の販売不振で下位グループとの差が縮まりつつある。4位グループにつけるOPPO、Vivo、シャオミがここで本機を出せば、上位3社へより1本近づけるかもしれない。

  • Text山根康宏