お茶もサードウェーブ! 〜日本茶でシングルオリジンが盛り上がる3つの理由〜

ここ数年、日本茶への注目度が非常に高まっている。ペットボトルのお茶に慣れ親しんだ向きにとっては、“急須から注ぐ”という行為も目新しく、コーヒーのハンドドリップに通じるカッコよさを感じているのだろう。

そう、そこです! 日本茶もコーヒーも同じ嗜好品。コーヒーのサードウェーブ(第3次コーヒーブーム)のように、日本茶を捉える人たちが台頭し、そのブームが今や「日本茶を選ぶ際の基準」となりつつあるのです。

とりあえず「シングルオリジンの茶葉を選んでおけばOK!」なんてセリフも聞こえてくるほど、茶葉の種類や品種を好みでセレクトしたり、道具に凝ってみたり、はたまたアレンジするなど、従来の日本茶のイメージをくつがえすスタイルが席巻。……と言いつつも、はたして、そういった理由だけで「シングルオリジン日本茶」がもてはやされているのでしょうかか? 今回はそんな理由について考えてみたいと思います。


               シングルオリジンが盛り上がる理由

茶葉の種類が豊富で、新感覚な日本茶スタイルを楽しめるから!

でもその前に……まずは日本茶の基礎知識を!
日本茶にも「シングルオリジン(単一農園の茶)がある」と知られたことで、日本茶のポテンシャルが引き出された。ちょっと前までは「シングルオリジンのドリップコーヒー」を求めて行列を成していた人たちも、今や「コーヒーよりも日本茶!」という時流に。
そうしたシングルオリジンがブームとはいえ、そのよさを堪能するには、まずは日本茶の基礎を知っておこう。

銘柄の不思議!?

シングルオリジンとはすなわち単一農園の単一品種でつくられた茶葉のこと。つまり、ひとつの茶農家さんが、一種類の品種でつくったお茶であり、じつはこれ、日本茶業界では非常に珍しいこと。

意外かもしれないが、「煎茶」にするための茶葉の多くは<ブレンド*合組という>だ。たいていは【やぶきた】という最もスタンダードな味わいの品種を75%入れて、残りの25%は、他のさまざまな品種をブレンドし、風味を変えているのだ。

そうする理由は、「つねに一定の味わいの茶葉をつくる」ことにあり。いつでも同じようにおいしくいただくための工夫なのである。

よい茶葉は艶やかで、香気が爽やか

 

宇治茶を例に考えてみよう

ブランド=銘茶といえば「宇治茶」が思い浮かぶほど、お茶に興味があろうとなかろうと、誰もが知っている超メジャー銘柄だ。

そんな宇治茶の定義は「京都の宇治地方でつくられたお茶」となる? ……ブー、間違いです!

<歴史・文化・地理・気象等総合的な見地に鑑み、宇治茶として共に発展してきた当該産地である京都・奈良・滋賀・三重で生産され、京都府内の業者が京都府で加工した緑茶>を指すとある。

「えっ! 京都の宇治だけじゃないんだ」「なんとなく……騙されているような」 と不安になるが、法律として定められているので(商標登録証)、もちろん、なんら問題はない。

そしてまた、長年、日本茶はそのようにしてつくられており、現在でも日本茶のスタンダードはそうしたブレンド茶なのである。

いや、むしろ「ブレンド」という概念すらないほど、当たり前で、それに関してマイナスな思いはいっさいありません! 念のため。

ということで、時折、ウイスキーに対しても、「シングルモルトは最良で、ブレンデッドはよろしくない」と思い込んでいる人がいらっしゃるが、それも大きな誤解だ。

ちょっと語弊があるが、「ウイスキーのシングルモルト」にしろ「日本茶のシングルオリジン」にしろ、そう答えれば「通好み」と認識されるのが、うんちく好き&嗜好品の世界ではうれしいのかもしれない。

 

閑話休題&そして結論

「一カ所の農園の茶葉だけでなく、複数の農園やさまざまな品種をブレンドすることで、品質を一定化でき、生産数を安定させることができる」日本茶が流通の多くを占めているということだ。

 

すべてのお茶は「チャノキ」が原料だ

日本茶、紅茶、烏龍茶もすべては同じ木(ツバキ科の多年生植物=チャノキ)の新芽を摘んで加工したもの。ざっくり言うと、茶葉を発酵させないのは日本茶(緑茶)で、発酵させたものが紅茶や烏龍茶となる。

日本茶の種類?
ひとくちに「日本茶」といってもその種類と味わいはさまざま。品種も多く、産地も南から北へと幅広い。

日本茶の種類は大きく分けて12種類

 

・煎茶
茶葉を摘んで、すぐに蒸すと発酵が止まる。その後、揉みながら乾燥させた緑茶の一種で、いちばんよく飲まれているお茶。

・深蒸し茶
煎茶の蒸し時間の倍をかけて生茶葉を蒸したお茶。渋みが抑えられ、葉が細かくなるので濃い緑色になる

・玉露
煎茶の蒸し時間30~40秒の倍の時間をかけて生茶葉を蒸したお茶。渋みが抑えられ、葉が細かくなるので濃い緑色になる。

・玄米茶
水に浸して蒸した玄米を炒り、同量の煎茶と番茶を加えてつくられる。炒り玄米の香ばしさが特徴。カフェインが低く、健康的。

・焙じ茶
煎茶、番茶、茎茶などを強火で焙煎したお茶のこと。淹れると茶色に。カフェインが煎茶の半分で、身体にやさしい。

・粉茶
煎茶の製造過程で茶葉を葉と茎に切り分けるときの「粉」を集めたもの。お湯に溶けないため網目の細かい茶こしで飲む

・茎茶
煎茶や玉露の仕上げ過程で、新芽の茎だけを集めたお茶。とくに玉露の茎は、「かりがね(雁が音)」と呼び、珍重される。

・抹茶
玉露と同じく遮光して育てた茶葉を蒸し、揉まずに乾燥させる。*茎や葉脈を除いたのが碾茶で、これを石臼で挽いたもの。

・粉末茶
煎茶を粉末にしたもの。インスタントティーやティーバックに使用。水に溶けない粉茶や、抹茶とはまったくの別物だ。

・番茶
若葉でなく成長した茶葉を摘んだもの。摘採時期・品質・地域などが、「日本茶の番外」の意味ともされる。

・かぶせ茶
玉露のように茶園を覆うが、期間は1週間程度。太陽を遮断して新芽を育てるため、旨みが増して、濃い緑色のお茶になる。

・芽茶
煎茶や玉露の仕上げ工程で、芽の先の細い部分を採ったもの。一番茶・二番茶などの高級茶から選別され、旨みが豊富だ。

◎「品種」による分類

優良品種の一例 ←代表品種と思っておけばいい。

・やぶきた ・ゆたかみどり ・おくみどり ・あさつゆ ・さえみどり 

・さやまかおり ・おくひかり ・さみどり ・ごこう

◎「産地」による分類

日本茶の三大銘茶=静岡茶・宇治茶・狭山茶
「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」と詠われたように、静岡茶・宇治茶・狭山茶が日本三大銘茶と称されている。もちろん、このエリア以外でも茶葉は育てられ、茶がつくられている。

・静岡茶(静岡県)
日本のお茶生産量の4割を誇る、最大の産地。ここでつくられるお茶を静岡茶というが、「静岡茶」という銘柄ではなく、県内の各産地ごとの名称が付けられていることが多い。

・宇治茶(京都府)
生産量は全国5位だが(平成28年・農林水産省統計データより)、お茶の加工場数は静岡県に続き、第2位。茶の発展に貢献した長い歴史があり、高級茶の産地でもある。

・狭山茶(埼玉県)
東日本では、静岡県に次ぐ生産量を持つ。主に首都圏で消費されるため、知名度は高い。また、茶農家が自ら栽培した茶葉を製茶して販売までを一貫して行っているところが多い。

……うーん、複雑だ。日本酒にたとえるなら、前者はジャンルというかタイプ、スタイルの違いだ。純米酒を飲みたいのか、本醸造がいいのか、生酒がいいのか、冷おろしがいいのか……となる。そして後者は素材の違いで、酒米は山田錦がいいのか、美山錦がいいのか、五百万石がいいのかという違いといえば、わかりやすいだろうか?

茶農家さんや品種のことを知りたい!

有機農法や無農薬など、野菜や果物については「誰がどこで育てた」のか、「どんな生育方法」なのかについて、吟味するのが当たり前になっている時勢もあるだろうが、自分が口にするものの正体を理解したいという思いが強くなっている。
日本茶に対しても同様で、「●●●さんの◎◎◎茶」とあれば、よりいっそう大切にいただこうという気持ちにもなる。

冒頭で「シングルオリジン志向は、コーヒーのサードウェーブの影響」と記したが、もちろんそれもあるが、青果同様に、“顔の見える茶葉”を欲しているとも言えるだろう。

  1. 急須で淹れるスタイルの新鮮さ
  2. 顔の見える(直接でなくとも、素性がわかる)茶葉への安心感
この2点があって、シングルオリジンを求めるようになったのではと推測できる。