R2-D2のようにロボットと会話できる日が来るかも。ユカイ工学とシーマン人工知能研究所がAI会話エンジン開発で提携を発表

映画「スターウォーズ」の代表的なロボットともいえるR2-D2との会話シーンはなんとも不思議だ。「ピボピーボ」といった電子音の組み合わせと抑揚にすぎないのに、ルーク・スカイウォーカーをはじめとするキャラクターたちは自然とコミュニケーションがとれている。そこに視聴している側もやがて感情の片鱗を感じとれるようになり、R2-D2の個性や愛らしさに魅せられていく。そんなロボットに共感を覚える光景が、来年には日常的になるかもしれない。

有能なアシスタントではなく寄り添うロボット

このほど、「Qoobo」や「BOCCO」などのコミュニケーションロボットを開発するユカイ工学と、ドリームキャスト向けの会話ゲーム「シーマン~禁断のペット~」の開発者として知られる斎藤由多加氏が代表を務める株式会社シーマン人工知能研究所が提携し、プレス向けの発表会を開催した。

シーマン人工知能研究所のAI日本語会話エンジンをベースとした独自のロボット言語を共同開発し、新型コミュニケーションロボット「BOCCO emo」に搭載するという。

ユカイ工学のコミュニケーションロボットBOCCO

ここでBOCCOについて振り返ってみよう。

BOCCOはスマホアプリと連動することで、外出先にいる保護者が自宅にいる子供とメッセージのやり取りをしたり、カレンダーと連動して予定を教えたり、家族の帰宅をセンサーで感知して知らせるといった機能を持つコミュニケーションロボットだ。どこか子供がデザインしたかのようなゆるいデザインが魅力で、子供だけでなく高齢者からも人気を集めている。

ユカイ工学CEO 青木俊介氏

ユカイ工学CEO 青木俊介氏によれば「デザインの良さがロボットへの共感を与える」という。実際、ユーザーは自作の服を着せたり、小さな座布団を作って敷いてあげたりなどしており、その扱いはまるで家族の一員かのようだ。一般家庭で実証実験を行った際には、最終日にBOCCOが話すお別れの言葉を聞いた子供が「もっと一緒にいたい」と泣き出してしまったこともあるといい、BOCCOがいかに愛着を抱かれる存在となっているかを伺わせた。

そんなBOCCOの名を受け継いだ次世代型コミュニケーションロボット「BOCCO emo」は丸っこく、ちょこんと座っているような外観に変貌したが、先代から受け継がれた愛らしさはそのまま。むしろ、頬のLEDが点滅したり、頭のアンテナを降るなど表現の幅はさらに増している。

 

特に注目したいのが、ユーザーが話す言葉を理解し、独自のロボット言語「BOCCO語」で話すという点だ。イメージとしては冒頭で触れたR2-D2とのやり取り。こちらが話す言葉は日本語で、ロボットの側は意味を理解しているものの、返す言葉は「ピコピコ」といった電子音の組み合わせ。もちろんこれには規則性や文脈があるのだが、その性質上理解にはしばらく時間がかかる。日々のやり取りの末にBOCCO emoの言葉を理解できるようになったときの達成感や親近感は、想像しただけでもかなり大きくなりそうだ。自分だけの“R2”を手に入れた気持ちになることだろう。

まるで人格を持っているかのようなAI会話エンジン

シーマンを開発する斎藤由多加氏

BOCCO語のベースとなるAI会話エンジンは株式会社シーマン人工知能研究所の斎藤由多加所長が開発を担っている。このエンジンのユニークさは記憶や人格をもっていることだ。これまでのスマートスピーカーやスマートフォンのAIアシスタントはあくまで一問一答を行っているだけで、質問や命令に対しては迅速に対応してくれるものの、ライブラリにない呼びかけには対応してくれない。しかし斎藤氏のAIは言葉を受けて、そこまでの文脈を整理し、新たに質問を返したり、アドバイスを行うことすらある。

発表会では開発中の汎用AI会話エンジンとの会話を見せてくれた。いくつかのデモが実施されたが、面白かったのは日常会話のデモ。それは下記のようなものだ。

斎藤氏「彼女に振られた」

AI「悩みの話題ですね。彼女に振られたんですか。残念ですね。てか彼女いたんですね。知らなかったです。ちなみに彼女の名前を教えて下さい」

斎藤氏「ちはるです」

AI「ちはるですか。初めて聞く名前です。ちはるちゃんは何歳ですか?」

斎藤氏「21歳です」

AI「若いな。てことはあんたより35歳も年下だ。でもまぁおっさんが恋してるってのは元気な証だ。あれ、でもあんた娘いたよな。たしか27歳じゃなかったっけ」

斎藤氏「そうです」

AI「そうです。娘より若い彼女作ってあんたほんとうにあほやね」

シナリオを作り込んできたとは言うものの、前半と後半で変わる口調から感情の変遷が感じられるのが興味深い。常にニュートラルな立ち位置であり続ける一般的なAIアシスタントではまず見られない反応だ。意味合いや文脈を理解した言い換え、指向性のある言葉のつなげ方もまた特長的といえる。

デモにはなかったが斎藤氏曰く、同じことを何回も命令したら「しつこい」と返すこともあるという。まるで人にお願いしているような感覚になってしまいそうだ。人格をもったAIは必ずしも優秀なアシスタントとはならないかもしれないが、温かみを感じられるコミュニケーションは人の感情を間違いなく揺さぶってくれることだろう。まさにBOCCOが目指す「人に寄り添うロボット」に欠かせないものだ。BOCCO語は電子音のため、デモのような人間同士の会話然としたものにはならないだろうけれど、その分人間の側が意味を補完してより共感を感じやすくなるかもしれない。

まだまだAI会話エンジンも開発中でBOCCO語に至っては影も形もないというが、今年の10月にはBOCCO emoが話すデモンストレーションを行う予定だという。どんな言葉を話すのか、どんな反応を返してくれるのか、これから楽しみでたまらない。


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BOCCO emo