格安スマホメーカーからのイメージを脱却!
女子スマホでアップル超えを狙うシャオミ

海外スマホ好きな人ならだれもが知っているのが中国のシャオミ。シャオミのスマホはハイスペックなモデルでも5万円程度で買えるコスパの高さが人気だ。また1万円台の激安スマホも多数販売している。しかし低価格路線を貫いた結果「格安」「イケてない」というブランドイメージがつきまとってしまった。そんなネガティブなイメージから脱却を図るべく、シャオミから女子向けスマホが登場したのだ。

デザインと自撮り機能を強化、「Meitu」ブランドのスマホも登場

「最新のCPUを搭載」「アップルやサムスンより安い」。シャオミのスマホの新製品発表会ではいつもこのようなキャッチフレーズが聞かれるものだった。しかし今年の夏モデルとして発売された「CC9」はこれまでの製品とはうって変わり、デザインや自撮り機能が大きくアピールされている。CC9はシャオミ社内の「90後」(中国で1990年代以降に生まれた世代を意味する)、20代の若い社員が開発からマーケティングまでを担当して登場したスマホなのだ。自分たちが欲しいスマホを自分たちと同じ世代に売る、そうして生まれたCC9は従来のシャオミのスマホとは全く異なる製品に仕上げられている。

シャオミの「女子スマホ」ことCC9。

まずは本体色のネーミングセンスが若々しい。「白色恋人」(White Lover)、「深藍星球」(Blue Planet)、「暗夜王子」(Dark Princess)の3色で、スマートフォンとは思えぬちょっとおしゃれな印象を受けないだろうか。そして本体背面には「XIAOMI」のメーカーロゴが入っているが、このロゴは着信や通知を受けると複数の色で光るのだ。CC9本体を裏返しに置いたときに美しくロゴが光る様はスマホというよりもアクセサリのように見えないこともない。この仕上げにはコストがかかるが、本体の性能以外の部分にも注力しているのがCC9の特徴でもあるのだ。

CC9の本体カラーは女性が思わずほしくなるネーミングではないだろうか。

カメラはメインが4800万画素だが、フロントも3200万画素とかなりの高画質だ。フロントカメラ画質だけでいえばシャオミのスマホの中でCC9が最も高い性能を誇っているのである。しかも美顔機能もしっかりプリインストール。美しいセルフィーが簡単に撮影できる。そしてより美しいセルフィーを撮りたい女性ユーザー向けには、「CC9 Meitu版」も提供されているのだ。Meituは2018年までセルフィーに特化したスマホを出していたメーカーだが、市場の競争が激しくなる中で自社スマホの開発から撤退。同社は女性iPhoneユーザーならだれもがインストールしているだろう美顔アプリ「BeautyPlus」の開発メーカーでもある。

CC9のMeitu版ははセルフィー特化の女子専用スマホといえる存在だ。

MeituのスマホはBeautyPlusなど自社の美顔アプリをカメラに標準搭載していた。そして自社スマホの開発を停止する代わりにシャオミと提携し、シャオミから「Meitu」の名前の付いたスマホを出すことにしたのだ。CC9 Meitu版はMeituの美顔アプリがプリインストールされており、標準版のCC9よりも美顔機能が強化されているためいままでMeituのスマホを使っていた女性たちの買い換えの受け皿にもなっている。Meituのスマホが無くなった今、市場で最も美しいセルフィーが撮れるスマホはこのCC9 Meitu版といっても過言ではないだろう。

中国の女子スマホだけでも市場規模は数億台と大きい

Meituのスマホは女性専用ではないものの、ターゲット層はほぼ女性だった。女性向けのスマホなんて日本には存在しないため、そんなニッチなものを作ってもビジネスが成り立つとは思えないかもしれない。しかし中国の人口は13億人で、その半分が女性とすると女子スマホの潜在ユーザー数は単純計算で6億人以上になる。さらにその中からセルフィーを楽しむ女性の数を推測すると、少なくとも1億人はいるだろうか。つまり女子スマホを作っても日本の人口相当の数が売れる可能性があるのだ。

Meitu以外にも中国には女子スマホメーカーは数社存在する。老舗と言えるのはDoovで、Meituよりも先にセルフィー機能を重視したスマホを多数展開していた。メインカメラを手前に引き出すとフロントカメラになるという、まるでASUSのZenFone 6のようなフロントカメラ強化スマホも出したことがあった。しかしスマホ本体の性能が低かったこと、セルフィーカメラ機能が後発のMeituを超えることができなかったことなどから、最近ではほぼんど製品を見かけることが無くなってしまった。

中国女子スマホメーカーの第一人者だったDoov。V1は手動ながら回転式カメラスを搭載。

スワロフスキーの人工ダイヤをあしらった「お姫様スマホ」を展開していたのがSugarだ。初期のモデルは本体の側面のベゼル部分に数カラットの人工ダイヤが埋め込まれており、スペック表には「カラット数」が記載されていた。もはやスマホというより装飾品だったのだ。しかし派手すぎるデザインが敬遠されたのが後発モデルではスワロフスキーの採用を取りやめ、若い女性向けの華やかなデザインの製品へと方向転換を行った。最新モデル「S30」は革張りデザインで高級感を漂わせている。Meituも革張りモデルを出していたが、ブランド品の高級ハンドバッグや財布を持っている女性たちはプラスチックやガラスではなく、革の外観のスマホを求めているのかもしれない。

スワロフスキーモデルも出していたSugar。S30は革張り高級スマホ。

これら女子スマホメーカー2社に共通しているのは、外観を重視した製品展開を図ったもののスマホ本体やカメラ性能までは手が回らず、他社からよりスタイリッシュで高性能なカメラを搭載したスマホが登場すると、そちらにユーザーを奪われてしまったという点だ。日本でもスマホを展開しているOPPOやファーウェイがフロントカメラ性能を高めていくと、DoovやSugarの製品では太刀打ちできなくなってしまったのだ。Sugarは一時期ソフトウェアでカメラ性能を引き上げた「6400万画素カメラ搭載スマホ」を出したことがあったが、実際に撮影してみると写真品質は言われるほど高いものではなかった。Sugarも今では翻訳機を出してIoT分野に手を広げるなど、女子スマホだけでは苦しい状況となっている。

Sugarは翻訳機も投入。スマホ以外のビジネス展開を図る。

この2社に対し、Meituは「BeautyPlus」という優れた美顔アプリを自社開発していたおかげで他社の追い上げを振り切り「セルフィースマホ」だけを出し続けて生き残り続けることができたのだ。そういえばシャオミも元々はAndorid OSを使いやすく・高速で動かせるカスタムROMを開発したメーカーだった。どちらも「自社開発したアプリを他社製品に乗せるだけではなく、自らそれを搭載したスマホを出す」ところからスマホ市場への参入を始めたのだ。Meituの美顔加工能力は今でも他社より群を抜いて高い。しかし消費者はそこまで高性能な美顔効果でなくとも、1-2年前のMeituの性能に追いついた現時点の他社のスマホでも満足するようになってしまったのだ。Meituがスマホから撤退してしまった理由は、Meituを追いかけた他社の美顔機能が気が付けば十分満足できるレベルに達してしまったからなのである。

Meituのスマホの美顔機能はユーザーの要求をはるかに超越するほど高まってしまっている。

世界シェア3位が見えてきた?アップルとシャオミの差はわずか

シャオミは高性能・低価格スマホで世界にその名を広めることに成功し、2015年には1億台の販売目標台数を打ち上げた。ところが価格だけを武器にしていたため格安品のイメージも広まってしまい、後から追いかけてきたOPPOやVivoといった中国のライバルメーカーに消費者を奪われてしまったのだ。OPPOは「高画質フロントカメラで美しいセルフィー」「5分の充電で2時間通話できる急速充電」を大きな売りにしていた。一方シャオミのセールスポイントは「CPUはSnapdragon 801を搭載」「価格は3万円」。コスパを考えればシャオミのほうが魅力的だろう。しかし若者たちは「スマホ」が欲しいのではなく、SNSで写真をシェアし、そしていつでも使える(電池切れしにくい)デバイスが欲しいのだ。OPPOのほうがCPU性能も劣り、価格も高いにも関わらず、中国や東南アジアの若者たちはシャオミではなくOPPOを購入していったのだ。

シャオミはその後製品開発を大きく方向転換し、格安スマホは「RedMi」として切り離すとともに、ハイエンド製品も5G搭載モデルをいち早く発表するなど、大手メーカーを超える製品を次々に送り出していった。また中国に次ぐ世界第2のスマートフォン市場、インドにも進出しいまではインドでのシェアが1位になるなど、完全な復活を果たした。シャオミ=最先端、RedMi=格安スマホ、というブランドの差別化がうまくいっているのだ。

業界唯一のスライド式ボディーを採用した5Gスマホ、シャオミのMi MiX 3 5G。

その結果、スマホの出荷台数でサムスン、ファーウェイ、アップルに次ぐ世界4位グループの常連となった。4位グループと表現するのは3位と4位の間に大きな差があることと、シャオミ、OPPO、Vivoの3社が出荷台数ではほぼ横に並んでおり、この3社で激しい競争を繰り広げているからである。毎四半期ごとにこの3社は順位を上下させている。

ところがIDCの調査によると2019年第2四半期(4月-6月)の世界のスマホ出荷台数で3位アップルと4位シャオミの差はわずか150万台に縮まった。1年前の両者の差は890万台もあったが、今やシャオミにとってアップルの3位の座は射程距離に入ったのだ。しかもアップルは毎年9月後半に新製品を発売するため、第3四半期は出荷台数を伸ばしきれない。特に7月と8月は新製品登場前の買い控えもあるため、なおさら苦しい戦いを強いられるのだ。

シャオミのスマートフォン販売ブース。女性を強く意識していることがわかる。

シャオミにとってアップルは遠い存在だったが、その後姿を敢然にロックオンした今、出荷台数を伸ばすためには「性能」「価格」以外を求める新たなユーザー層の開拓が必要だ。CC9はシャオミがこれまでターゲットとしていなかった女性ユーザー向けの初の製品であり、フロントカメラ性能と本体デザインの良さから多くの女性の目を引き付けることに成功するだろう。CC9が成功すれば、スマホシェアでシャオミがアップルを抜くのも現実のものになるはずだ。

あとはブランド力を高めるためにも、先進国市場へも積極的に展開を図るべきだ。ヨーロッパではフランスなど数か国に進出済みで、5Gスマホ「Mi MiX 3 5G」もスイスで販売を始めている。アジアでは日本以外のほとんどの国で製品を販売している。5Gが始まる日本市場向けにはウルトラハイエンドな5G端末や女性をターゲットにしたスマホを展開すれば、ソニーやシャープと差別化された製品として日本人の間にも受け入れられるかもしれない。5Gとともにシャオミがやってくる、そんな時代が来たら面白そうだ。

シャオミの「スマホ3位」のカギを握る製品の1つがCC9 Meitu版だ。