【家電アーカイブス】日本人の食を支えてきた炊飯器の進化を探る

一年中使うのに、秋口になると一気に盛り上がる家電がある。それが炊飯器だ。9月中頃になれば全国の米穀店やスーパーには様々な産地で収穫された多彩な銘柄の新米が並ぶ。一年で一番ご飯が美味しい季節の到来だ。せっかく美味しい新米があるのならそれを美味しく炊きたい。誰もがそう思うはず。炊飯器はそうして64年前に誕生し、進化してきた。そこで今回は、新米の季節に合わせて炊飯器の進化の歴史を紹介するとともに、最新炊飯器を紹介しましょう。

1955年 自動式電気炊飯器の誕生

今から64年前、現在の炊飯器につながる自動式電気炊飯器は誕生した。開発したのは光伸社(現サンコーシヤ)。発売したのが東京芝浦電気(現東芝ライフスタイル)だ。一定の温度になると変形する金属「バイメタル」をスイッチとして採用。外釜に入れた水が蒸発するとスイッチが切れて加熱が止まり、しかも3重釜で気温の影響を受けにくい構造として、1年中同じ炊き上がりの自動炊飯を実現した。

電気炊飯器の誕生前、大半の家庭ではガス釜やかまどに羽釜を置いてご飯を炊いており、炊飯中は付きっ切りになる必要があった。しかし、電気炊飯器の誕生により失敗することなく、手軽にご飯が炊けるようになった。自動式電気炊飯器の登場は現在に続く、家事の自動化の第一歩だったのだ。

東芝 自動式電気釜(東芝未来科学館 所蔵)
外釜に入れた水の蒸発を利用する3重釜間接炊き方式を採用。当時の価格は3200円(大卒初任給1万円)と非常に高価だったが大ヒットを収めた。

1972年 炊飯後にそのまま保温できるように

1955年に誕生した自動式電気釜はあくまで炊飯器で保温機能はなかった。炊飯器とは別に保温ジャーが発売されており、1960年代は炊けたご飯をジャーに移して保温していた。さらに1960年代はまだ電子レンジも普及していなかったため、ご飯を冷凍して保存する習慣もなく、自動で炊けるようにはなったが、長期間の保存はできなかったのだ。しかし、三菱電機のジャー炊飯器の登場によってそれが変わる。炊飯器でごはんを炊くと、そのまま保温できるようになったのだ。他メーカーもそれに追随。現在の保温機能付き炊飯器のスタイルが1970年代にできあがった。

三菱電機(ふた役さん)NJ-1650形
炊き上がったごはんをそのまま保温できるジャー炊飯器。「ふた役さん」のネーミングは、後に発売されNJ-1960形)1.9Lモデルから。

 

1988年 IH加熱方式でより美味しく炊けるように

炊飯器の歴史の中で、美味しさの部分で大きな変化となったのが、パナソニックによるIH加熱方式を採用した炊飯器の誕生だ。それまでの炊飯器は底面ヒーターによる加熱でご飯を炊いていた。1979年には現在と同じようにマイコンを内蔵し、微妙な火加減でごはんを炊けるようになっていたが、残念ながら炊飯時にお米に含まれるでんぷん質をα化するにはそもそも火力が足りておらず、かまど炊きごはんと比べると美味しさで劣っていた。

IH加熱方式は電磁誘導加熱により、内釜そのものを高温に加熱できる仕組み。このIH加熱方式登場により、ごはんをより美味しく炊くことができるようになったのだ。

パナソニック IHジャー炊飯器 にっぽん炊き SR-IH18
ステンレスとアルミによる内釜を採用し、釜自体が発熱するIH(Induction Heating)加熱方式を初めて実現した炊飯器。IH加熱により、ごはん全体をむらなく官立できるようになった。

 

1992年 より柔らかく甘く炊ける圧力炊飯方式の誕生 

現在、多くのメーカーが採用している圧力炊飯方式が誕生したのが1992年。炊飯時に圧力をかけると、沸騰温度を高くすることができる。より高温でごはんを炊くことで、より柔らかく、甘いごはんが炊けるようになる。

三洋電機 圧力IH仕込み ECJ-IH10
初めて圧力方式を採用した炊飯器。1.1気圧まで加圧することで沸点を103℃まで高めることができる。炊飯時間も29分と早い。

 

2006年 本炭釜の登場により内釜戦争が勃発

さらにご飯を美味しく炊くためにたどり着いたのが内釜の材質。きっかけとなったのが三菱電機の『本炭釜』。IH加熱方式と相性の良く、釜全体が発熱する「炭」を内釜に採用することで熱伝導性や発熱を高め、さらに高い温度でごはんを炊き上げることができた。その後、象印が鋳鉄製、三洋電機が銅製、タイガー魔法瓶が土(土鍋)製の内釜を採用する炊飯器を発売するなど、内釜戦争が勃発。それは現在発売されている炊飯器にも続いている。

三菱電機 本炭釜 NJ-WS10
職人による手作業で作り上げた、99.9%の炭素素材による内釜を採用した炊飯器。この製品の登場以降、10万円を超える高級炊飯器が各社から発売されるようになった。

2012年 炊飯時に蒸気をださない構造など使い勝手を革新

IH加熱方式や圧力、そして熱伝導性の高い内釜などの採用により、炊飯器で炊くごはんはかなり美味しくなった。そこで注目を集めたのが使い勝手の部分。三菱電機の『蒸気レスIH炊飯器』は炊飯時で出る蒸気を水タンクを通すことで冷却。蒸気を外部にださず、さらに旨み部分はごはんに戻せる仕様だった。蒸気レス炊飯器は炊飯時にニオイがしないこと、また食器棚などに炊飯器を入れたままでも炊飯できるといった利点がある。

三菱電機 蒸気レスIH NJ-XS10J
冷却タンクと「おねば(うまみ)」を貯めるカートリッジを内蔵することで、美味しさの秘訣である連続沸騰を可能にした炊飯器。蒸気によって食器棚が結露するといったことがなく、場所を選ばずに設置できる。

 

2016年 新興メーカーから保温しない炊飯器が続々登場

保温機能を搭載しないことで炊きたての美味しさを追求した個性的な炊飯器が、家電メーカー以外から続々と登場。バーミキュラは自社製の鋳物ホーロー鍋でごはんを美味しく炊けるように、専用のポットヒーターを開発。高い密閉性と蓄熱製の高さを活かし、美味しいごはんが炊ける。このほか、バルミューダやシロカなど、新興家電メーカーからも個性派炊飯器が登場している。

バーミキュラ バーミキュラライスポット
実勢価格8万6184円(5合炊きモデル)
鋳物ホーロー鍋とポットヒーターのセット。ごはんが炊けるのはもちろんのこと、おかず調理にも対応。無水調理や低温調理もできる。

 

2019年 今年発売された注目モデル! 

1955年に誕生して64年。炊飯器の歴史を振り返ってきた。そこで最後に、現在購入できる最新の炊飯器を紹介しよう。どのモデルでも今年収穫したばかりの新米を、より美味しく炊けること間違いなしだ。

 

タイガー
<炊きたて> 土鍋ご泡火炊き
JPG-S100
実勢価格:11万5230円
5.5合炊きながら、小容量の1合を美味しく炊けるモデル。「一合料亭炊き専用 土鍋中ぶた」を用意しており、中ぶたをセットして炊飯することで、一合の炊飯に最適な状態を作り出せる。内なべには高い蓄熱性と遠赤効果のある「プレミアム本土鍋」を採用する。
象印マホービン
圧力IH炊飯ジャー“炎舞炊き”
NW-ES07
実勢価格:10万1760円
2つのIHヒーターを切り替えて加熱する「ローテーションIH構造」を採用。交互に大火力で加熱することでお米を大きくかき混ぜることが可能。あえて4合炊きにすることで本体サイズをコンパクト化している点にも注目したい。
パナソニック
スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器 Wおどり炊き
SR-VSX109
実勢価格:9万6360円
可変圧力とIHコイルの高速切り替えによる「Wおどり炊き」で炊飯できるモデル。高速コースでも220℃スチームを使うことにより、短時間でも粘りのあるごはんが炊けるようになった。全国で栽培されている50銘柄を炊き分ける「銘柄炊き分けコンシェルジュ」を搭載。
日立グローバルライフソリューションズ
圧力&スチームIHジャー炊飯器 ふっくら御膳
RZ-W100CM
実勢価格:8万円
最高1.3気圧の圧力と最高107℃の高温スチームによる「極上ひと粒炊き」により、『外硬内軟(がいこうないなん)の美味しさ』のごはんを追求した炊飯器。炊飯時に蒸気がほとんど出ない蒸気カット構造を採用しており、設置性の高さも魅力。40時間保温にも対応する。

 

 

 

東芝
真空圧力IHジャー炊飯器 合わせ炊き 鍛造かまど備長炭釜
RC-10VXN
実勢価格:6万1500円真空で吸水する真空αテクノロジーでお米の芯までひたす「一気ひたし」と圧力可変コントロールで芯まで加熱する「かまど大火力」によりおいしさと時短をかなえる。お好みに合わせた食感炊き分けができておいしく炊ける「本かまど」コースは約38分と短時間で炊ける。(本かまど「おすすめ」コース3合炊飯時)。

 

三菱電機
本炭釜 KAMADO
NJ-AWA10
実勢価格:12万6310円
純度99.9%の炭でできた本炭釜を採用する炊飯器。本炭釜を八重のヒーターで包み込んで炊き上げる仕組み。圧力方式を採用せず、かまどと同じように高い密閉性で熱を閉じ込めてしゃっきりと炊ける。お米50銘柄の炊き訳機能も搭載する。

 

サンコー
糖質カット炊飯器 匠
実勢価格:3万4800円
糖質を最大35%カットできる低糖質炊飯モードを搭載する炊飯器。お米をセットした内鍋が炊飯時に自動で上昇して、糖質が溶け込んだ水を吸わないようにする「リフトコントロールシステム」を搭載する。低糖質炊飯モードは最大2合、通常モードでは4合炊ける。
シャープ
KS-WM10B
実勢価格:3万4340円
おひつの佇まいを目指した炊飯器。取り外しできる外ぶたに加えて、蒸気穴を備えた内ぶたの二重蓋構造を採用。保温機能は搭載しておらず、炊飯後はダイニングテーブルに運んで使うスタイルに向く。360°どこから見てもスッキリしたシンプルデザインも特徴だ。

 

秋だからこそ最高のごはんを最新の炊飯器で楽しみたい

日本人の主食である「お米」。炊飯器の進化はごはんをどうやって美味しく、手軽に炊くかという歴史だった。かまど炊きから電気炊飯器に代わって64年。IH方式や圧力、スチーム、真空など、新しい技術は次々と生まれてきた。

さらに電気炊飯器が登場したことで「炊飯」の手軽さは飛躍的に向上した。タイマーのセットで好きな時間に炊いたり、忙しいときには早炊きもできる。また、保温性能が高まったため、でいつでも好きなときに温かく美味しいごはんが食べられるようになったのだ。

今回、取り上げたのは家電メーカー各社のフラグシップモデルや注目すべきモデルだ。たとえば、象印マホービンの『圧力IH炊飯ジャー“炎舞炊き” NW-ES07』はこれまでにない4合炊きで登場した。利用頻度の高い3合を美味しく、余裕をもって炊くことができ、それでいて5.5合炊きの炊飯器よりもコンパクトなのが魅力だ。

また、今年フルモデルチェンジをした、日立の『圧力&スチーム IHジャー炊飯器 ふっくら御膳 RZ-W100CM』は、京都の老舗米店 八代目儀兵衛が追求する『外硬内軟』の炊き上がりを追求。しっかりした食感と柔らかさを共存した美味しいごはんが炊ける。

繰り返しになるが秋はお米が一番美味しい季節だ。だからこそ、最高のごはんを楽しみたい。最新の炊飯器があれば、「食の秋」を手軽に楽しめるはずだ。