田舎の金物問屋からグローバルなアウトドア企業へ -- 経営企画室長の上山さん、 スノーピーク成長の軌跡を教えて下さい。

2014年のマザーズ上場、2015年の東証一部上場以降、スノーピークの売上高は右肩上がりで急成長。直近の四半期売上も昨対比115%とその勢いはまだまだ止まりそうにない。ここ数年のアウトドアブームの恩恵はあるだろうが、スノーピークがここまで好調な理由はなんなのだろうか? 上山さんに、スノーピークの歴史を振り返りながら真髄を聞いた。


黎明期

先代から受け継いだ
“自分が欲しいものを作る”精神

スノーピークの歴史は、先代社長が新潟県燕三条の地で金物問屋を立ち上げた日からはじまる。それから半世紀以上、地元が誇る金属加工技術を背景に、機能的で美しく、頑丈なアウトドアギアの数々を世に送り出し、日本のキャンプシーンを牽引してきた。

「先代の社長は日本が空前の登山ブームだったころ、自分の欲しいものがないという理由で、地場の職人たちに頼んでものづくりをはじめました。いまのスノーピークが燕三条にこだわっているのも、これがルーツです。1986年に現社長が入社したタイミングで、オートキャンプビジネスが始まりました」

1990年代のキャンプといえば、ギアへのこだわりは少なく、見た目も貧しいスタイルが大半だったとか。そんな中、社長の山井太氏は「キャンプだからこそ豊かな時間を過ごすべき」と、時代に逆行するものづくりを始める。

「オートキャンプを単なるレジャーではなくライフスタイルとして捉えたんですね。テント+タープ+レイアウトシステムという設えを開発して、全100アイテムぐらいを作ったんです」

発売当時はキャンプ用品としては高額な設定だったが、キャンプブームの後押しもあり、次第にファンが増えていく。しかし1996年、キャンプブームは一度終焉を迎える。

スノーピークの創業者、山井幸雄氏。谷川岳を愛する登山家であった。
スノーピークの前身である山井商店は1958年に創業。大工道具をメインに扱う問屋としての独立であったが、自ら手がけた山道具も徐々に全国へと展開していった。
谷川岳の麓にある資料館には、昔の山道具が展示されている。
キャンプサイトにレイアウトという概念を取り入れたのはスノーピーク。アウトドアでの食文化にも力を入れ、リッチなテイストと快適な使用感を追求していた。

 

転換期

「高い! 品揃えが悪い!」
ユーザーの本音が勝機を導く

「6期連続で売上が落ちた時に、自分たちの存在意義を確かめるつもりでユーザーを集めたキャンプイベントを実施しました。これが今でも続いている『Snow Peak Way』の第一回目です。そこに来たユーザーから“商品が高い”“(店頭の)品揃えが悪い”と言われ、問屋との取引を一切やめたんです」

その後、小売店との直接取引をスタート。2003年にはスノーピーク初となる直営店を晴海と大宰府にオープン。ユーザーとのリアルな接点が大事ということを実感していたので、接客はスノーピークのスタッフ自らがやることにこだわり、ファンたちとの関係性を築いていった。

「でも、ひょんな理由で晴海店のテナントから引っ越すことになりまして。その時、一時避難的に移ったのがアウトドアショップのエルブレスさん。インストアという形態で短期間の予定だったんですが、売上が減ることもなく、お客様にも好評で、結果的に、これはいい!となって、インストア店舗を拡大していったんです」

2008年にはポイントカードを導入。ランク(累積購入金額)に応じて限定品と交換できるという戦略が成功し、類計100万円以上のブラックランク以上は現在約3300人! ブラックランク以上の会員が参加できる「Snow Peak Way Premium」という二泊三日のキャンプイベントも好評を博している。

 

成長期

20億円以上の投資をして
Headquartersを設立

それまで無借金で経営をしてきたスノーピークであったが、社長の山井太氏が英断を下す。新潟県三条市の山を買い取り、本社&キャンプ場のHeadquarters(以下HQ)を設立したのだ。

「2011年のことですが、社内でも懸念の声はあがっていました。年商30億くらいの会社が20億円以上も投資するなんて、と。社長は『ブランドを可視化するためには必要』と説き、当時の専務は『ユーザーのみなさんから頂いたお金で、ユーザーの皆さんが集い、楽しめるキャンプ場と本社をつくる』という言い方をされていました」

結果、HQを設立したことで成長曲線が変わった。カンブリア宮殿をはじめ、メディアからの取材が殺到し、あのアップル社が視察に訪れるほど話題に。この頃から社員の質も変わったそうで、一気に上場へと駆け抜けていく。

「メディアでスノーピークを取り上げていただく時に“熱狂的な信者を抱える”と表現されるんですけど、その通りなんです。スノーピークって宗教法人に例えるとわかりやすいんです。“自然の中で過ごす時間は豊かで、人生が救われます”という教えを説いていて、それを信じるスタッフやユーザーがいて、いつか行ってみたいと思ってもらえる総本山(=HQ)がある。国内で約90あるリアル店舗はユーザーと繋がる教会みたいなもの。6拠点のキャンプ場は……極楽浄土ですかね(笑)」

スノーピークの最大の資産は、顔が見えるコアなファンとの繋がりだ。今後、“布教活動”は欧米にも拡がっていくという。スノーピークが提案する豊かなキャンプ文化は、果たして海外に浸透するのか。その手腕に期待したい。

2000年頃の社内報で、すでに「キャンプ場の中にオフィスを作りたい」と記していた山井太社長。2011年にその夢は実現し、5万坪の広大なキャンプフィールドと本社屋には、年間通して日本中からスノーピークファンが集ってくる。

 

Snow Peak
History

1958年 初代社長、山井幸雄氏が金物問屋として「山井幸雄商店」を創業
1963年 「スノーピーク」を商標登録
1986年 現社長、山井太氏が入社。「スノーピーク」をキャンプブランドとしてリニューアル開始
1996年 山井太氏が代表取締役社長に就任。株式会社スノーピークに社名変更
2003年 福岡・太宰府と東京・晴海に初の直営店「Snow Peak Store」を出店
2011年 キャンプ場を併設した店舗・工場・オフィスが一体となった本社「Headquarters」へ移転
2014年 東京証券取引所マザーズ市場に上場。翌年、一部市場に指定
2018年 創業60周年。エントリーモデルとして発売した「エントリーパック TT(写真)」が大ヒット