ハイスペックなカメラスマホにも大きな弱点があった? iPhoneを超えた美しさと機能を備えたファーウェイのMate 30が発表

スマホの世界シェアでアップルを抜き去ったファーウェイ。もはやライバルはシェア1位のサムスンだけだ。そのサムスンの最新スマホに対し、ファーウェイはすでにAI機能やカメラ性能でリードを奪っている。この9月に発表されたファーウェイの最新スマホは最新のチップセットを搭載した「スマホ業界最高性能」を持つ製品だ。それだけではなく美しい本体デザインと相まって、もはや敵なしと言える製品に仕上がっている。だがそんな最高な製品にも大きな弱点が隠されているのだ。

大人のためのカッコいいスマホ、それがファーウェイのMate 30だ

ファーウェイの秋の新製品発表会は2019年9月19日、ドイツのミュンヘンで行われた。例年は10月に行われていた発表会を1カ月も前倒しし、しかも翌14日は全世界でiPhone 11が発売になるというタイミングで最新モデルが発表されたのだ。登壇したファーウェイのコンシューマーグループCEO、リチャード・ユー氏は集まった数千人規模のメディアやパートナー関係者の数を見て大いに満足したに違いない。なにせiPhone発表前日という重要な「イブ」の日にもかかわらず、ファーウェイの新製品をいち早く見ようと世界中から多数のメディアが取材に訪れたからだ。

Mate 30シリーズを発表するリチャード・ユーCEO。

発表された新機種は「Mate 30」「Mate 30 Pro」「Porsche Design / Mate 30 RS」の3モデル。いずれの製品も背面側は共通のデザインで、円形の台座に4つのカメラ(Mate 30は3つ)を配置している。左右の対称性があり美しさと高級感を同時に感じさせるこのデザインは、実は1年前に発表された「Mate 20」シリーズでも採用されたもの。Mate 20シリーズは正方形の台の上にカメラとフラッシュを配置したデザインで大きな注目を集めたが、ファーウェイはたった1年で新しいデザインにチャレンジしたのである。ちなみに発表会でユーCEOが「アップルも我々のデザインを追いかけた」と正方形デザインのカメラを搭載したiPhone 11シリーズを暗に紹介すると、会場を埋めつくした来場者たちは大きな歓声をあげた。それほどまでにMate 30シリーズのカメラ周りのデザインは美しいのだ。

円形をモチーフにしたMate 30のカメラ周り。左右対称のシンメトリックなデザインが美しい。

またMate 30とMate 30 Proには通信方式が5Gに対応したモデルも販売されるが、その5Gモデルには背面を革張りにした高級仕様のモデルもある。1年前の9月、春先に発売した「P20 Pro」の革張りバージョンを発表しこれも人気となったが、今年は秋の新製品に革モデルを追加したのである。最近のスマートフォンは背面の仕上げが美しいものが増えているが、革張りモデルはケースを着けずにそのまま革の風味を手のひらや指先で感じたくなるだろう。なお残念ながら本革ではなく合皮だが、見た目や触り心地は十分満足できるだけの仕上げになっている。

5G版には背面を革張りに仕上げたモデルも登場。

ファーウェイのスマホは春にカメラ性能を重視した「P」シリーズ、秋に最新CPU搭載の「Mate」シリーズと、年に2つのフラッグシップモデルが投入されてきた。だがMateシリーズは性能が高いだけではなく、ビジネスユーザーもターゲットにした上品かつ高級な本体仕上げも特徴なのだ。ポルシェデザインとコラボした「Mate 30 RS」もファッションブランドモデルであるが、スポーツカーをイメージしたカラーリングと革調の背面仕上げはスーツにもよく似合う。Mate 30シリーズは大人向けのスマホなのである。

ポルシェデザインとコラボしたMate 30 RS。

画面タッチで音量操作、世界初の「ホライゾンディスプレイ」

Mate 30は6.62インチ、Mate 30 ProとMate 30 RSは6.53インチのディスプレイを採用。Mateシリーズは大画面スマホでもあり、全モデルが6.5インチ以上のディスプレイなのだ。iPhone 11 Pro Maxが6.46インチだから、それよりも大きいのである。しかも本体の横幅と重量はiPhone 11 Pro Maxの77.8mm / 226gに対し、Mate 30は76.1mm / 196g、Mate 30 Proは73.1mm / 198g。Mate 30シリーズのほうが大画面でスリムで軽量なのだ。さらには別売の「M Pen」を使って、紙のノートのように文字を書き込んだりイラストを描くこともできる。

Mate 30、Mate 30 Pro、iPhone 11 Pro Maxのサイズの差。

上位モデルとなるMate 30 ProとMate 30 RSは他社のスマホにない大きな特徴を持っている。それは世界初とファーウェイが謳う「ホライゾン・ディスプレイ」の採用だ。Mate 30 Proを正面から見ると、本体の左右は側面部分までがディスプレイになっており、フレーム部分が見えない。いわゆるベゼルレスというデザインであり、ディスプレイをより広く見せてくれる。さらには本体左右には電源キーしかなく、本来あるべきはずのボリュームキーは存在しない。

左右一杯までディスプレイが広がったホライゾンディスプレイ。

ホライゾンディスプレイは88度というほぼ直角の角度でディスプレイが側面に曲がったディスプレイだ。本来ならフレームにディスプレイをはめ込むところを、フレームの上にディスプレイを載せた格好の構造にしているのである。このタイプのディスプレイはサムスンが流れるように角を曲げたエッジ・ディスプレイを数年前から実用化しているが、本体左右にはディスプレイを支えるベゼルが薄いながらも残っている。ホライゾン・ディスプレイはディスプレイの角を立てることでベゼルをほぼ無くすことに成功したのだ。

ファーウェイはこのホライゾン・ディスプレイを使った新しい機能をMate 30 Proに搭載した。それはサイドタッチ機能。側面のディスプレイ部分を2回タップすると、ディスプレイ上にボリュームキーが表示されるのだ。音楽を聴きながら親指で側面をタッチし、そのまま親指を上下にスライドさせてボリュームを調節する様はとてもスマート。しかも側面のボリュームキーを廃止してすっきりした外観にもできるのだ。電源ボタンを上部に移動させれば側面に一切のボタンのないスマホにもできる。おそらく来年春に発表されるだろうカメラスマホ「P40」ではそんな本体デザインが採用されるのではないだろうか。

側面タッチでボリュームキーを呼び出せる。

またフロントカメラを起動すると、側面部分にシャッターボタンが表示される。このシャッターボタンはスライドさせて好きな位置に移動させることも可能だ。このように側面をディスプレイ化することで、本体の横に移動可能なソフトキーを配置することもできるのである。Mate 30 Proではまだこの2つ程度しかソフトキーを呼び出す機能は無いが、今後APKが解放されればアプリメーカーが自在な機能を搭載することも可能になるだろう。たとえばゲーム用のコントローラーを側面に2つ、好きな位置に配置できる、なんて機能拡張もできるようになるのだ。

ところで側面もディスプレイになると気になるのが誤タッチや誤操作だろう。そのあたりはうまく考えられていて、普通にMate 30 Proを握っても側面が反応することは無かった。おそらく側面側はタッチセンサーの感度を調整して、ちょとっと触った程度では反応しないようになっているのだろう。ボリュームキーを呼び出すときのようにダブルタップなど特定の操作にのみ反応するようになっているのだ。まあこれだけスマホを売っているファーウェイの最新機種だけに、握るたびに反応してしまうような製品を市場に出すことは無いだろう。「中国メーカーだから大丈夫だろうか」といった心配も、今のファーウェイには一切不要だ。

側面のタッチ感度は調整されている。握っても誤反応はしない。

実はファーウェイ以外のメーカーからも同様のディスプレイを採用した製品が登場している。Vivoの「NEX 3」はウォーターフォール(滝の落ちる)ディスプレイを搭載、ファーウェイに先を越されたが似たような機能を持っているうえに、電源ボタンを廃止。こちらはファーウェイより先に実現している。OPPOも類似のディスプレイ搭載スマホの投入を匂わしているし、シャオミは側面から裏側にまでディスプレイでカバーされている「全周ディスプレイ」を搭載した「Mi MIX Alpha」を発表した。

カメラはウルトラワイドと3倍光学ズーム、完璧なスマホにも大きな弱点

ファーウェイのスマホというとカメラ画質に優れているという印象を持っている人も多いだろう。Mate 30シリーズもカメラの実力はなかなかのものだ。Mate 30 Proは4000万画素のワイドに4000万画素のウルトラワイド、そして800万画素の3倍ズームカメラを搭載する。カメラフォンとして春先に発売され、ドコモからも販売されている「P30 Pro」は4000万画素+2000万画素+800万画素で、ウルトラワイドカメラはMate 30 Proのほうが画質が高い。一方P30 Proは光学5倍、デジタル50倍ズームだが、Mate 30 Proは3倍 / 30倍に抑えられている。カメラ機能を第一にフィーチャーしたP30 Proほどではないが、光学3倍でも他社スマホのカメラに比べれば十分高性能であり、この性能を不満と思う人は少ないだろう。

カメラの心臓ともいえるセンサーサイズも大型化し、ビデオ撮影にもよりフォーカスした仕様となっている。写真を撮るならP30シリーズ、ビデオを撮るならMate 30シリーズとファーウェイはカメラスマートフォンの方向性を2つに進化させようとしている。いずれにせよファーウェイのフラッグシップモデルのカメラはいまや業界でトップクラスの性能を持っており、カメラ性能の指標を表すDxOMarkでも常にトップクラスのデータを出している。

4000万画素カメラを2つも搭載するMate 30 Proのカメラは贅沢すぎる性能を誇る。

このようにもはや敵なしともいえるMate 30シリーズだが、実は大きな弱点があるのだ。米中貿易摩擦の影響を受け、グーグルサービスを搭載せずに発売される予定なのだ。Mate 30シリーズはAndroid OSを搭載している。Android OSはだれもが自由に使えるオープンソースなシステムだ。しかしGmailやグーグルマップといった、グーグルのサービスを載せるにはグーグルとのライセンス契約が必要となる。だがMate 30シリーズではそのライセンスを受けることができず、ファーウェイ独自のアプリストアサービス「HMS」(Huawei Mobile Services)を搭載して投入される予定だ。

ファーウェイ独自のアプリサービスHMSを搭載。

アプリやサービス抜きでのスマホなど今の時代考えられないだろう。いくらカメラ性能が良くても、撮影した写真やビデオを普段使っているSNSにアップできないようでは使い勝手は大きく後退する。ファーウェイはアプリを開発するメーカーに合計10億ドルもの開発費を提供してHMSへの参加を呼び掛けるという。一般のAndroidスマホにアプリを提供しているメーカーならファーウェイのアプリストアへ自分のアプリを提供することは難しくないかもしれない。しかしグーグル同様に米中貿易問題にかかわる企業はアプリを提供することはできないだろう。アメリカにとどまらず、他の国のアプリメーカーも容易にはHMSへのアプリ提供はできないかもしれない。

実は中国で販売されているAndroidスマホにはグーグルアプリが搭載されておらず、各社が独自のアプリストアを搭載している。ファーウェイの中国販売スマホも同様だ。そのファーウェイの中国向けスマホのアプリストアを開くと中国でメジャーなアプリはすべて網羅されている。一部海外のアプリも入っているため、それらがHMSでも利用可能になり、Mate 30シリーズでも使えるかもしれない。しかしアプリのアップデートや他のアプリ、例えばグーグルマップとの連携などは期待できないかもしれないのだ。ハードウェアは完璧なMate 30シリーズだが、アプリが揃わなければせっかくの製品も無価値になってしまうかもしれない。ヨーロッパではこの冬に発売予定だが、果たしてどこまでアプリが揃って出てくるのか、気になるところだ。