両面使える「2画面スマホ」が今年も変態進化! 中国家電のハイセンスが電子ペーパースマホを発表

華やかな最新スマホがいくつか発表されたIFA2019。その中で異色を放っていたのが中国の家電メーカー、ハイセンスだ。同社が発表した最新スマホはなんとモノクロ画面を搭載。しかも1機種は片面がカラーディスプレイという変態チックな製品だ。いったいどんなユーザーが買うのかわからないが、世界有数の家電展示会で製品発表を行ったというからには勝算ありと考えているのだろう。

ハイセンスが作り続ける2画面スマホの最新モデル

ハイセンスの「A6L」は表側が6.53インチのカラー液晶ディスプレイ、裏側に5.8インチの電子ペーパーディスプレイを搭載する2画面スマホだ。電子ペーパーはモノクロ16諧調表示だが、こちらの画面でもAndroidが動きスマホとしても使える。また専用メニューも搭載されており、電子ブックを読むときはより高速な操作ができるという。本体メモリは6GB、カメラは24000万画素+800万画素とスペックも高い。カラー(とわざわざ表記しなくてはならないのがA6Lの特徴でもある)ディスプレイ上部には水滴型ノッチ内に2000万画素のフロントカメラを搭載している。ミドルハイレンジレベルの製品であり、中国の怪しいスマホという代物ではないのだ。

裏面に電子ペーパーを搭載、2画面使えるA6L。

A6Lのように裏も表もスマホという不思議な製品は過去に数社が手掛けていた。最初の製品はロシアの謎メーカーYotaが2012年に発表した「YotaPhone」で、片面は普通のAndroidスマホ、もう片面は電子ペーパーのモノクロディスプレイを搭載して専用アプリで電子ブックリーダーとして使えるハイブリッドな製品だった。その後はモノクロ画面でもAndroid OSが動くようになり、他のメーカーも参入するなど一時は市場がにぎわった。

しかし気が付けばYotaPhoneは3機種で実質終了、他のメーカーも1機種を出して撤退するところが相次いだ。タブレットの世界を見ても電子ペーパーを採用したアマゾンのKindleがいまや普通のカラー液晶タブレットを低価格で出しているように、電子ペーパーディスプレイを採用するメリットは薄れつつある。もちろん電子ペーパーは目に優しいため長時間の読書に向いているのだが、多くの消費者はカラー画面の利便性や製品の価格に敏感であり、あえて電子ペーパー端末を選ぶ理由は減少している。

カラー画面側は普通のスマホと変わらない。こちらの画面で電子書籍を読むのもアリだ。

だがハイセンスは2017年、他社がすでに撤退している市場に2画面スマホ「A2」を発表。ラスベガスで開催されたCES2017というグローバルイベントで華々しいデビューを飾ったのだ。ハイセンスのブースはちょうどインテルの向かいであり、インテルを訪問した多くの来場者がハイセンスブースに展示されていた裏表が使える不思議なスマホに目を奪われたのだった。

A6Lは2018年に発表した「A6」の後継モデル。A6が6インチカラー液晶+5.61インチ電子ペーパーだったのでディスプレイサイズが両面とも大型化している。世界的にスマホの大型化が進んでいるが、A6Lのような2画面スマホもその流れにのらなくては消費者の興味を惹くことが難しいということなのだろう。

A6Lの電子ペーパー画面。

しかしどうしてハイセンスは他社がやらない2画面スマホを毎年出しているのだろう? ハインセンスの主力事業は家電であり、スマホは一部の新興国などで販売しているものの、中国国内でもあまり目立った存在ではない。しかしサムスンやLGがスマート家電のペアとして自社スマホを展示会で展示したり、シャオミがスマートホーム製品を強化してスマホ連携を進めるなど、スマホと家電は密接な関係になりつつある。一度参入したスマホ市場からハイセンスとしても撤退はしたくないのだろう。だが普通のスマホを作っていたのでは競争に勝てない。そこで現時点で世界で唯一ともいえる2画面スマホを積極的に展開しているのではないだろうか?

モノクロ画面だけの「A5」はユーザー不明の試作モデル?

このA6Lと一緒に発表されたのが「A5」だ。ディスプレイはA6Lの背面に採用されている5.8インチの電子ペーパーのみを搭載する。すなわちA5は完全なモノクロディスプレイ端末なのである。今の時代にモノクロのスマホの需要があるとは思えないのだが、ハイセンスブースの担当者に話を聞くと「新興国などでフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)からの乗り換え需要としては十分あり」とのことだった。おそらく価格は日本円で5000円など、かなり安く販売されるのだろう。通話とメッセージしか使わないユーザーも新興国には多い。わずかなデータ通信費ですら高いと思う人たちにとっては、モノクロ画面のスマホならカメラを使おうとも思わないだろう。なおA5には一応1300万画素のカメラも搭載されている。

電子ペーパーディスプレイのみを搭載するA5。

電子ペーパーは構造上、光が当たらないと表示が見えない。紙と同じ原理で表示をしているからだ。となると暗闇では画面が見えなくなってしまう。A6Lならカラー画面を見ればいいだろうが、モノクロ画面しかないA5は困ってしまう。そこでA5はディスプレイの内側にLEDのバックライトを埋め込むことで、夜間の明かりの無い環境でも画面表示を見ることができるようにしている。意外と工夫されているA5、電子ペーパーを搭載した簡単端末はドコモも出しているくらいなので、日本など先進国でもiPhoneのお供に通話用端末として使うのもいいかもしれない。

バックライトで電子ペーパー面を照らす。

さて実際に電子書籍を表示してみると、ディスプレイそのものが光らないために確かに目は疲れにくく文字も読みやすい。一方画面全体が暗いので、なるべく明るい場所で使おうと思うようになる。そうなるとベッドで寝る前に読書するといった用途にはあまり向いていないかもしれない。やはり電子書籍端末として使うとしても、カラー画面のほうが実用性があると判断せざるを得ないのだ。A6LとA5を並べると確かにディスプレイのサイズは同じ。もしかすると電子ペーパーをディスプレイメーカーから購入する際の最低購入枚数が決まっており、すべてをA6L生産に回しては供給過多となるため、急いで電子ペーパーだけを搭載するA5を開発したのかもしれない。

A6L(左)とA5(右)の電子ペーパーディスプレイ。確かに大きさは同じだ。

このようにどうしてもネガティブなイメージばかりが先行してしまう電子ペーパーディスプレイスマホだが、誰もやらないことをやるというハイセンスの姿勢は大きく評価していいだろう。ただ、どうせやるなら究極のシンプルスマホとして出てきた「Blloc Phone」のようにモノクロ画面に合わせた美しい専用のユーザーインターフェースを用意するなど、もう一工夫が欲しいところだ。なおモノクロ画面でも写真やカメラのプレビュー表示はそこそこ見ることができる。あえてモノクロ画面を活用するカメラアプリなどが出てきたら面白い。

意外と見ることができるカメラのプレビュー表示。

今ではスマホの使い方はシングルタスクからマルチタスクへと変わり、1つの作業をしながら他の作業をするという使い方も増えている。2画面スマホならWEBで調べた地図を即座に裏面に表示し、表面ではまた別の検索を続ける、といったこともできる。2画面スマホは最適なアプリケーションさえ見つかれば使い方の可能性は大きく広がる。それに対してモノクロ画面のA5は、価格以外のメリットが今のところ見えてこない。電子書籍の年間購読料とセットで販売するなど、新しいビジネスモデルの構築が必要だろうか。

折りたたみ型や2画面カラーなど、スマホの形はこれから大きく変わる

カラー+モノクロの2画面スマホはすでに7年の歴史があるが、昨年には両面がカラーディスプレイのスマホも登場し、裏も表も普通のスマホとして使える製品が出てきている。両面がカラーディスプレイのため、写真を撮るとき相手にプレビュー画面を見せるといった使い方もできる。とはいえカラー+モノクロでも使い方がなかなか見つからなかった2画面スマホ、両面がカラーになったからといってこれいといった特徴を出せずにいるのが現状だ。製品も中国のVivoが1機種、Nubiaが2機種とまだ3モデルしか市場では販売されていない。

Nubiaの2画面スマホ、Nubia Z20。

表と裏、2つの画面が別々に動くメリットは確かにある。しかし2枚が別であることからそれぞれをどう使い分けるかを考えるのは難しいことなのかもしれない。中国シャオミはその問題を解決するために、スマホの側面部分までもディスプレイで覆った「ラウンドディスプレイ」を搭載した「Mi MIX Alpha」を発表している。Mi MIX Alphaは表のディスプレイがそのまま側面を回り込み裏面まで達している。裏面は完全にはつながっておらず、カメラ部分で切れてはいるが、裏側も表示できるという点では立派な2画面スマホだ。

裏側にぐるっと回ったディスプレイが特徴のMi MIX Alpha。

スマートフォンは毎年のようにディスプレイサイズの大型化を進めており、もはや限界かと思われた矢先に今度は縦横比を変え、縦に長いワイドサイズとすることでさらなるサイズアップを進めている。ファーウェイの「Mate 20 X」は一昔前ならタブレットのサイズである7.2インチのディスプレイを搭載。また「iPhone 11 Pro Max」の6.46インチですら小さいと感じるくらい、最近の各社のスマートフォンは6.5インチ以上の大きなディスプレイを採用している。そしてその延長として大きなディスプレイを折り曲げてコンパクトにできるフォルダブル、すなわち折りたたみ式スマホが登場した。

サムスンとファーウェイがそれぞれ異なる機構で折りたたみスマートフォンを発表する中、マイクロソフトはヒンジを使った機構ではあるが、2枚のディスプレイをたためるスマートフォンライクな製品「Surface Duo」を発表。もはや閉じて開いて、という機構は珍しくないものになっていくのかもしれない。サイズアップだけがスマートフォンのディスプレイの進化と思っていたのが、いつの間にか2画面化が始まり、さらには折りたたみ構造へとその形状は進化が続いている。

サムスンから発売になったGalaxy Fold。

このようにスマートフォンは片面がディスプレイという常識はこれからどんどん崩れていくことだろう。そう考えるとハイセンスが積極的に2画面スマートフォンを投入するのも、形状は違えど今のスマートフォンのデザインや形状、使い方が変わる未来を見越してのものなのかもしれない。2つの画面をどう使うか、それはメーカーが提唱しなくてもいずれどこかのサービス会社やユーザーたちが新しいユースケースを生み出してくれるかもしれないのだ。

リッチなコンテンツが増える今も、電子ペーパーの低消費電力や文字をはっきりと表示できるコントラストの高さは大きな利点だ。来年以降もハイセンスが電子ペーパー搭載スマートフォンを出すかどうかはわからないが、ハイセンスがやめても他の中国メーカーが製品化を続けるかもしれない。「スマホの裏面、何に使う?」。ハイセンスの2画面スマホを手にしたらどんな活用ができるのか、秋の夜長にのんびり考えるのも楽しいかもしれない。

ユーザーが使い道を考えるスマホなんてあっただろうか?