THE SWEAT ZIP UP HOODIE - ワードローブに欠かせないド定番

僕ら世代にとって、スウェットは欠かせない日常着だ。中でもジップアップフーディは着脱が楽な上に、あらゆるコーディネートにマッチする優等生。ド定番アイテムであるだけに、上質で着れば着るほどアジが出るTHEのモデルはぜひともワードローブに加えておきたいアイテムである。


フワフワでソフト。
着込むほどにアジが出る

THE Sweat Zip up Hoodie
価格:2万9700円

やわらかくて伸縮性があり、洗っても劣化しない上質なスウェット生地を採用。アメリカンピマコットンを用いた特殊な糸を吊り編みで仕立てた生地は耐久性が高く、肌触りも抜群だ。縫製はJAXAの宇宙船内被服も手掛けるメーカーが担当。動いても着崩れが起きない、最高の着心地を実現している。

 

グレー、ブラック、ネイビーの全3色展開。グレーはTHEが特注したこだわりのカラーで、綿の状態から染めている。サイズはXS~XL。

 

カラダの動きを妨げないオリジナルパターンにより、柔らかい生地の特製を活かした軽やかな着心地を与えてくれる。
リブ部分にも、柔らかくてソフトな風合いの特殊糸を採用。細部までこだわり抜いている証だ。
高さがある襟元はきれいなシルエットを保ちつつ、ジップを上げることで外気を遮断する効果を持つ。
生地の裏にも特殊糸を採用。触り心地への追求は妥協がない。
繊細な生地のため、大型機械での高速な縫製は不向き。すべて人の手で丁寧に縫われている。
ジップにはYKK社の最上級金属ファスナー「EXCELLA(エクセラ)」ファスナーを採用。ジップの滑らかな動きもTHEのジップアップフーディならでは。

THE FACTORY REPORT
3県を股にかけて完成する
究極のスウェット

2017年に登場したTHEのスウェット。ジップアップフーディをはじめ、プルオーバーフーディ、クルーネックプルオーバーなど、現在では商品展開も充実しているが、いずれも3万円弱という価格設定にも関わらず、売上ベスト3に入るほどの人気を博している。スウェットというありふれたアイテムを、THEらしいスウェットとして世に送り出されるまでには、紡績、生地製作、縫製と3県を股にかけた工程を経る。ものづくりの現場で見た、作り手たちのこだわりをお伝えしよう。

 

糸にこだわり、
編み方にこだわる

「こんなものづくりをしているアパレルは見たことありません。アパレルって価格ありきで生産するものですが、THEのスウェットは値段よりも価値を重視しています。洋服のプロも認める、究極の品質ですよ」

と語るのは、エイガールズの取締役兼企画部部長の尾崎孝夫さん。同社は和歌山を拠点にニットを生産するテキスタイルメーカーで、尾崎さんはTHEスウェットの全生産工程をディレクションした人物である。

世の中に溢れかえっているスウェットというジャンルにおいて、THEがとにかくこだわったのが“触り心地”。実際、店頭で何気なく触ったお客さんのほとんどが一度足を止めて、その触感を確かめるほどフワフワとした柔らかいタッチが最大の特徴だ。

「企画当初から吊り編み機を使おう、というのは決まっていました。吊り編み機で編んだ生地は柔らかくて耐久性が高いという特徴があるのですが、他のメーカーでもすでにやっています。それ以上の価値を生み出すためには、糸にもこだわる必要がありました」(エイガールズ 尾崎さん)

  • 尾崎孝夫さん世界最高峰の素材見本市でグランプリを受賞するなど、日本を代表するクリエイティブなテキスタイルメーカー、エイガールズの取締役兼企画部部長。
古い校舎を改築したニットーボー新潟の工場。敷地面積は4万7000平米と広大。
糸の原料となるコットンが置かれた倉庫。輸送コストを抑えるために圧縮されたコットンはコンクリートのようにカチカチ。
圧縮されたコットンは2日間ほど放置して自然膨張させる。柔らかくなった表面からカッターで削ぎ落とし、ダクトを通して不純物を取り除いていく。
木くずやゴミなど、不純物の割合は全体の2割強。天然ものだとどうしても廃棄が多くなる。
きれいになったコットンは、繊維を一定方向に整えるためブラシでとかしていく。これが糸の原型。

 

そもそも糸は、手を加えれば加えるほど丈夫で固くなる。触り心地や着心地を優先するためには、極力ストレスをかけずに作られた糸が必要となる。そこで白羽の矢が立ったのが、ニットーボー新潟が開発したピュアソフトという特殊糸だ。

「吊り編み機と糸の相性はサンプルができあがるまでわからないのですが、ピュアソフトは大正解でした。想像以上の膨らみが出ましたし、それでいて軽いというのがスゴイ」(エイガールズ 尾崎さん)

ニットーボー新潟が独自開発したピュアソフトは、数年前に出店した展示会がきっかけで出来上がった。ニット生地を作るには、糸を縦横で編み込んでいくが、普通の生地だと撚りをかけるため、どうしても編んだときに斜めにねじれてしまう。「そうならない横糸はないか」という問い合わせがきっかけで開発されたのだ。

「コットンから糸にするためには、最低でも一ヶ月、ピュアソフトの場合は三ヶ月ほどの時間がかかっています。一般的な糸は収束するためにトルクをかけていくのですが、その分ストレスもかかりますし、ニットにすると固くなったり、ボリュームが出なかったりします。ピュアソフトはトルクをほぼゼロにすることで、綿そのものに近い状態の糸ができるのではないかと作りました」

ニットーボー新潟の副工場長・中屋一弘さん曰く、コットンで一番気持ちいいのは綿の状態。膨らむし、空気を抱き込んでいるので手触りもソフトなのだ。そのために選んだのが綿の繊維が長い、超長綿(ちょうちょうめん)であるアメリカンピマコットン。紡績段階で撚糸による斜行を極力なくして、柔軟性の高い特殊糸を完成させた。

  • 中屋一弘さんニットーボー新潟の副工場長で、開発推進部長、品質保証部長、営業部長代理も兼務。自社開発のピュアソフトは、高級タオルやネルシャツなどにも使われている。
繊維方向が整ったコットンを棒状にして、均整化していく工程。6本の棒を1本に束ね、それをさらに6本集めて1本にしてと、棒の太さが一定になるまで、何度もこの作業を繰り返していく。
均整化された棒状のものは一度タイヤ型に。コットンの繊維は長さが不揃いのため、この工程で短い繊維を振り落とす。ここで落ちたコットンは、脱脂綿などで使われる。
タイヤ型のコットンを引っ張ることで、さらに均整化される。
長い工程を経て、ようやく糸の形に。ここまでで最低一ヶ月。最終工程では、糸を芯にして糸を紡いでいく。

 

「糸は人間が手を加えるほどに固くなってしまいます。天然の綿のままが一番やわらかいので、なるべく天然素材に近いもの、綿を着ているようなものを追求しました。今回、ピュアソフトを使ってTHEのスウェットを作ってもらいましたが、糸のよさが一番出ていますね。吊り編み機で編んでいるのもあって、素材の特製が最も活かせていると思います」(ニットーボー新潟 中屋さん)

ストレスをかけずにソフトな風合いで作られた糸は、新潟から和歌山へ運ばれ、そこで生地となる。吊り編み機を使った生地製作を担当したのが、大正9年に創業した老舗、カネキチ工業だ。

「吊り編みの最大の特徴は、糸を無理に引っ張らず手編みのようにゆったりと編んでいくことです。天井から吊るされた編み機で作られた生地は、床に折り重なるように積まれていくので生地にあたえるストレスはとにかく少ないんです。その分、ソフトで耐久性の高い生地ができるのですが、とにかく時間はかかります(笑)」(カネキチ工業 代表取締役 南方 仁太郎さん)

世界でも数百台しか現存していないと言われる吊り編み機。最新の編み機であれば、一日で13反(約200m)ほど編めるが、吊り編みの場合はたったの0.5反(約7.5m)。一ヶ月でも10反ほどしか作れず、スウェットの枚数で言えばたったの100着しか作れないという。大量生産のものづくりとは完全に逆行する生産体勢だが、丈夫で劣化せず洗い込むほどに実感できるやわらかい生地は、ビンテージと呼ばれる1960年代中頃までのスウェットシャツと同じ手法。何十年たった現在でも古着として多くのファンを魅了し続けていることが、耐久性の高さや品質の高さを物語っている。

冒頭でも触れたが、THEのスウェットは“値段よりも価値”を重視している。特殊な糸を使って、吊り編みで織られた生地は決して安くはないが、その分価値があることは理解いただけたであろう。次のページでは、青森の縫製工場に訪れ、こだわりの縫製とパターン研究の模様をお届けしよう。

  • 南方仁太郎さん約200台の吊り編み機を保有する和歌山のメリヤスメーカー、カネキチ工業の代表取締役。ループウィラーを始め、有名ブランドのスウェットも手掛けている。
見慣れたクリップだが、実は糸の絡まりを防いでくれる秘密兵器。特注パーツも作ったが、これが一番よかったそう。
糸はトンネルのような乾燥機にかけて完成する。
ピュアソフトを使って編んだ生地(右)は、斜行が少ないのがわかる。

 

動いても、着崩れしない。
徹底した品質管理が
THEの難題を可能にした

アパレルOEM生産の縫製工場、丸和繊維工業株式会社。同社の青森工場(株式会社アプティマルワ)で、THEのスウェットは縫製されている。新潟で糸を紡ぎ、和歌山で生地となり、その生地は青森へと渡って縫製され、製品として完成する。まさにTHEのスウェット作りのアンカー的ポジションだ。

一般的に縫製工場は布帛(ふはく)とカットソーに分かれており、前者はシャツやスーツなど、生地が平織りのものを取り扱う。後者はカット(裁断)&ソーイング(縫製)の略で、編地(あみじ)の生地を扱う。丸和繊維工業青森工場はカットソーの会社だ。同社では皮膚のシワを研究した「動体裁断・動体縫製」技術を中澤愈(なかざわすすむ)氏と共同開発しており、カラダの動きに対して衣服が着崩れしない服作りを可能にしている。この動体裁断は宇宙航空研究開発機構(JAXA)にも認められ、山崎直子宇宙飛行士の船内被服として採用されたほど。THEのスウェットにはオリジナルパターンを開発し、組み込まれているのだからとても興味深い。

「THEのスウェットのこだわりは柔らかいこと。スウェットは元々アメリカのワークウェアで、金の採掘現場でも使われるほど丈夫なのが特徴です。その肉厚な生地をどう柔らかな着心地にするか。そこで新しくオリジナルパターンを開発しました」と、丸和繊維工業の伊藤哲朗常務取締役は語る。THEのスウェットが持つ、ふわりとした着心地は、糸や生地はもちろん、パターン技術が大きく影響している。腕を回しても胴体部が動かず突っ張らない。まるで肩に空気があるような印象で、着ると軽く感じる。「それが丸和のパターン力です」と言う。

  • THEとの出会いのきっかけを作った丸和繊維工業の伊藤哲朗常務取締役。縫製業界が抱える問題を憂い、新しいことに挑戦する同社のリードオフマン。

THEのスウェットで使っている生地は、糸にストレスを与えず優しく撚っており非常に繊細なつくり。そのため、大型機械での高速な縫製は不向きで、生地の特製を活かすためには人の手でゆっくり丁寧に縫うことが必要だ。「スピードを落として縫っている分、時間がかかります」とは、土岐貞昭工場長。「THEの生地で使われている糸はとても柔らかい。やさしく紡いでいる糸です。その生地を使って縫製すると、サイズ通りに作るのがむずかしい。そこに職人による工(こう)の技術で工夫を入れます」とも。THEのスウェットは、大量生産とは真反対の、人の手による手作業で作られていた。

「THEとの仕事で“定番とはなにか”を改めて考えました。デザイナーのこだわり、パターンの提案。縫い糸も黒だけでも4、5種類を用意しました」「時間をかけてサンプルを作りました。納期がとても大変で…(笑)」と、ハードな開発段階を懐かしそうに語る、伊藤常務と土岐工場長。「THEのスウェットは、縫い糸にもこだわっています。カットソーは伸びる。伸びに対応するから切れない。そのため、襟周りなど、伸びるところに伸びる糸を使っています」。パッと見ただけでは気付かないこだわり。店頭で見る機会があったら袖口などのリブにも注目してほしい。リブの線が波状にならないよう、熟練の技術が施されているのだから。

  • 中国の赴任から日本に戻り、青森工場で品質管理の腕を振るう土岐貞昭工場長。THEのスウェットのように、人当たりが柔らかい。

工場で働く職人たちの95%が女性。それも地元採用率100%のオール青森で30代が中心だ。伊藤常務は「縫製業は衰退の一途をたどる絶滅危惧種です。大量生産、大量消費の海外生産によって、業界全体の規模が年々縮小されています。そんななか、青森工場はは国内の人材100%。その地域で、その場で採用していきたい。安いものは海外でやればいいと思う」。かつての、早い、安い、でもうまいでは職人たちが疲弊するばかり。そのとき「クライアントを選ぶようになりました。『その価格でできると思いますか』と、あえて聞くようになった」という。その結果、人材が育ち、売上もあがった。今では、デザイナー、ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)と、動体裁断・動体縫製を使った動きやすいスーツを開発するなど、縫製業界のなかでは異例の攻めを続けている。

そんな丸和繊維工業青森工場の一日は忙しい。職人たちは8時半から働き、お昼休みや途中休憩を経て17時半に退社する。チームごとにライン分けされた工場内では、女性たちがテキパキと自分のポジションをこなす。カット(裁断)もソーイング(縫製)もチームプレイ。土岐工場長はその様子を「工員全員が品質管理の意識を持っています。ひとりひとりがチェックすることで、製造数もクオリティーも上がる。それが工場としてのプライドです」。と語る。その分、会社としてエイドルーム(特別休憩室)を設けたり、除雪車が通りやすい幹線道路沿いに工場を建てたりと、職人が働きやすい環境づくりを重視しているのが印象的だ。

「人がいるから応えられる。人で仕上がりが変わる。『ここまで時間をかける必要があるの?』と思われるけど、それはこだわり。THEのこだわりでもあります」そう、言葉を締めくくる伊藤常務。大量生産、大量消費がメインストリームとなりつつあるアパレル業界において、メイド・イン・ジャパンをいちから見直し、高品質とそれに対する対価を再設定したプロダクト。それが、THE スウェットである。

縫製で使われているのは工業用ミシン。
スウェットの仕様書。ここからラインへと指示が渡る。
それぞれが専門的な工程を担い、次の工程へとパスをする。
生地の裁断もカットソー工場の仕事。「縫製の現場が機械化されていると思われがちですが、そうではありません。繊細な手仕事を必要とします(土岐工場長)」
ひとつひとつが手仕事。この縫い作業がクオリティーを左右する。

スウェットの生地は重く、「反物は力仕事なので、少ない男性社員が行ないます」とのこと。
糸と生地、縫製が三位一体となって織りなすTHEのスウェット。オールジャパンのハンドメイドゆえに、高品質な製品に仕上がっている。