日立のスティッククリーナーが好調! 生産拠点である多賀事業所の現場がスゴイ

日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立)のコードレスクリーナーが売れている。パワフルな吸引力と軽さが魅力の『ラクかるスティック』は、計画比1.5倍の売れ行きだという。日本のライフスタイルに合わせた掃除機を世に送り出し、評価されている日立の掃除機は、どのように開発・生産されているのか、茨城県日立市にある多賀事業所で掃除機の生産現場を、家電レビュアーの石井和美が取材してきた。

掃除機の歴史はヒットした掃除機と攻めた掃除機

多賀事業所の土地面積は約14.3万坪。東京ドーム7.5個分の広さにあたる。1939年に設立され、現在は洗濯機、掃除機、炊飯器、電子レンジ、IHクッキングヒーター、LED照明器具、ポンプを生産している。かつては変圧器や計測器なども生産していたマザー工場だ。

日立市にある多賀事業所。樹木の手入れが行き届いている。
東京ドームの約7.5倍の広大な敷地で、海のそばにある。

日立の掃除機は高い技術力を活かした、ユニークで使い勝手のよいものが多い。掃除機は第一号機が発売されてから今年で65年となるが、これまで数々のヒット作を生み出している。多賀工場で保管している過去の掃除機を見ることができた。

過去に販売された掃除機がずらりと並んでいた。
形もさまざまで、個性的な掃除機が多い。

1954年に第一号機の掃除機『T-H』が発売。1956年に生産された『H-H2』は当時の価格は現在の50万円に相当する17200円という価格で販売されたにも拘わらず、生産台数は月間3000台と大ヒット。1981年には業界で初めての紙パック式掃除機『CV-8065』を販売し、注目を集めた。1995年に業界初の縦方向にヘッドを方向転換できる『クルッとヘッド』を開発、2002年には独自のサイクロン方式を採用した軽くコンパクトなサイクロンクリーナー『たつまきサイクロン』がヒットしている。

第一号機の掃除機は大ヒットしたという。レトロでかわいらしい。
独自のサイクロン機構で、吸引力の強さと軽さで人気を博した『たつまきサイクロン』。

また、ユニークなギミックを搭載したクリーナーも展示されている。本体の下に付属品をしまっておける『CV-FX310T』、ゴミがいっぱいになると女性の音声で知らせ、ゴミ箱が上に浮き上がる『CV-RS1』、肩掛けベルト付きの充電式クリーナー『コードレスたつまきサイクロン CV-XF20』などは、当時としてはかなり攻めている掃除機だ。

下に付属品を入れられる収納ボックスがある掃除機。スツールほどの大きさがある。
ホースやヘッドまで収まっている。これは便利!
『CV-RS1』は、ゴミがいっぱいになると「ゴミがいっぱいになりました」と音声で教えてくれた後にフタが自動で開き、ダストケースが浮き上がって取りやすくなる。
肩からかけて使う充電式のキャニスター掃除機。キャニスター掃除機で充電式は、当時は珍しかったとのこと。

生活家電本部 山本亘本部長は「今年で多賀事業所は工場設立80周年。モノづくりをしっかり引き継ぎ、新たな取り組みをしていきたい」と語った。

2019年の最新モデルは、ゴミ捨てがさらにラク!

2019年最新モデルは、社会背景から需要に合った掃除機を開発している。共働き世帯やシニア世帯が急増していることから、パワフルな吸引力と軽さを両立し、掃除後にお手入れもしやすい「使いやすさ」に配慮したモデルを発表した。コードレススティッククリーナー『パワーブーストサイクロン』(PV-BH900G)だ。

新モデルの『パワーブーストサイクロン』(PV-BH900G)は軽さと強い吸引力を誇る。

「ターボ」モードが新たに搭載され、じゅうたん奥に入り込んだゴミもサッと吸引できるようになった。

ササッと掃除すると、カーペットではゴミが残ってしまっていた。
「ターボ」モードなら、同じスピードで掃除してもキレイになる。

本体の取っ手部に「ごみ捨てレバー」を新しく採用することで、手もとのレバーを引くだけのワンアクションで簡単にごみ捨てができるようになった。本体をごみ箱の中まで入れやすくなったので、ホコリの舞い上がりを抑えられるメリットもある。

青い部分がごみ捨てレバー。ダストケースを外すことなく、簡単にゴミを捨てられる。
バッテリーを外せるので、寿命になってもすぐに交換できる。

付属品が豊富なのも特徴のひとつ。「スマートホース」や「ほうきブラシ」など多彩なツールを引き続き採用することで、高いところや掃除しにくい場所などさまざまなところをすっきり立体的に掃除できます。さらに、「延長パイプ」の素材などを見直し、標準質量2.0kgと軽く、使いやすくなっている。

人気のほうきブラシ。サッシのゴミもみるみる吸引していく。

キャニスター掃除機の新モデル『パワかるサイクロン』(CV-SP900G/CV-SP300G)も本体が一回り小さくなり、質量も2.5kgに。また、ダストケースの構造を改良し、内筒部分のフィルターに髪の毛などがからまりにくくなっている。この結果、ゴミにさわることがほぼなくなり、お手入れの時間が大幅に短縮された。

右側が新モデル。従来モデルと比較すると小さくまとまっていることがわかる。
右が新モデル。内筒部分のフィルターにゴミがからまらず、スッと落ちる。

日立の掃除機は実際にどうやって作られている?

第一号機から最新モデルまで、エポックメイキングな掃除機を数多く排出してきた多賀事業所だが、製造工程は大きく変わっている。実際にキャニスター掃除機、スティッククリーナー、ロボット掃除機の生産ラインを見学することができた。

今回、生産ラインを見学できたのはスティッククリーナー、キャニスター掃除機、ロボット掃除機の3製品。
工場内部の様子。一人完結式のセル生産となっている。

2002年までは製品の組み立ては複数の作業者で細分化し、流れ作業を行っていたという。この方法では個々の作業者の能力に応じて差があるので、別の作業者の待ち時間が発生する無駄があった。

現在は一人完結式のセル生産となっている。特に構造が複雑で、作業者の技量によって進捗にバラつきがでるロボット掃除機は「見える化」が行われている。モニタリングシステムが導入され、組み立て作業の整合性がすぐにわかる。組み立ての習得に以前は1ヶ月かかっていたが、モニタリングシステムにより、7日に短縮されたという。

また、自動供給システムを導入し、作業者の組み立て状況に応じてカラクリで部品の自動供給と完成品の自動搬送を行う。台に置かれた部品は、作業台ごと作業者の前に自動で供給され、組み立てが終わると完成品はコンベアで搬送されていく。

作業者の動きと部品の在庫量などをセンサーが感知し、ぶら下がっているドライバーが自動で必要なタイミングで持ちやすい場所に移動したり、ネジなどが供給されたり、作業台の上がどんどん動いていることに驚く。

ロボット掃除機のモニタリングシステム。画面も作業状況に合わせて変化している。
状況に合わせてトランスフォームする作業台。動きに無駄がない。

スティック掃除機は、トレーに部品が収まったトレーがカラクリによって作業者の目の前に置かれる。無駄がなく、あっという間に組み上がっている。カラクリなどは日々改善されており、アップデートしているとのことだ。

トレーに部品がそれぞれ収まった状態で作業者の前に到着し、組み立てが行われる。

一人完結式のセル生産にしたことで、ライン生産だった時代よりも30%効率化を実現しており、キャニスター掃除機が約4分、スティッククリーナーが3分、ロボット掃除機が7分で組み立てが完成するという。

日立の製品は安心できる品質と、操作が簡単で使い勝手のよい製品が多いが、その理由が理解できた。多賀工場では作業者の要望を聞きながら、日々小さな改善から大きな改善まで行われており、カラクリなども独創的かつミニマムで無駄がない。作業者の動きに合わせてめまぐるしく形を変えていく自社製作業台は、アイデアを具現化する技術力の高さと「ユーザーの視点に立つ」という姿勢を物語っていた。