Bluetoothのビッグウェーブがやってきた秋のヘッドフォン祭 2019

ポータブルオーディオブームの発信源といえる日本では、ヘッドホン祭(フジヤエービック主催)とポタフェス(eイヤホン主催)というイベントが定期的に開催されています。
これらのイベントでは発売間もない商品や、発表されたばかりで未発売の商品、日本でパートナーが見つかればリリースされるレアアイテムも試聴することができるため、毎回音楽好き・オーディオ好きの視線が強く深く突き刺さる熱い場となっているのが特徴。普段は聴くことができない超高価格帯のアイテムも手にとることができるため、多くの来場者で賑わいます。
同時に、これからのオーディオのトレンドも見えてくるのが面白いんですよね。

去る11月2日・3日に、中野サンプラザで秋のヘッドフォン祭 2019が開催されました。各ブースを取材してきたので、そのなかから独自性ある特徴的なアイテムをご紹介しましょう。

KORG・Bluetoothノイズキャンセリングヘッドホン・NC-Q1(未発売)

楽器メーカーであるコルグがヘッドホンを出すというところにまず驚きあり。いままでにもコルグ印のヘッドホンはあったのですが、電子ピアノなど楽器のモニター用で、購入しやすいスタンダードな作りのものでした。

しかし新たに発表された「NC-Q1」は、トラディショナルでプロフェッショナルなエクステリアを持つBluetoothヘッドホン。しかもノイズキャンセリング機能つきです。

面白いのがNC-Q1はDJ用であるということ。片側のハウジングを叩くと片耳側の音がミュートされ、今現在鳴っている音と、これからMIXしようとしている音を両方聴くことができます。DJブースのなかは轟音が渦巻く環境ですが、ノイズキャンセリング機能によりDJプレイ中も耳を守ることができるんですね。なおBluetoothによる遅延はあるため、実際のプレイ時は有線接続がおすすめです。

KORG

VOX・Bluetoothノイズキャンセリングヘッドホン・VH-Q1(未発売)

コルグNC-Q1の兄弟機となるのが、VOXブランドの「VH-Q1」。ゴールドのラインがキラリと光ります。

エクステリアの差だけかな、と思いきや、ギターなど楽器演奏に適した仕様になっているとのこと。片側の音をミュートすることで、スマートフォンのスピーカーや小型Bluetoothスピーカーの音が聞き取れるようになり、自分の演奏する楽器の音と一緒にモニター可能に。

大きな音を出せないマンションの部屋でも、ミキサーが使えない河原など屋外でも練習に没頭できる。これは新しいユーザー層を開拓できるモデルとなるかもしれません。

VOX

ナガオカ・有線イヤホン・P908(実勢価格1,280円)

アナログレコード好きにはおなじみ、レコード針メーカーのナガオカ。安価でもハイレゾサウンドを楽しめる、超リーズナブルな有線イヤホン「P908」を展示していました。

ハウジングはアルミニウム。10mmダイナミックドライバーの再生能力は5Hz~80kHz。1000円台のエントリーイヤホンとしては、類にみない物量投入系のイヤホンに仕上がっています。

海外生産のようですが、開発・チューニングは日本の職人が手掛けており、カラバリも10色と豊富。メインイヤホンが壊れたときのための予備としても、持っておきたいイヤホンですね。

ナガオカ

カナルワークス・有線イヤホン・CW-U73LV(12月6日発売・16万円)

ライブ感マシマシなゴージャスサウンドを耳元に。国産カスタムIEMメーカーのカナルワークスからは、3WAY・8ドライバーのCW-L73L/CW-U73LVがリリースされます。ディープなベースにエネルギーを振った重低音カスタムです。同時に低音がボーカル帯域にかぶってマスクしないよう、低音域と中高音域のバランスをとったチューニングとなっています。

CW-L73LVはユーザーの耳の形にあわせてシェルを作るカスタムIEM。そしてCW-U73LVは、同じ仕様で誰でも使えるユニバーサルモデルとなります。

カナルワークス

カナルワークス・カスタムIEM用Bluetoothユニット・HC-M100BTCW2(1万5000円)

そして注目株が、カスタムIEMや、一部のイヤホンで使われている2Pin式ケーブル接続コネクタに対応したBluetoothユニット「HC-M100BTCW2」。カスタムIEMは有線イヤホンのいわば頂点として、音質を極限まで追求したモデルが多いのですが、ユニバーサルなイヤホンは耳への収まりが悪いユーザーにとっても救いとなる存在です。

シンプルな構成ならば、3万円前後からオーダーできるカスタムIEMをより使いやすくしたい。そう願うユーザーにとって、HC-M100BTCW2は必携のカスタムパーツとなるでしょう。

カナルワークス

AKG・有線開放型ヘッドホンK701 Y3(実勢価格2万2000円)

高級ヘッドホンブームを作ったといえるのがこのAKGの「K701」。2006年に日本でリリースされたときはプロユースアイテムで一般には馴染み薄い存在でしたが、2009年にアニメ「けいおん」の小道具として登場するやいなや注目度激UP。自宅でもイヤホン・ヘッドホンで音楽を嗜むユーザーが増えてきた時代背景もあり、一躍大ヒット製品となりました。

軽やかでハイスピードかつ高精細。重低音は望めないものの、女性ボーカルがお好みの方にとってはいまなお最前線を張れるヘッドホンです。

この殿堂入りモデルが3年保証つきで2万円台。最初は8万円超えの価格だったことを考えると、お買い得というしかありません。

AKG

AKG・有線開放型ヘッドホンK240 STUDIO-Y3(実勢価格6500円)

K701 Y3と同じく3年保証がついた「K240 STUDIO-Y3」。スタジオレコーディング用に開発されたヘッドホンでセミオープン型。やはり音漏れがあるため、基本的に屋内用となります。

オリジナルのK240は1975年生まれ。モデルチェンジの途中で大幅にコストダウンされはしたものの、AKGが求める正確な音を届けるヘッドホンとして代々高く評価されており、40年以上の歴史があるブランドのモデルがいまなお新品で購入できるというすばらしい事態となっております。

音場の広さと音の密度のバランスをとっており、リスニング用にもグッド。価格も安いし掛け心地もいいし、1台どうですか。ただしヘッドバンドが硬化すると一気に使いづらくなるので、温度変化の少ない場所で保管するのがおすすめです。

AKG

ag・完全ワイヤレスイヤホン・TWS02R(11月15日発売・8,480円)

完全ワイヤレスイヤホンも多数出品されていましたが、その中で面白いと感じたのがagの「TWS02R」。充電ケースが大きめだなと感じますが、なんとこれ。

モバイルバッテリーとしても使えるんです。充電ケース部のバッテリー容量は2000mAhと少なめですが、この手法は高く評価したい。モバイルバッテリーがマスなアイテムとなったからこそ、+αな機能をどう組み込むかは大事ですし。

石を触っているようなザラザラとした感触の塗装もお気に入り。1万円以下というのも好印象。サンプル機を頂いたのでテストしてみましたが、満員電車のなかでも電波が途切れにくく快適に音楽を楽しめましたよ。

ag

ag・完全ワイヤレスイヤホン・TWS01K(11月15日発売・12,800円)

agからもう1つ、スタンダードモデルの「TWS01K」もリリースされます。こちらはモバイルバッテリー機能はありませんが、オーディオのチップセットとしてクアルコムのQCC3020を採用。高い電波安定度を誇ります。

TWS02R同様に、はじめての完全ワイヤレスイヤホンとしておすすめの1機になるとのこと。agはメイドインジャパンなハイエンドヘッドホン・イヤホンを開発しているfinal(S’NEXT)の兄弟ブランドで、両モデルともAmazonなどで低価格の完全ワイヤレスイヤホンが多く販売されているけど、どれを買ったらいいのかわからないという方向けの提案なのだそうです。

確かに昨今のAmazonなどはフェイクレビューが多く、特に完全ワイヤレスイヤホンレビューの胡散臭さは尋常ではありません。この2モデルは海外生産となりますが、もともとODM開発・生産を主軸としていたS’NEXTが主導することで、ロープライスでも高品位なモデルとなるように作られたそうですよ。

ag

iFiオーディオ・Bluetoothレシーバー・ZEN Blue(実勢価格1万9800円)

ハイレゾ曲がストリーミングで聴けるAmazon Music HDをご利用のみなさまで、スピーカーでも音楽を聞きたいという方へ。iFiオーディオの「ZEN Blue」はいかがですか。Bluetoothレシーバーなのですが、対応コーデックがスゴイ。aptX、AACはもちろん、aptX HD、LDAC、HWAというハイレゾ音源もワイヤレス伝送できるコーデックが使えるのです。

リビングのステレオアンプにつないでもいいし、デスクトップのヘッドホンアンプと合わせてもいい。いずれにしても、スマートフォンやパソコンでキャッチしたハイレゾサウンドをワイヤレスでオーディオコンポーネントに送れます。

iFiオーディオ

Astell&Kern・オーディオプレーヤー・SA700(12月発売予定)

Hi-Fiオーディオプレーヤー界をリードするAstell&Kernの最新作「SA700」も発表されました。同ブランドのはじめてのハイエンドモデルとなったAK120をモチーフとしたデザインで、画面サイズは4.1インチ。持ちやすいサイズなのがポイント。実際に手に持つと、その高密度さ、すなわち重さにびっくりするのですが、面白いことにケースの素材などで音に違いが出てくるので、この重さもSA700の音を支えるものなのでしょう。

音楽再生はスマホで、という方が大多数の世の中となりましたが、よりいい音を求める人にとってはウォークマンの上位機種同様に見逃せない存在。「いままで聴こえなかった音が聴こえてくる!」の感動をもたらしてくれるのですから。

個人的にはハックしてでも、Amazon Music HDアプリを入れられるのかどうかが気になります。それも24bit/192kHzで。

同時に背面がメタルパネルとなったレザーケースもリリースされますよ。

Astell&Kern

Bluetoothオーディオの普及っぷりが見えてきた

今季の秋のヘッドフォン祭 2019を取材で感じたのは、Bluetoothオーディオの浸透っぷり。あなたのところのブランドでもBluetooth機器をリリースするのですか!という驚き。

従来もBluetoothオーディオを使うユーザーは少なからず存在していました。しかしヘッドホン祭などのイベントは、よりHi-Fiを、高みを目指すメーカー・ブランドと来場者が多く、「Bluetooth?なにそれ音悪いじゃん」なオーラが色濃かったんですよ。

2016年に登場したiPhone用完全ワイヤレスイヤホンAirPods(アップル)がきっかけとなって、Bluetoothの完全ワイヤレスイヤホンが爆発的に広まりました。また時期を前後して、高音質なBluetoothコーデックが定義され、クアルコムといった通信チップ・機器メーカーも高音質なBluetoothチップの情報を開示するようになりました。

そして迎えたこの2019年11月。Bluetoothを使っても満足できるサウンドにチャレンジするメーカー・ブランドが続々と登場。有線接続とはまた違ったオーディオの魅力をもたらしてくれるものとなるのでしょうね。

秋のヘッドホン祭 2019