ロサンゼルで実体験 / 5Gが本格的に始まったアメリカでスマホを試す

2020年のスマホ業界の話題は「5G」一色になるに違いない。日本の5Gも始まるし、新型iPhoneも5Gの対応が期待されている。一方すでに海外では多くの国で5Gが始まっている。アメリカでも各都市で次々と5Gが開始、その実力はどんなものなのだろうか?アメリカのスマホ展示会で様子を見てみた。

ロスの街で5Gスマホを発見!意外なスマホが売っている

アメリカの5Gは世界で最も早く、2018年10月にベライゾンがサービスを開始した。しかしそれはスマホ向けではなく、各家庭の有線のブロードバンドを無線化するサービスだった。また世界初の栄誉を得るために標準化される通信規格を採用しなかった。つまり当時の5G製品はベライゾン以外のキャリアでは使えなかったのだ。しかし翌2019年4月には標準規格を採用したスマホ向けサービスを改めて開始した。なお「世界初の5Gスマホサービス」はアメリカに負けまいと韓国がベライゾンの前日にサービスイン。どちらが世界初だろうがあまり関係ないとは思うのだが、何かあれば一番を取りたい韓国と、5G市場で存在感を高めたいアメリカとの静かな戦いが実は4月に繰り広げられていたのである。

2019年11月現在、アメリカの4つのキャリアが5Gサービスを開始している。とはいえ5Gが使える都市はまだごくわずか。また積極的にスマホを販売しているのはベライゾンと、ソフトバンクグループのスプリントの2社だ。そのためアメリカを訪れキャリアの店に行っても、5Gの案内が全く見られないこともある。このあたりは3キャリアが全土で5Gを開始している韓国や中国とは様相がだいぶ異なっている。筆者は2019年10月にロサンゼルスで行われた通信展示会「MWC19 Los Angeles」(MWC19LA)を訪問したが、ロスの街中でも5Gスマホはスプリントの店でしか売られていなかった。

ロスのスプリントでは5Gスマホを販売。やはりサムスンのスマホは必ず売られている

スプリントの店ではサムスンの「Galaxy S10 5G」、LGの「V50 ThinQ」そして中国OnePlusの「7 Pro 5G」の3つのスマホが販売されていた。5Gは始まったばかりとは言え、日本でもマニア層しか知らないようなOnePlusがすでに5Gスマホを出しており、しかもアメリカで売られているとは驚きだ。そういえば日本でも楽天が5G関連のイベントを7月末に行った際、デモ機として用意されていたのは中国OPPOの5Gスマホだった。中国メーカーはすでに各社が5Gスマホを製品化しており、いずれ日本にも続々と入ってくるだろう。5Gの世界で中国メーカーはすでに先頭集団の中に入っているのだ。

中華スマホのOnePlusも5G機を出している。

展示しているスマホにはスピードテストアプリが入っていたが、残念ながら速度は100Mbps以下と、4Gと変わらない速度だった。おそらく店内には5Gのアンテナが設置されていないのだろう。もうちょっと真剣にプロモーションしたほうがいいと思ったが、来客たちを見てみると筆者が5Gスマホを試している間、それを見に来た人は皆無。5Gは料金が4Gより高いうえに、OnePlusの5Gスマホですら800ドルを超える。まだまだアメリカの一般消費者にとって5Gは高根の花の存在なのだろう。またどうせ高いスマホを買うならば、発売されたばかりのiPhone 11シリーズを選んでいるのかもしれない。

5Gだらけの展示会で5Gを思う存分試す

MWC19LAの展示会場ではベライゾンとスプリントが5Gキャリアとしての存在感を大きくアピールしていた。両者はブースも隣同士に構え、お互いの5Gサービスを競い合うように展示していたのだ。5Gスマホもずらりと展示されており自由に試すことができた。スマホはベライゾンが5機種、スプリントは市内の店で販売されていたものと同じ3機種だ。ベライゾンは最新の大型スマホ「サムスンGalaxy Note10+5G」や、合体型の5Gモデムを装着した「モトローラ moto z4」を展示。モトローラの5Gモデム「5G Mods」はモトローラの過去のスマホ「moto Z3」「moto Z2 Force」でも利用できる。背面にマグネットで取り付けると専用の接続ピンで両者が電気的に接続され、スマホのアンテナピクト部分にも5Gの表示がされる。なかなかよくできた構造だ。

スマホの背面にモデムを付けて5G化できるモトローラのz4。上に出っ張って見えるのが背面の5G Modsだ。

通信速度は600-700Mbps。5Gというと1Gbpsを超える「ギガビット速度」が楽に出るはずだが、実際はこれくらいのスピードが最高のようだ。それでもコンスタントにこれだけ早い速度が出るのならば、YouTubeなどのストリーミング動画サービスの利用を使うことも当たり前のものになるだろう。またGalaxy Note10+5Gの6.8インチの大型画面で4Kの動画配信を視聴しても、まるで保存された動画ファイルを見るように表示は綺麗だった。5Gは高速であるだけではなく、高画質な動画も画質を落とすことなく配信してくれる。いずれスマホでの通話も相手とは5G回線を使って鮮明な動画でチャット、なんてことも普通の光景になるだろう。

Galaxy Note10+5Gのような大画面スマホこそ動画視聴に向いている。

スプリントのブースでもスピードテストを行ってみたところ、300-400Mbpsとベライゾンよりもやや悪い結果となった。ブーススタッフの話では500くらい出ることもあるそうだが、それだけまだ5Gは安定した技術とは言えないのかもしれない。なにせブースの他の場所でも5G回線を使ったデモを行っているため、一度に複数の5Gスマホや5G機器が一つのアンテナに接続するのである。なお展示されていた3機種のうち、一番人気はLGのV50 ThinQだった。専用カバーにディスプレイがついており、装着すると2画面が使えるスマホに早変わりするのだ。スペースの関係上カバーは取り外されていたが、この製品を知っている来客はブースに来るなり2画面をどう使うのか、といった質問をスタッフにしていた。片側でYouTubeを見ながらもう片側でTwitterを見る、なんてこともできる。動画視聴が苦にならない5Gだけに注目のスマホなのだ。

LGのV50 ThinQは2画面カバーで拡張できる。
LG V50 ThinQの2画面カバーの使用例(韓国)。

そしてもう1つ、HTCの小型端末「5G Hub」も展示されていたがこれは面白い製品だ。据え置き型の超小型Androidスマホのような存在で、机の上やベッドの横に置いておいてユースやドラマなどの動画を流しっぱなしにしておける、超小型TVのような使い方ができるのである。またバッテリーも内蔵しているので家のどこにでも持ち運べるだけではなく、外にも持ち出せる。5GのWi-Fiルーターにもなるので外出時の高速ネット環境確保にも使えるわけだ。一家に一台あると何かと便利な存在になりそうだ。

超小型TV兼Wi-FiルーターにもなるHTC 5G Hub。

5Gサービスは発展途上、エンタメ用途も楽しみな展開

ベライゾンとスプリントの5Gサービスの展示はスマホによる高速インターネット接続の他、家庭やオフィス、学校向けのアプリケーションがいくつか展示されていた。たとえばVRやARといった大容量のデータを使うサービスは現在はWi-Fiを使うことが一般的だ。今のスマホが使う4G回線では速度が安定しない上に応答速度(遅延)も悪く、VRグラスをかけて身体を動かしても目の前の映像の動きが数テンポ遅れてしまうのだ。しかし5G回線ならまるでネットにつながっていることを意識しないくらい高速に反応してくれる。5Gが当たり前になれば学校の図書室もVRルームになり、図鑑や辞典で何かを調べたいときもVRグラスを使って目の前のバーチャルな映像で知識を吸収する、そんなことが現実になるのだ。

5Gを使った学習アプリケーションの操作デモ。

3Dスキャナを使った5Gのデモも行われていた。日本の富士テクニカルリサーチが開発した「F6 SMART」は片手でも持てる3Dスキャナで、目の前にある対象物の周りをぐるりと撮影すると即座に3Dデータを取り込んでくれる。しかし現在の4GやWi-Fi回線ではデータをまずサーバーにアップロードして、それを遠隔地で確認してから再撮影の指示などを出す必要がある。ところが5Gならばスキャンしたデータを即座に送信できるため、現場でスキャンしたデータを事務所でリアルタイムに確認しながら「もっと左を撮って」なんて指示も出せるのだ。SF映画の世界にある「その場で銅像をスキャンして、遠く離れた国にある倉庫で複製を3Dプリンタで即座につくる」なんてことができてしまうわけだ。こうして考えてみると5Gは今までできなかったことを現実のものにしてくれる、夢のような技術であることがわかるのではないだろうか?

3Dスキャンを片手にその場にあるものを3Dデータ化できる。

もちろん一般人が普段使うサービスなども、5Gで劇的に変わる。ゲームはもはやダウンロードして使うのではなく、サーバーに直接接続してゲーム本体もデータもスマホに一切なくても遊べるようになる。そしてそれはスマホだけではなくPCでも同様だ。PCゲームではゲームプレイをしながらそれを配信する人も多いが、5Gになればだれもがネット回線のことを気にせず誰もがそれを楽しむことができる。TVももはやハードディスクレコーダーなどいらなくなるのだ。5Gはまだ始まったばかりで何ができるのかわからないことも多い。だが数年後には今の生活が一変するような新しいサービスが生まれ、誰もが5Gを使っていることが当たり前になっているのだ。

ゲームやTVの使い方も5Gで大きく変わる。