ドローンやロボットはあたりまえ / SFの世界が現実に!未来都市ドバイで最新テクノロジーを見た


世界のITをけん引するのはアメリカや日本に変わり中国と誰もが思っているだろう。たしかに新しい技術は中国からも多数生まれている。だがそれらをいち早く市場に取り入れ、一歩先の近未来を現実にしようとしている都市がある。それが中東、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイだ。2019年10月にドバイで行われた展示会「GITEX2019」の会場に足を踏み入れてみると、そこには「近未来都市ドバイ」の光景が広がっていた。

空飛ぶバイクにドローン、街の中は無人宅配車が走る

自動車業界は自動運転の実用化を進めているが、さすがに人間が乗る自家用車の自動化はまだ数年先の話になりそうだ。しかしモノを運ぶ宅配自動車の実用化はもう目前だ。Neolix Technologiesは中国国内数都市ですでに自動運転車による宅配サービスをテスト中だが、ドバイでは年末にも同社の車を使った24時間体制の完全自動な無人宅配を開始する予定だ。UAEのEコマース大手のnoon.comがNeolixの自動宅配車を5000台受注。またUEAのキャリアであるEtisalatも5Gを搭載した同社の宅配車を導入予定。

Neolixの宅配車は複数の鍵付きロッカーがあり、配達先まで自動で走行した後スマホで受取人に通知を出す。受取人はバーコードを使ってロッカーを開けて自分の荷物を受け取る仕組みだ。スマホを使って配達時間の指定を行えるため人件費をかけて人間が再配送をする手間も無くなる。まるで数年後の話のように聞こえるが、このサービスは年末に開始される現実のものなのだ。

Neolixの完全自動な無人宅配車

オートバイが空を飛ぶなんて夢だと思っていないだろうか。Lazarethの開発した「LMV496」はGITEX2019の会場で4台限定の予約を開始した。マセラティ製V8エンジンを搭載するパワフルな4輪オートバイが、スイッチ一つで変形しタイヤが4方向に水平に広がる。浮上用には1300馬力のジェットエンジンを搭載し10分間の空中走行、いや飛行が可能だ。毎分9600回転するというジェットタービンからはものすごい爆音が発生されそうだ。気になる価格は49万6000ユーロ(約6000万円)。マンションや高級車を買うことを考えれば高い買い物ではない。しかも10分間とはいえ渋滞の道路もすいすいと飛び越えることができるのだ。おそらくドバイの誰かが予約しているだろう。

空飛ぶバイクが6000万円で買える

バイクじゃなくて空を瞬時に飛んでいきたい人にはLIFT Aircraftの「HEXA」がお勧めだ。名前の通り8個のプロペラをフレームでつなぎ合わせた一人乗りのドローンだ。重量は約200kgで軽自動車よりも軽い。しかも操作は3方向のジョイスティックと、タブレット型のタッチパネルを使うだけ。飛行機やヘリコプターのコックピット内部にある複雑な機器は一切なく、小型ドローンをスマホで操作するように自分が乗り込んで自由に飛ぶことができる。1回の充電で飛行できるのは15分だが、遊覧飛行や農薬散布といった用途なら十分使えるだろう。いずれは駅の屋上にレンタルHEXAが並び、自宅マンションの駐車場や屋上がドローンの離発着場になる、なんて時代がくるかもしれない。なおHEXAは来年にもアメリカなどでサービスされる予定だ。

一人乗りドローンのHEXA

空飛ぶバイクやドローンは生活を豊かにしてくれるだろうが、利用できるのは健常者に限られてしまう。たとえば車いすを使われている方は外に出るのも一苦労だろう。電動車いすがあれば体力を使わずとも移動できるが本体サイズは大きいし価格も高い。そこでItariadesignは「WheeM-i」(Wheelchairs Mobility Interface )を考案した。これは車いすのまま乗り込める電気自動車だ。スマホで予約して自宅そばのハブまで移動してWheeM-iに乗り込み、行先に一番近いハブで乗り捨てる。自由な場所に乗り捨てることはできないものの、少し遠い距離でも電車に乗り換えたりせずWheeM-iが自動で走ってくれるのだ。デザインもスタイリッシュで、移動することそのものが楽しい体験になりそうだ。

WheeM-iは車いすでの移動概念を大きく変える

表情豊かなロボットがショッピングの相手をしてくれる

ドバイと言えば世界最大のショッピングモール「ドバイモールが」あることからわかるように、ショッピングの街としても有名だ。ドバイに来れば世界中の有名ブランド品も自由に買うことができる。だがそんなドバイのお店に行くとこれからはロボット店員が迎えてくれることになる。Furhat roboticsのソーシャルロボットは、なんと人間と同じような感情表現を顔に表すことができる。その秘密はアニメーション。顔そのものは白色透明の樹脂で、顔の内部からプロジェクターを使って顔の表情をアニメーションで表示するのだ。来店する客に合わせて投影する人種や年齢を変えることも可能だ。もちろんAIを利用し客の質問に対して的確なアドバイスも提供できる。

本物の人間のように豊かな表情で応対するFurhat roboticsのソーシャルロボット

また無人店舗もこれから広がっていく。中国での無人コンビニブームはドバイにもやってきそうだ。Moby MartはQRコードを使って入店できる小型のコンビニエンスストア。内部での支払いもQRコードで店員は一人もいない。来客が誰であったかをQRコードと監視カメラでチェックするので盗難の心配も少ないという。さらにこの無人コンビニはそれ自身が自動車となっているため、どんな場所へも移動できるのだ。朝は住宅地、昼はオフィス街、休日は競技場やイベント会場のように、お客のいるところへコンビニが移動できるのである。まさしくこれこそ「コンビニエンス」なストアと言えるだろう。

無人コンビニのMoby Martはコンビニそのものも移動できる

そして焼き立てのパンですら、もはや自分の好きな時に受け取れるようになる。Wilkinson Baking Companyが開発したBreadBotの全自動パン焼き器は無人でパンを焼き上げてくれる自動販売機だ。1日当たり200個のパンを焼き続けてくれるという。1個のパンが焼きあがる時間は90分かかるが、深夜でもすぐにできたてのパンが買えるのである。1個1個のパンは焼きあがりも微妙に違うが、購入者は自分の好きなパンを選んで取り出すこともできる。いずれは食パン以外のパンもこんな自動焼き上げ機でいつでも買えるようになるに違いない。

パンも焼き立てが24時間いつでも買えるBreadBot

日米欧中の英知がドバイで実用化される

ドバイが世界中の最先端の技術を導入しようとしているのは、原油が枯渇してしまえば国には何も残らないという危機感があるからだ。生活しやすい都市になることで世界中からの人を集め、ドバイでビジネスを行ってくれることがドバイの新しい収益になるわけだ。そのためにも政府自らが進んで都市のスマート化を進めており、ドバイ警察が「空飛ぶパトロールバイク」を導入するなどドバイの未来都市化は官民の区別なく進んでいる。

その動きを受け世界中のIT企業がGITEX2019への出展を行っているのだ。それは何も派手な技術や製品ばかりではなく、ちょっとしたアイディアから生まれた新製品も多く見かけた。たとえばWhirlpoolのオーブンレンジはドアがディスプレイになっている。インターネットにつながっているのでここに料理のレシピを検索して表示するだけではなく、調理中の時間にYouTube動画を流してみることもできる。さらには庫内カメラを使い、ドアのガラスが曇っていても内部の様子を表示することが可能だ。今まではただのガラスだったオーブンのドアが、これからは情報を表示するスマートなディスプレイに様変わりするのだ。

オーブンのドアがモニタになるなんて思いもつかなかった

机の上においておける小型のロボットは薬を自動的に出してくれる。薬の時間になればスマホに通知してくれるし、それでも薬を飲まなければロボットが注意もしてくれる。これはすでに商用化された製品で、年配者向けに販売されているという。身近なところに最新のIT製品が入り込んでいる、それがドバイ生活の現実なのだ。世界中で毎日のように次々と新しい技術やサービスが生み出されているが、ドバイはそれらをすべて現実のものとして取り入れようとしているのだ。

薬の飲み忘れを防いでくれるPillo。ドバイの年配者には必須のツールだ