変態的腕時計世界=ビザールウォッチVol.10 CHRISTOPHE CLARET/21ブラックジャック

●What’s ビザールウォッチ? 

針も読めなければ、現在時刻もわからない奇妙すぎる時計たち。変態的腕時計=ビザールウォッチ。腕時計とは「時刻を知り、また時間を計るのに使う、腕にのせる器機」である。ところが現代の高級時計の世界には、最高峰の時計技術を駆使しているにも関わらず、針も読めなければ、現在時刻もわからないという“ 奇妙な時計”が生まれている。それこそが「ビザールウォッチ」。誰もが忙しく暮らすスマートフォン時代に現れた、時間を豊かに楽しむための“ 最高の贅沢品”である。
機械式時計は、メカニズムが複雑であるほど時計の価値が高まり、価格にも直結する。しかし複雑な時計機構に遊び心を加えると、ビザール度がぐっと高まってくる。高級時計を知りすぎた人がたどり着く末路へようこそ!

<今月の時計>
Vol.10

CHRISTOPHE CLARET
21ブラックジャック

最高峰の鉄火場ウォッチ

ビザールウォッチの特徴とは、“余計なこと”をすることにある。時計という役目からすれば、正確な時刻を示すのが本職であるべき。しかしそういったお約束を好まぬ時計ブランドがあるのだ。その極めつけが、この時計。いうなれば腕に乗せる鉄火場である。


CHRISTOPHE CLARET
21ブラックジャック

もはや時間など見ない。

時計の本質とは、時刻を正確に示すことであり、そのために機構を考え、材料を研究し、熟練の職人が腕を磨く。ところがビザールウォッチは、努力を惜しまず研鑽を積むところまでは一緒なのだが、なぜか方向が斜め上を行く。良い意味での“才能の無駄使い”なのだ。今回紹介する時計ブランド「クリストフ・クラーレ」は、天才時計師クリストフ・クラーレが率いる超絶技法の時計工房。クラーレは数百の極小パーツを寸分の誤差もなく動かすハイコンプリケーションウォッチの名人であり、名だたる名門ブランドにムーブメントを提供していた。彼の凄さは小型化にあり、懐中時計サイズでないと実現不可能だった複雑な機構を、ギュッと小型化して腕時計に搭載するのが得意だったのだ。

ケースサイドの窓から見える、小さなダイス。1.5㎜角の立方体ながら、完璧な工作精度で作られている。

しかしその技術力が仇(?)となり、彼はビザールウォッチの道へと引き込まれる。並の時計師であれば、複雑機構を組み込むだけで時計のケースはパンパンになるのだが、クラーレの場合は余裕がある。そこでついつい“余計なこと”をしてしまうのだ。

時計内に3つのカジノゲーム

今回紹介する「21ブラックジャック」は、何と時計内に3つのカジノゲームが組み込まれているという鉄火場ウォッチだ。

一つ目はケースサイドの小窓から見える、小さな二つのダイス。一辺が1.5㎜しかないという極小サイズのダイスだが、きちんと目も入っている。ここで楽しむのは、二つのダイスの目の合計や出目によって勝敗を決める「クラップス」というゲーム。

ケースバックにはルーレットが収まり、グルグルと回転して、矢印が数字を指し示す。8の所にはエメラルドをセッティング。ここは好きなラッキーナンバーに変更可能。

二つ目はケースバックから見える「ルーレット」。ナンバーは固定されており、中央のルーレットが数秒間回転してから停止。矢印が数字を指し示すという仕組みになっている。

そして三つ目が、時計前面を大きく使った「ブラックジャック」。この機構が面白いのだ。9時位置のプッシュボタンを押すと、トランプの絵柄が書かれた7枚のディスクが回転して、トランプをシャッフル。ランダムに停止することで、ダイヤル上側のディーラーが1枚、下側のプレイヤーが2枚、手札が配られたことになる(それ以外のカードは隠れて見えない)。

ケースサイドには、3つのプッシュボタンがある。真ん中を押すとトランプが配られ、PLAYERとDEALERのボタンを押すとカードが開く。

プレイヤーがもう一枚カードを引く場合は、ケースサイドのPLAYERボタンを押す。すると“チーン”という澄んだ美しい音色と共に窓が開き、カードが出てくる仕組みになっている。ディーラー側も同様で、DEALERボタンを押すと“チーン”となって窓が開く。そして最終的には、手札を合計して勝負をするのだ。

PLAYERとDEALERのボタンを押すと、小窓から見えるHITと書かれたゴングが動いて“チーン”と音を奏でる。

この時計は、この“チーン”が凄いのだ。チーンの音の正体は、時計機構の中で最も格式があり、複雑で、難易度が高い「スヌリ」という機構がベースとなっている。時計に内蔵されるハンマーでゴングを叩くことで音を奏でる“楽器”であり、作るだけでなく、美しい音に調律すること自体がとても難しい。このハイレベルな時計機構を、ブラックジャックという遊びのためだけに使用するというのが、クリストフ・クラーレの凄いところ。才能の無駄使いと称される所以である。

もちろん「21ブラックジャック」にも時分針はついているので、時刻を知ることはできる(しかも高精度認定を取得済み)。しかしこの時計が提供するのは、遊びに没頭する時間。それはとても贅沢な時間である。

CHRISTOPHE CLARET
21ブラックジャック

自動巻き、チタンケース、ケース径45㎜、世界限定21本。30,000,000円。
問ノーブルスタイリング ☎03-6277-1604

https://www.christopheclaret.com/
http://noblestyling.com/

篠田哲生が断言するビザール度!
視認性★★★3
メカニズム★★★★5
コンセプト★★★★★5
プライス★★★★5