時計を手にするきっかけなんて、いろいろあっていいじゃない! カルチャーな腕時計たち Vol.9 ゴジラとグランドセイコー

1954年に第1作が公開され、アニメやハリウッド版を含めると、これまでに計35作が製作された特撮怪獣映画の金字塔的作品『ゴジラ』。その強烈なキャラクターと造形、ストーリー性で日本はもちろん、世界中にも多くのファンを持ち、それゆえ、これまでに数多くのキャラクターグッズやコラボレーションアイテムが作られてきた。そして2019年、ゴジラの生誕65周年を記念した腕時計がリリースされた。しかも、コラボしたのがグランドセイコーというのだから驚きだ。

始まりは“ゴジラVS和光”

なぜ、グランドセイコーとゴジラがコラボレートすると驚きなのか。それは、両者には1954年から続く“因縁”があるから。

芝浦沖に現れたゴジラから東京を守るべく、防衛本部は数々の兵器と5万ボルトの電流によって死滅させる作戦に出る。しかしゴジラはびくともせず、戦車部隊を全滅させ、その後は銀座で松坂屋、和光、日劇を次々と破壊。東京を焦土にしてしまう──これが記念すべき第1作『ゴジラ』のハイライトだ。

この、劇中でゴジラに破壊されてしまう和光が、セイコーのルーツとなる服部時計店。同社は1881年に京橋采女町(現在の銀座五丁目あたり)に創業し、1887年には店舗を銀座四丁目2番地へと移転。そして同社初の懐中時計「タイムキーパー」を完成させた1895年、ついに銀座四丁目角に新店舗を開店させる。屋上に時計塔が設えられたモダンな建物は関東大震災で全焼してしまうが、その後1932年に再建されたネオ・ルネッサンス様式のビルにも時計塔を設置。服部時計店の小売部門を継承して和光となった現在も、銀座、そして東京のシンボルであり続けている。

劇中で派手に建物を壊されたため、第1作公開当時は和光も激怒したというが、後に東宝と和解。1995年公開の『ゴジラvsデストロイア』では、体内に異常をきたしたゴジラが核爆発を起こす可能性を示唆するイメージシーンのなかで、実に41年ぶりに和光本館が登場した(破壊はされていない)。そして2016年公開の『シン・ゴジラ』では、米軍の攻撃に激怒したゴジラの口から光線が放たれ、これによって和光本館が一瞬にして破壊される、なんとも強烈なシーンが描かれている。

そんな紆余曲折を経て誕生したのが、グランドセイコー「Godzilla 65th Anniversary Limited Edition SBGA405」。かつての両者の関係性からは想像もできなかった、夢のようなコラボレートである。

グランドセイコー
Sport Collection
Godzilla 65th Anniversary Limited Edition
143万円

ゴジラの生誕65周年と、セイコーが誇る独自機構「スプリングドライブ」の誕生20周年を記念した、世界650本の限定モデル。ケース素材にはブライトチタンを採用しており、そのマッシブなルックスからは想像もつかないほど軽快な装着感が得られる。搭載されるムーブメントはもちろんスプリングドライブ。ケース径44.5mm。

あらゆるディテールにゴジラを感じる限定モデル

このモデルが表現したのは“ゴジラの力強さと威厳”で、誰が見ても納得する、ゴジラの特徴を随所に配したデザインになっている。キーカラーには深みのあるレッドを採用し、それがダイアル上でより強調された、実にインパクトのあるタイムピースだ。

深紅のダイアルには放射状のパターンが施されているが、これはゴジラの口から放たれる“放射熱線”にインスパイアされたデザインだという。一方では、立体的なインデックスや太い時分針を採用するなど、グランドセイコーのデザインコードをしっかりと踏襲。時刻の判読がしやすく、力強さのなかに上品さとスポーティな雰囲気を携えた、グランドセイコーらしい仕上がりになっている。

放射熱線をモチーフにしたという放射状のダイアルパターンは、力強さはもちろんのこと、深紅のカラーリングによって日常的に装着しやすい落ち着いた雰囲気も放っている。

エッジの効いたマッシブなケースは、グランドセイコー スポーツコレクションにおける数々の限定モデルで採用されてきたデザインだが、ゴジラの屈強な体躯を想起させる。そして、このケースに組み合わされるのが「ゴジラの肌の質感を表現するため」に採用したという、赤いコーティングを施したシャークストラップで、“巨大不明生物”の不気味な雰囲気を見事に表している。

赤いコーティングを施したシャークストラップは、まさにゴジラを想起させるディテール。ケースはザラツ研磨によるポリッシュ面とヘアラインが組み合わされ、立体的な仕上がりに。

そして、このコラボレーションモデルに付与されたスペシャルなディテールがケースバックだ。サファイアガラスの裏蓋には、銀座の街を破壊するゴジラと和光本館が描かれているのだが、これをデザインしたのが『シン・ゴジラ』で監督・特技監督を務めた樋口真嗣氏。このモデルが発表された際、樋口氏は「1954年の第1作から、時報の鐘という時計にしかできない方法で果敢にもゴジラに戦いを挑み敗れ去った因縁浅からぬ戦友。ゴジラの傍には幾度となく壊されてもなお時を刻み続ける和光本館の時計塔を添えてみました」とコメント。ゴジラの製作に携わり、ゴジラを愛する樋口氏だからこそのデザインと言えるだろう。

樋口真嗣氏がデザインした裏蓋には、このモデルオリジナルのゴジラがプリントされる。ゴジラと和光本館との絡みは、第1作のワンシーンを彷彿とさせる。

宿敵を知り尽くしているからか、その完成度はさすがのひと言。単にロゴやキャラクターをあしらうのではなく、時計全体でゴジラを想起させようとしたところにグランドセイコーの本気が伺える。2020年公開予定の『ゴジラVSコング(仮)』は、公開が11月に延期になったようだが、それまではこの時計を手に、ゴジラの脅威を感じてみてはどうだろう。

問セイコーウオッチ●0120-061-012
https://www.grand-seiko.com/