iPhone不在の5Gスマホ市場 でサムスンとファーウェイが早くも激突!

2019年は世界各国で5Gサービスの開始が相次いだ。2019年11月1日には世界最大の通信市場、中国でも5Gがはじまり5Gスマホの新製品が次々と発表されている。だがそこにはアップルのiPhoneの姿は見えない。5G対応のiPhoneの登場が来年以降となる中で、スマホシェアトップメーカ同士の熱い戦いが早くも始まっている。

2019年は5G元年、ファーウェイは5Gスマホを8機種投入

2019年12月6日、ファーウェイはセルフィーを強化したスマホ「nova」シリーズの最新モデル、「nova 6」を発表した。最新のCPU「Kirin 990」を搭載し、フロントカメラは3200万画素に加えワイドレンズの800万画素も搭載したデュアル仕様。もはや複数名でのセルフィー撮影時にもスマホを持った手を伸ばす必要なく、フロントカメラでも手軽にワイド撮影ができるのだ。メイカメラも4000万画素+800万画素x2というぜいたくな仕上げだ。

このnova 6と同時に5G対応の「nova 6 5G」も発表。これでファーウェイが今年発表した5GスマホはサブブランドのHonor(オナー)から出ている2機種を加え、合計8モデルとなった。しかも画面が折りたためるフォルダブルスマホ「Mate X 5G」や、ポルシェデザインとコラボした「Mate 30 RS Porsche Design」など最新技術搭載製品やブランドモデルもある。Honorのラインは若い世代を狙ったシリーズであり、ファーウェイは5Gスマホを幅広いターゲット層に販売しようともくろんでいるのである。

12月発表のnova 6 5Gはフロントデュアルカメラを搭載。

これらの製品の中でもMate Xは2月に発表された製品で、10月になりようやく発売にこぎつけた。ファーウェイ曰く「世界初の折りたたみ型5Gスマホ」とのことだが、折りたたみスマホは先にサムスンが「Galay Fold」を発表しており、その5Gモデル「Galaxy Fold 5G」も5月に発売とファーウェイに先行した。今や「世界初」といわれても消費者はあまり関心を寄せないだろうが、ファーウェイとしてはサムスンよりも技術力で先行している面をアピールしたかったのだろう。

折りたたみ型5Gスマホではサムスンより先に発表されたファーウェイMate X。

「5G標準モデル」を次々に送り出すサムスンの実力

一方サムスンは2019年に5Gスマホ5機種を発売した。数の上ではファーウェイに抜かれたものの、そもそも5Gスマホを複数展開しているメーカーはシャオミなどわずかしかない。しかもサムスンは4Gスマホでも数多くの新製品を今年発売した。スマホ世界シェア1位のサムスンは、販売数のさらなる引き上げのため5Gスマホを積極展開しているのだ。もちろんその中には今年大きな話題となった折りたたみ型スマホ「Galaxy Fold」の5G版、「Galaxy Fold 5G」も含まれる。

サムスン最初の5Gスマホ「Galaxy S10 5G」は世界初の5Gスマホでもある。2019年4月に韓国とアメリカで5Gが開始された際には全通信キャリアがGalaxy S10 5Gを採用し、その後現在に至るまで世界各国の5G開始キャリアのほぼすべてが販売を行っている。いわば「5G標準機」と呼べるスマホなのだ。日本でも発売された「Galaxy S10」「Galaxy S10+」よりさらに高性能なスマホであり、カメラは背面に4つ、フロントに2つと合計6個もある。

5Gスマホ標準機と呼べるGalaxy S10 5G。

また9月から発売された「GalaxyNote10+ 5G」はサムスンのシェアが数年で急落した中国市場で起死回生を図るべく投入され、期待通りの販売数を記録しているという。本体にペンを内蔵する数少ない手書き対応端末でもあるが、この製品も各国の5G開始キャリアが取り扱っている。なお小型サイズでモデル名に「+」の無い「Galaxy Note10 5G」は韓国のみで販売されているが、同国のみのカラバリの「赤」モデルが女性層を中心に人気だ。

韓国のみで販売されるGalaxy Note10 5Gの赤バージョン。

Galaxy Note10+ 5GはアメリカのT-Mobileが採用したことでも話題になっている。T-Mobileの5Gサービスは600MHzという低い周波数を使うことで全米にエリアを一気に広げようとしている。なお一般的に使われているのは1800MHzや2500MHzなどより高い周波数だ。また5Gでは新たに28000MHzや35000MHzといった、より高い周波数も使われようとしている。T-Mobileの低い周波数は現時点では少数派なのだ。そしてサムスンはこの600MHzに対応した世界初の5Gスマホとして、Galaxy Note10+ 5GのT-Mobile版をリリースしたのだ。他のメーカーもいずれ同周波数に対応したモデルを出してくるだろうが、まず最初にサムスンのスマホが出てくるあたりはさすが世界シェア1位メーカーの素早い対応と言えるだろう。

600MHz対応のGalaxy Note10+ 5Gで5Gサービスを拡大するT-Mobile。

サムスンは他にもサブラインと言える「Galaxy A」シリーズの最上位モデルとして「Galaxy A90 5G」を発売。ファーウェイでいえばnovaあるいはHonorに相当するラインで、10万円を切る価格ながらも高性能なカメラ(特にフロントカメラ)と5G対応を売りにしているのがGalaxy A90 5Gだ。こうしてみると折りたたみ型、ハイエンド、セルフィー向けとそれぞれのターゲット向け製品でサムスンとファーウェイが早くも5Gスマホで競争していることがわかるだろう。

「漁夫の利」を狙うアップル、5G版iPhoneでシェア拡大を狙う

5Gスマホを出しているメーカーは2019年末時点でファーウェイとサムスンのほか、LG、シャオミ、OPPO、Vivo、ZTE、OnePlusなど。スマートフォンの心臓部であるSoC(システムオンチップ=CPUや通信モデムを統合したチップセット)を手掛けるクアルコムやメディアテック、ファーウェイはこの冬相次いで5G対応の最新SoCを発表しており、2020年には5Gスマホの数は一気に増える見込みだ。ソニーや京セラといった日本勢や、台湾資本の入ったノキア(HMD Global)やシャープからも5Gスマホが登場するだろう。

さてここまで出てきた名前を見て、アップルの存在感が全く感じられないことを疑問に持つ人もいるだろう。実はアップルのiPhoneはサムスンやファーウェイとは異なり、SoCに通信モデムは入っておらず、そのモデムはインテルやクアルコムから供給を受けていた。5Gではインテルのモデムを使う予定だったがインテルがスマホ向け5Gモデムの開発を断念。アップルは一時はクアルコムを相手に独占禁止法で訴訟まで行ったが和解、インテルからは5Gモデム開発者を引き抜いた。なおこの引き抜きはアップルが独自に5Gモデムを開発するのではなく、5G端末開発時の設計ノウハウや関連特許の取得が目的だろう。インテルですらギブアップした5Gモデムをアップルが開発できるほど通信技術の世界は甘くない。

ファーウェイの最新SoCは5Gモデム内蔵。アップルのSoCにはモデムが入っていない。

インテルからクアルコムに乗り換えたことで、5G対応iPhoneは2020年モデルで登場すると言われている。とはいえ5Gスマホは通信モデムを載せ替えるだけで設計できるものではなく、複数の周波数の電波を受信するための最適なアンテナ設計や、消費電力をコントロールしつつ通信回線品質を安定させるといった全く新しいアーキテクチャの構築が必要になる。もしかすると2020年の5G iPhoneはアメリカなど一部の国でしか販売されないかもしれない。

とはいえ世界シェア3位のアップルの存在は、世界の5G普及に無くてはならない存在でもある。

たとえば韓国ではサムスンとLG、アップルでスマホ市場がほぼ占有されているため、サムスンとLGの5Gスマホだけでも毎月100万人以上が4Gから5Gに乗り換えている。ところが日本ではアップルに加えソニーやシャープなど日系メーカーが強い。前述した5Gスマホを提供している韓国や中国のメーカーの5Gスマホが日本で発売になっても、現在持っている4Gスマホから買い替える消費者の数は多くないだろう。

韓国ではSamsungとLGの5Gスマホが5G利用者を増やしている。日本ではそうならないだろう。

だが、2020年に日本で5G iPhoneが登場すれば、それまで5Gに興味を持っていなかった人ですら「5Gを使ってみようか」と思い、5Gサービスへの乗り換えを図ろうとするだろう。それほどまでにアップルのブランド力は強いのだ。他の先進国でも5G iPhoneが5G加入者を加速すると考えている国も多い。そして既存のiPhoneユーザーが一気に5G版iPhoneに乗り換えれば、5Gスマホ市場でアップルのシェアが一気に伸びる可能性は十分にありうる。

サムスンとファーウェイの5Gスマホ競争。お互いのライバルは実は相手ではなくまだ見えもしていない「5G iPhone」なのかもしれない。2007年の初代iPhoneの登場でスマートフォンの新時代が始まったように、5G時代を切り開くのは再びiPhoneになるかもしれない。そしてそうさせないためにも、サムスンとファーウェイは2020年の頭から再び5Gスマホを次々と投入するに違いない。

5G iPhone登場までサムスンとファーウェイの5Gスマホラッシュは続く。