アウトドア用品メーカー・パタゴニアがリペアトラック『つぎはぎ』で全国を旅する理由

モバイルハウスのようなトラックで全国を巡り、ウェアの補修を広めていく。そんなツアーを高いファッション性と高品質なアウトドアウェアで知られるパタゴニアが続けている。その活動を始めた理由とは!?

思い出とともに色づいた
“使い古し”の魅力

荷台が無垢材で覆われた“移動する山小屋”のようなトラックが雪山を疾走する。パタゴニアが『Worn Wear Tour』と銘打ったツアーの1コマだ。

Wornとは使い古したという意味。自然やアウトドアを愛する人たちに「自らが親しんでいる場所を守る大切さを知ってほしい」という理念を持つパタゴニアでは、長くリペア可能なウェアを製造してきた。服の製造にかかる環境負荷はかなり高く、それを少しでも軽減できるよう「一着を長く愛用してもらう」ためだ。店舗でのリユースやリペアサービスもその一環だが、まだまだ自らリペアをしようという人は少数派。そこで誰かに頼るのではなく、「自らリペアする楽しさを伝えたい」という思いから始まったのが『Worn Wear Tour』だ。荷台が工房に架装されたトラック『つぎはぎ』で全国各地をめぐり、持ち込まれたウェアのリペアをサポート。小さな穴や破れにパッチを当てるだけでなく、大きな破れや擦り切れにあて布をしてミシンで縫うなど、その場で補修方法を体験できる。

「Worn Wearに、私達は着ることのストーリーを紡ぎ、衣類を長く使うという意味を込めています。まだまだ日本では古着やリペアした服に嫌悪感を感じる方が少なくありません。でも、長く着た服についた傷や穴はある意味勲章ですし、思い出が込められている。それを愛おしく感じてほしいんです」と、パタゴニア日本支社のロジャース通子さんは語る。

顔を合わせてこそ
伝わる思い

Worn Wear Tourはこれまで2度に分けて行われた。始まりとなったのは今年の1~3月にかけて全国8箇所のスキー場で行われたWorn Wear Snow Tourだ。パタゴニアだけでなくすべてのブランドのウェアを対象にし、全11日間の開催で詰めかけた参加者は1688名、修理件数550着という盛り上がりを見せた。トラックが目をひいたためか、その日に興味をもち、できたばかりの傷や穴をリペアしていく方も多かった。

一方、全国11の大学を回るWorn  Wear College Tourではそもそもリペアを意識したことがないという参加者も多く、「難しそう」「自分とは縁遠い」と感じていた学生たちばかりが集まった。それでも自分の手を動かして破れを縫い合わせ、汚れを落としていくうちに、「もっと服を大切にしよう」「多少高くても長持ちするものを選びたい」「何年も受け継いでいきたい」といった思いを口にするようになったという。

「トラックで全国をまわることで一人ひとりにリペアの良さを伝えられるし、生の反応も窺える。『父が着ていたもの』だとか、『初めてのスキーウェア』といった、一つずつのウェアに込められたストーリーを聞けたことがなによりの収穫でした」(ロジャースさん)

新品よりもずっといい、Worn Wearの魅力。この先もリペアトラック「つぎはぎ」とともに全国へ広がっていきそうだ。

内部は大人2人でも十分動き回れる作業スペースを確保している。
小さな穴空きはパッチを貼るだけで補修できる。もとのデザインを崩さない一体感がいい。
パッチにあて布、各色の糸などをパッケージした補修キット。店舗での販売もされている。
College Tourでは学生と協力してイベントを盛り上げた。
初心者では難しい作業をサポートしながら学生と語り合うパタゴニアのスタッフ。
初心者では難しい作業をサポートしながら学生と語り合うパタゴニアのスタッフ。

Worn Wear Tour担当のロジャース通子さん。「家族で受け継がれる服ってステキですよね」と笑顔を浮かべる。

リペアトラック『つぎはぎ』は
こうしてつくられた

荷台の素材となったのは、取り壊しを待つばかりだった古い納屋の木材。大工で八ヶ岳在住の新田和典さんが、トヨタの4輪駆動トラック『ダイナ』をベースに制作を担当した。

廃材を利用すると、製材を購入するよりも手間がかかる。なぜなら樹木の反りをしっかりと見極めて使っていかないと、後々割れや歪みを起こしやすくなってしまうからだ。釘を使わない、木の組み合わせによる工法も相まってまさに職人技。山小屋のようなデザインは大工ならではのきめ細やかな作業によって実現されたのだ。あるものを活かして、次代につなげていくWorn Wearの精神を体現している一台といえよう。

内部には廃材をベースにした薪ストーブやチェア、テーブルのほか、電動ミシンや補修用の布地や糸、パッチなどを搭載。パタゴニアらしい、アウトドアっぽさを感じるモバイルハウスに仕上がっている。

ベースの制作風景。鉄の角材の切り出しから、溶接まですべて手作業。
崩れた廃屋から使用できる木材を選定し、運び出していく。
アーチ型の屋根は木の性質を理解している大工ならではの美しいつくり。
潜水艦のような窓枠ももちろんハンドメイド。