変態的腕時計世界=ビザールウォッチVol.13 FRANCK MULLER/エテルニタス メガ4

 

●What’s ビザールウォッチ? 

針も読めなければ、現在時刻もわからない奇妙すぎる時計たち。変態的腕時計=ビザールウォッチ。腕時計とは「時刻を知り、また時間を計るのに使う、腕にのせる器機」である。ところが現代の高級時計の世界には、最高峰の時計技術を駆使しているにも関わらず、針も読めなければ、現在時刻もわからないという“ 奇妙な時計”が生まれている。それこそが「ビザールウォッチ」。誰もが忙しく暮らすスマートフォン時代に現れた、時間を豊かに楽しむための“ 最高の贅沢品”である。
機械式時計は、メカニズムが複雑であるほど時計の価値が高まり、価格にも直結する。しかし複雑な時計機構に遊び心を加えると、ビザール度がぐっと高まってくる。高級時計を知りすぎた人がたどり着く末路へようこそ!

<今月の時計>
Vol.13

FRANCK MULLER
エテルニタス メガ4

権力者たちが作り上げたカレンダー

2020年は閏年。2月は29日まで存在する。それはなぜか? カレンダー、すなわち暦は、太陽の動きと月の満ち欠けから導き出され、そこに権力者のわがままが加わることで、複雑に変化していった。そんな数百年単位の暦の変遷を語る、ロマンティックな時計が存在する。
超技巧派フランク ミュラーらしく、とことん機構にこだわった。正時になると鐘が鳴る「グランドソヌリ」や4つのゴング&ハンマーで音を奏でる「ウエストミンスターカリヨン」、重力による誤差を修正する「トゥールビヨン」など、極上の複雑機構をいくつも搭載する。

FRANCK MULLER
エテルニタス メガ4

宇宙の法則を再現する機械仕掛けの時計

「暦」は不思議だ。本来なら、1日=24時間と同じく、1年=365日で固定するべきだ。しかし実際には、閏(うるう)年がある。では、閏年とは何なのか?

紀元前3000年ごろ古代エジプトでは、太陽と月を観測することで、1年が約356.25日であることを理解した。ここで問題になるのが「0.25日」という端数。これをどのように扱うかで、その後の世界覇者である古代ローマは悩んだ。というのも為政者は、太陽や月といった人智の及ばない存在に対しても影響力がある(と見せかける)のが大切。それゆえ暦を読み解き、儀式を行うことが重要だったのだ。

偉人ユリウス・カエサル(「ブルータス、お前もか!」の人)が、紀元前45年に制定したのがユリウス暦。これは、1年を30日の月と31日の月とに分けて並べるというもので、重要性が薄かった2月のみ28日にする。交互ではないのは、8月生まれのアウグストゥス(ローマ帝国初代皇帝)に敬意(忖度)を表して8月を31日に格上げし、次の9月を30日に変更。それ以降を交互にしているから。そして4年に1度、とくに宗教的儀式もない時期である2月を+1日にすることで、0.25×4=1日のズレを吸収した。

さて、このユリウス暦は、その後1000年以上も使われてきたが、やっぱりちょっとずれが気になるという話が出てきた。というのもキリスト教の中で重要な祝祭である「イースター(復活祭)」は、暦と連動しているのだ。十字架にかけられたイエス・キリストが、その3日後に復活したことを祝するイースターは、とても大切な日。日が決まっていない移動祝日で、「春分の日(昼と夜の長さが同じになる春の始まりの日)の後の最初の満月の次の日曜日」という複雑な暦によって決められる。経験上、春分の日は3月21日ごろになるはずなのに、どんどん暦がズレてきた。実は太陽が作る1年は、正確には365.2422日なのだ。この問題に多くの学者が取り組み、最終的に第226代ローマ教皇グレゴリウス13世が、1582年に「グレゴリオ暦」を制定。「西暦が100の倍数で400の倍数でない年は閏年としない」というルールの暦が、現代も使われている。

さて、このグレゴリオ暦だが2000年や2400年、2800年は閏年になるが、2100年、2200年、2300年、2500年、2600年、2700年は平年になるということ。この複雑すぎる暦を、歯車とレバーの組み合わせだけで挑戦したのが「フランク ミュラー」である。

この小さなインジケーターが、100年に一度使われる特別な閏年表示。2100年、2200年、2300年、2500年、2600年、2700年、2800年の2月になると、ここがグリーンになる。そして2月28日の後は29日ではなく、3月1日へとカレンダーが自動的に切り替わり、インジケーターはレッドに戻る。とはいえ、ここがグリーンになるのは80年後なので、いま存命の人の大半は見られないでしょうね。

そもそも機械式時計には、月ごとの日数の変化と4年ごとの閏年の有無を把握する「永久カレンダー」機構が存在している。これだけも十分に特別だが、フランク ミュラーの「エターナルカレンダー」は、永久カレンダー機構に加えて、100年ごとにやってくる“閏年にならない年”にも対応。該当年になると、2時位置のインジケーターがグリーンになるという仕組みになっており、カレンダーも自動的に修正する。100年ごとに一度しか使われない機構を持つ時計というのは、十分にビザールといえよう。

フランク ミュラーといえば華やかなデザインでお馴染みだが、実は“マスター オブ コンプリケーション”の異名をもつ超技巧派。この「エテルニタス メガ4」は、ありとあらゆる複雑機構を詰め込んでおり、価格は3億円超! ラテン語で永久を意味する“エテルニタス”と命名しただけのことはある、空前絶後の永久時計だ。

複雑な時計は、機械も究極的に美しい。時計を腕につけていると、その動きで自動的にゼンマイを巻き上げる自動巻きメカニズムを組み込んでいるため、時計が停止してカレンダーに誤差が生じるというトラブルも回避できる。

FRANCK MULLER
エテルニタス メガ4

自動巻き、18KWGケース、ケースサイズ縦61×横42.1㎜。370,700,000円
問フランク ミュラー ウォッチランド東京 ☎03-3549-1949
https://www.franckmuller-japan.com/

 

篠田哲生が断言するビザール度!
視認性★★★★4
メカニズム★★★★5
コンセプト★★★★★5
プライス★★★★5