CES2020で発表! 積水ハウスが提案する人生100年の「幸せ」な未来の住宅とは!?

一般的にスマートホームと言うと、スマートフォン操作や音声でドアが開いたり、電気が点いたりという、便利な暮らしのイメージが大きい。実際にスマートホーム関連の製品として発売されているのは、セキュリティ関係のカメラやセンサー、そしてスマートスピーカーで操作できるデバイスなどが中心だ。そういった細かなデバイスレベルのスマートホームではなく、全く新しい家の形を提案しているのが積水ハウスだ。同社は昨年開催された「CES 2019」に初めて出展し、住宅が家族の健康を見守ってくれる「プラットフォームハウス構想」を発表した。

コンセプトは『人生100年時代の幸せの提供』。「急性疾患」や「経時変化」「予防」に対応し、住宅が家族の健康を作り出す仕組みの研究開発を開始するとしていた。

 

米ラスベガスで1月7日(現地)「CES2020」の会場で積水ハウスのプレスカンファレンスが開催された。

.そして今年、「CES 2020」にて、実験の成果を発表するとともに、プラットフォームハウスの進展と新たな取り組みについて発表した。

積水ハウスが考えるプラットフォームハウスとは

積水ハウスは1960年に創業、現在は連結売上高が2兆円を超える、トップ住宅メーカーの1社だ。積水ハウス代表取締役社長仲井嘉浩氏はこれまでの会社の歴史を30年ごとに区切る。

人生100年時代の幸せについて語る仲井代表取締役社長

「当社の歴史を振り返りますと、1960年から1990年までの第1フェーズの30年間は、耐震性、防火性、耐衝撃性などの性能、住まい手の人命生命財産を守るべく、安全・安心の供給に努めてまいりました。

1990年から2020年までの30年の第2フェーズは、断熱性、―例えばゼロエネルギー住宅―、お子様からお年寄りまで優しい家作り、―ユニバーサルデザイン―、そういった快適性を提供してきました。そして2020年は第3フェーズがスタートする年となります」(仲井嘉浩氏)

積水ハウス60年の歩みとこれから。

積水ハウスが目指すのは『人生100年時代の幸せ』を提供できる住宅の提供だ。

「私たちはこの『幸せ』を三つに因数分解しました。100年活躍し続けるために必要な『健康』、人生を豊かにするための『人とのつながり』、そして、人生、ますます可能性を見つけるための『学び』です。積水ハウスでは、『プラットフォームハウス』において、これらのサービスを次々とインストールしていくことで住まい手に寄り添ってまいります」(仲井嘉浩氏)

つまり、積水ハウスがこれから提案していく「プラットフォームハウス」では、これまでのように安心・安全で、そして、エコで快適に暮らせるのはもちろんのこと、健康をサポートしながら、より充実した生活を過ごせるような暮らしの提供を目指していくというわけだ。

異常の検知から出勤要請、解錠までをノンストップで行うから早い。

それを実現するための要のサービスとして、CES 2020で発表したのが、「在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Net」だ。

脳卒中や心疾患など住宅でのトラブルを早期に発見する

積水ハウスがプラットフォームハウス構想で重視している、3つの幸せの中の1つ「健康」。最初にここに手をつけた。この「健康」をさらに3つに分類すると、「急性疾患対策」、「経時変化」、「予防」に分けられるという。「HED-Net」は急性疾患対応のサービスだ。

住宅が生み出す様々な幸せのなかで最初に「健康」にアプローチ。

現在、日本では年間29万人が脳卒中を発症しており、そのうち79%が自宅で発症、発見の遅れなどから、年間約1万5000人が死亡しているという。脳卒中には発症から4.5時間以内に使える治療薬「t-PA」があり、これを使うと容体は大きく改善できる。しかし、発見が4.5時間以降になるとこの治療薬は使えず、後遺症なども発生するため、早期発見が重要なのだ。

さらに、脳卒中以外に、心疾患や事故(転倒など)も加えると、家庭内での死亡者数は年間7万人を超える。幸運にも命を取り留めたとしても、介護の問題が発生することも多い。日本では就業者の5人に1人(約1300万人)が隠れ介護をしているといわれており、それらが有能な現役世代の介護離職にもつながっていると仲井氏は語る。

 

脳卒中で毎年1万5000人が住宅内でなくなっている。これを減らしたい。

世界的に先立ち、日本は超高齢社会を迎えているからこそ、世界的な課題でもある健康や介護の問題を解決する必要がある。

積水ハウスが発表した「在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Net」は非接触センサーにより住人の心拍や呼吸を検知することで、急性疾患に早期で対応できるようになるサービスだ。

住人の今まで通りの暮らしにこだわり非接触型のセンサーを採用。

寝室などの天井に独自に開発した非接触型センサーを取り付け、独自のアルゴリズムによってノイズを除去し、心拍や呼吸といったレベルの人の細かな動きを検知する。

例えば、住人が急に倒れるといったトラブルが発生すると、非接触型センサーがその異常を検知して、緊急通報センターに報告。緊急通報センターが本人に呼びかけを行い、反応がない場合に救急隊等を要請する。同時に遠隔操作で玄関のロックを解除して、救急隊を自宅内に迎え入れてくれるのだ。

センサー取得したデータから独自のアルゴリズムによりノイズを除去し心拍数や呼吸数などを取得していく。

積水ハウスではこの非接触型センサーとアルゴリズムを慶應義塾大学理工学部の大槻知明教授と共同開発。さらに実用化に向けた研究が現在も進んでいるそうだ。

「HED-Net」を担当する積水ハウスの執行役員プラットフォームハウス推進部長石井正義氏は、非接触型センサーの採用について、「カメラやウェアラブル端末は、住人のプライバシーの問題やストレスを考えて採用しなかった」と語る。

しかし、人の心拍や呼吸などは非常に小さな動きなので、これらを非接触でセンシングするのは簡単ではないという。さらに寝室で寝ているときも、布団かぶっていたり、寝返りを打って姿勢を変えたりすることもある。また、複数の家族が1つの部屋で過ごすこともある。こういった様々な状況を踏まえて、動きを検知・解析していく。実験施設であるプラットフォームハウスラボや実験棟で、様々な実験を重ね、それらの課題のクリアを目指している。

昨年より実験棟及び、プラットフォームハウスラボで実証実験が繰り返されてきた。春以降にパイロットプロジェクトが開始予定。

そして、2020年、実際の住宅への導入が始まる。

50世帯の住宅に「HED-Net」を導入

ラボでの「HED-Net」の実験、検証はこれからも続く。さらに大学病院での臨床実験なども並行して行われる。そして、もう1つが「生活者参加型のパイロットプロジェクト」の開始だ。

積水ハウスでは一般の住宅を購入したお客様を対象に、50世帯を募るという。石井正義氏によると、「HED-Net」を自宅に導入するにあたり、非接触型センサーなどの設置コストや月額の利用料は、パイロットプロジェクトでは、積水ハウスが負担する形を考えているそうだ。

プラットフォームハウスラボでの実験と、大学病院での臨床実験、そして一般家庭から得られる様々なデータを元に、急性疾患対応の精度を高めて行くことを考えている。

「今後は寝室だけでなくリビングやダイニング、洗面所など様々な部屋でセンシングすることを考えています。洗面所の鏡に設置したセンサーでは高血圧の検知ができそうですし、ダイニングのセンサーでは食事中の心拍数と血圧の変化、血糖値の相関関係などが蓄積できます。それらを組み合わせれば、将来的には糖尿病の兆候が検知できるような可能性も考えています」(石井正義氏)

将来的には呼吸症候群や高血圧など、様々な病気のきっかけとなる健康上のリスクをいち早く発見することが期待できる。

プラットフォームハウスに住む人のバイタルデータや住環境データを蓄積して、医学的な視点から分析できれば、健康状態の「経時変化」に素早く気づける。さらには「予防」のためのアドバイスもできるというわけだ。

さらに今後は、積水ハウスは、食事の部分でセブン&アイ・ホールディングスと、睡眠の部分では、寝具大手の、西川と協業する予定。そうして「急性疾患対応」以外のサービスも開発し、でき次第、随時、プラットフォームハウスに導入していく予定だ。

非接触型センサーを利用するプラットフォームハウスなら、住む人の生活は何も変わらない。特別なガジェットを取り付けることもなく、カメラで見張られる心配もない。それでいて「健康」をサポートしてくれる。それが積水ハウスが第3フェーズで目指す住宅のカタチだ。

蓄積されたバイタルデータや住環境データを医学的見地から解析し、様々な予防サービスにつなげることを考えている。

積水ハウスが最初に目指している、住宅内での急性疾患に緊急対応してくれる住宅。早期発見により健康を取り戻すことは、病気を発症した本人にとっての幸せだけでなく、一緒に住む家族にとっての幸せでもある。

さらにそれは医療費や介護費、労働損失など社会コストを制限するための取り組みにもつながってくる。今後、「健康」以外の、「つながり」や「学び」の部分のサービス開発も進めていくと語る仲井氏。人生100年時代の新しい住宅の形。積水ハウスの提案に期待できそうだ。