MWC開催中止でも、バルセロナのワーケーションがサイコー過ぎた理由

2月24日~27日まで、本来スペイン・バルセロナで開催予定だった世界最大のモバイル見本市「MWC」が、新型コロナウイルスの影響を受けて中止になりました。多くの人が出張をキャンセルする中、筆者は当初の予定通り渡欧し、この原稿を書いている今、バルセロナ市内のアパートに滞在しています。参加者10万人規模のイベントの中止を受けて、現地は閑散としている……と思いきや、案外そうでもありません。例年より人は少ないものの、人気のバルやサグラダ・ファミリアなどの観光スポットは、相変わらず観光客で賑わっています。
MWCの会場となるバルセロナ市内のFira Gran Via。写真は昨年のもの。

まさに行くも地獄、戻るも地獄……。

あれは出発1週間前のこと。主催団体のGSMAから「MWC」の開催中止が発表されて、同イベントを取材予定だった私たちフリーランスのライターやジャーナリストは、厳しい選択を迫られることになりました。バルセロナまでの飛行機代、現地の宿泊費など、すでに支払い済みの旅費を諦めて出張を取りやめるか、「MWC」のないバルセロナに旅行するか。というのも、フリーランスの多くは経費削減のため、こういうときにキャンセルや変更といった融通のきかない、安チケットを購入しているからです。

安チケットとはいえ旅費はすでに十数万円に及んでおり、簡単には諦められられません。一方で「MWC」が中止になったということは、その間に取材して書く予定だった記事と、その報酬もなくなったということ。旅費が戻ってこない上に収入も絶たれる、まさに二重苦を背負うわけです。もし出張を諦めれば旅費は無駄になりますが、その間に日本で発生する新しい仕事が得られるかもしれません。もしバルセロナへ旅行に出かければ、旅費を無駄にしない代わりに、仕事の機会を失うリスクがあります。

でもスペイン料理はやっぱり美味しい

まる2日間うんうんと悩み、ダメ元で航空会社に相談するなど悪あがきもしましたが、結局旅費はもちろん、貯まるはずだったマイルをどうしても諦めきれず、バルセロナ行きを決断。今ここにいるというわけです。

早いものでまもなく帰国ですが、結果として来て良かったと思っています。私たちが旅立ったあと国内でもイベントの中止が相次ぎ、もし日本にいても新たな取材の機会が少なかったこと。同じように決断したフリーランスの仲間が何人かいて、みんなで食事に出かけたりと案外楽しく過ごせたこと。ファーウェイがイベントを開催したり、この原稿の依頼がきたりと、こちらにいてもそれなりに新しい仕事が得られたことなどが、その理由です。

いつものMWCでは夜に原稿を書くためほとんど飲み歩けないのですが、今回は念願のバル巡りもできました。こちらは「La Plata」というバルの定番メニュー、鰯のフライ。
同じようにこちらに滞在していたライター、ジャーナリスト陣と、パエリアの有名店にも足を運びました。
バルセロナの楽しみといえば、おいしいシーフード。また昼から飲めるのもワーケーションの醍醐味ということで、ランチからビール&シーフードを堪能しました。
ファーウェイは新製品発表のイベントを開催。プレゼンは中継でしたが、新製品にいち早く触れることができました。今回の唯一の取材となりました。

普段の「MWC」では、日中は会場で取材に走り回り、夜は併設イベントや会食に参加。宿に戻って一眠りしたあと、真夜中から朝まで原稿を書くという目の回るような毎日。1週間ほどの滞在もあっという間に過ぎますが、今回はほどほどにゆったりと、しかし日本から持ってきた仕事もあって、なんだかんだと毎日パソコンに向かう日々を過ごしました。

最近は旅先でリモートワークすることを、バケーションとワークを掛け合わせ「ワーケーション」と呼ぶようですが、それでいうと今回の滞在はバケーション2、ワーク8くらいの割合。観光を楽しむ余裕はあまりありませんでしたが、それでも宿の外に一歩出れば世界遺産のサグラダ・ファミリアが拝め、街には日本にはない色鮮やかなマーケットや賑やかなバルが並んでいます。普段とは別世界の街に暮らしながら、普段と同じように原稿を書く毎日はなかなか快適で、こちらではマスクが不要(誰もしていません)という開放感もあり、帰るのが名残惜しいくらいです。

アパートのテラスからは、世界遺産サグラダ・ファミリアが見えます。窓を開けるだけで別世界が味わえます。
いつもはMWCの取材のために開いている時間に行くのが難しい、揚げたてのチュロスも食べに行きました。

ヨーロッパの長期滞在には、断然アパートがおすすめ

今回の滞在がとても快適だったのは、宿泊した「アパートホテル」のおかげも多分にあります。

今回宿泊したアパートホテル。24時間フロントに人が滞在しているので安心して宿泊できました。

筆者が「MWC」の取材のため、この時期のバルセロナに来るようになって8年目になりますが、「MWC」の期間中は例年、バルセロナ市内の宿泊施設が高騰。予算、アクセス、広さなど、希望の条件にマッチする宿を見つけるのは簡単ではありません。当初はホテルや安価なペンション(ホステル)を探していましたが、仲間と宿をシェアするようになってからは、滞在はいつもアパートと決めています。なんと言ってもホテルより部屋が広いですし、シェアすれば料金も安価。さらに自炊ができるので、滞在中の食費も節約できるからです。

バルセロナに限らず、古い建物の多いヨーロッパのホテルは大抵の場合、部屋が狭く窮屈なので、長期滞在するなら十分な広さがあり、その街に暮らすように滞在できるアパートがおすすめです。ただしアパートの予約は、ホテルのそれに比べるとちょっとハードルが高め。貸主はたいてい個人か不動産会社ですが、個人の場合は支払いにクレジットカードが使えないこともありますし、事前に鍵の受け渡し方法など細々とした確認があるため、やりとりも必要です。何より予約サイトにある情報や評価だけで、信用できる相手かどうかを判断しなければならず、これがなかなか難しいです。

実は筆者には過去に2回ほど「MWC」の出発直前に、予約していたアパートを貸主から一方的にキャンセルされてしまった苦い経験があります。いずれも予約にBooking.comを利用していたため、結果的には同サイトのサポートにより新しいアパートを手配できました。おかげで現地で路頭に迷う最悪の事態は避けられたのですが、仲間とシェアする予定の宿だけに責任は重大。どちらも宿泊先が確定するまでは、かなりハラハラさせられました。

たとえばあるときは、出発近くなったので鍵の受け渡しを確認しようとしたところ、予約したアパートのオーナーと連絡がつかなくなりました。前述のように「MWC」期間中は宿が取りづらいので、例年かなり早めに予約をするのですが、それがあだになったらしく、オーナーが貸すはずの物件を売ってしまったというお粗末な理由。聞いたときには怒りを通り越して、思わず笑ってしまいました。Booking.comのサポートと交渉し、代替のアパートを予約し直したのですが、同じ価格では条件に合うところが見つからず、差額をBooking.comに負担してもらうことで決着。ところが出発当日の朝になって、今度は代替アパートのボイラーが故障したとの連絡があり、再び宿無しに。結局、貸主の不動産会社が別のアパートを用意してくれたのですが、宿が決まらぬまま現地に向かう飛行機の中は心配で一睡もできず、ストレスで寿命が少し縮んだのではないかと思います。

キャンセル続出の棚ぼたで憧れの「アパートホテル」に滞在

今回も当初はアパートを予約していたのですが、シェアする予定だった仲間が出張を取りやめたため、そちらは一旦キャンセルして精算し、新たに現在の「アパートホテル」を予約し直しました。「MWC」の開催中止を受けてキャンセルが相次いだのだと思いますが、2月中旬頃には高騰していたバルセロナの宿泊料金が一気に下落。普段はとても泊まれない人気の宿も、かなりお得に予約できたからです。

アパートホテルの部屋。複数人でシェアして仕事をするにも十分な広さがあります。

「アパートホテル」とはその名のとおり、アパートとホテルの特徴を併せ持つ宿泊施設です。部屋の広さや設備はアパートそのもの。たとえば今滞在中のこの部屋は2LDKで、2つのベッドルームと広いリビングダイニング、キッチン、テラス、バスルームにはヨーロッパでは希少な深めのバスタブも備わっています。一般的なアパートでは鍵の受け渡し方法について面倒なやりとりが必要な上、到着が遅い時間だと別料金を取られることもありますが、「アパートホテル」はホテル同様、24時間フロントが滞在しているので、いつでもチェックインが可能。鍵の受け取りもスムーズだし、セキュリティ面でも安心です。何よりホテルなら、オーナーの気まぐれで部屋が売られてしまうといった心配もありません。

毎日ベッドメイクしてくれたのので、仕事の合間に毎日ベッドにダイブしていました。

さらに滞在中うれしかったのが、毎日部屋の掃除とベッドメイクをしてもらえたこと。ホテルでは当たり前ですが、アパートではお願いすればリネンの交換などをしてもらえることがありますが、基本的に掃除は自分自身で。ベッドは滞在中、ずっと使いっぱなしになります。長期滞在だとだんだん枕に自分の匂いが染みついてきて、愛着が感じられるほど。その点「アパートホテル」では毎日、パリッとのりの効いたシーツでベッドメイクをしてくれます。今回の滞在中、ベッドメイクされたばかりの気持ちの良いベッドに、何度ダイブしたかわかりません。とにかく「アパートホテル」は、広い部屋で自炊しながら節約もしつつ、掃除の行き届いたきれいな部屋で仕事ができる、ワーケーションするには最高の環境でした。

一般的なホテルやアパートに比べて数自体それほど多くないこと、料金設定が少し高めであることなどからなかなか泊まるチャンスがないのですが、もしまた機会があれば、今度は「開催中止でやむなく」などではないシチュエーションで、「アパートホテル」でワーケション、してみたいと思います。

ワインを特殊なデキャンタから直接飲む、スペインの伝統的な「ポロン」という飲み方にも挑戦する筆者。隣の席のカップルと一緒に大いに盛り上がりました。
酔っ払って宿に戻る途中に見上げる、ライトアップされたサグラダ・ファミリアも最高でした。
  • Text by太田 百合子