変態的腕時計世界=ビザールウォッチVol.14 CITIZEN/ザ・シチズン キャリバー 0100

●What’s ビザールウォッチ? 

針も読めなければ、現在時刻もわからない奇妙すぎる時計たち。変態的腕時計=ビザールウォッチ。腕時計とは「時刻を知り、また時間を計るのに使う、腕にのせる器機」である。ところが現代の高級時計の世界には、最高峰の時計技術を駆使しているにも関わらず、針も読めなければ、現在時刻もわからないという“ 奇妙な時計”が生まれている。それこそが「ビザールウォッチ」。誰もが忙しく暮らすスマートフォン時代に現れた、時間を豊かに楽しむための“ 最高の贅沢品”である。
機械式時計は、メカニズムが複雑であるほど時計の価値が高まり、価格にも直結する。しかし複雑な時計機構に遊び心を加えると、ビザール度がぐっと高まってくる。高級時計を知りすぎた人がたどり着く末路へようこそ!

<今月の時計>
Vol.14

CITIZEN
ザ・シチズン キャリバー 0100

表現しているのは、精度ではなく哲学

時計の世界では、精度が高い(正確に時を刻む)ことこそが、何よりも価値があるとされている。その点ビザールウォッチは、正確な時間など気にしない怪奇な時計であり、そこが面白いところだ。だがしかし究極的に精度を追求すれば、それもまたビザールなのだ。


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ザ・シチズン キャリバー 0100

常識外れの高精度を目指したシチズンの情熱

2017年11月14日。つくばエクスプレスの下り列車が南流山駅を定刻よりも数十秒早く出発したとして、謝罪文を発表したことがあった。このニュースには、国内はもとより海外からも大きな反響があったという。実際には定刻よりも早く出発する「早発(そうはつ)」は、法律によって禁止されているため、鉄道会社の姿勢は正しい。しかしその一方で、時間の正確性を重視しない国もある。例えばイタリアでは、駅の表示板にはじめから「Delay(遅延)」の枠があるほど電車が時間通りに来ない。結局のところ、我々は日々の中では多少のズレを享受しながら暮らしている。だから「20秒程度で謝罪!?」とニュースになったのだ。

しかし本来であれば“正確な時間”というのは、複雑化した現代社会を円滑に動かすルールであるべきだ。時間軸がずれたら交通機関の運行だけでなく、機械やパソコンの動作にも影響が出てくる。そのため言葉も文化も主義主張も異なる世界中の人々も、時間だけは共有のルールにしているのだ。

だから「シチズン」は、少しの誤差も許さない。シチズンは世界各地の電波局から発信される標準電波に含まれる時刻情報を解析して正確な時間に自動修正する「電波時計」のリーディングカンパニー。さらには宇宙を飛ぶGPS衛星の電波をキャッチする機構を開発し、世界のどこでも正確な時間へと修正するGPS衛星電波時計を開発している。この標準電波に含まれる時刻情報は、原子時計という箪笥サイズの巨大装置で導き出されたものであり、その精度は10万年に1秒の誤差。つまりこれ以上に完璧な精度の時計は存在しないということになる。

純粋な一秒を表現するために、すらりと伸びた秒針を採用。時分針やインデックスはカット仕上げを施し、光を受け受けるとキラリと輝く。シンプルだがリッチな時計である。

だが創業100周年を前にして、シチズンの高精度技術は変わった方向へと舵を切る。電波などの外部技術を使わずに、究極の高精度を目指したのだ。

創業100周年となる2018年に、世界最大の時計の見本市バーゼルワールドで発表されたのは、精度技術を極限まで高めた「キャリバー 0100」というムーブメントだった。そのスペックは、高精度機械式ムーブメントの約1800倍、通常のクオーツ式ムーブメントの約180倍に相当する「年差±1秒」という超高精度。1年は31,536,000秒なので、日々持ち歩く機械でありながら1/31,536,000しかエラーが出ないということになる。これは驚異的だ。

最高峰の技術を取り入れたムーブメント「キャリバー 0100」は、仕上げも美しい。ちなみに駆動源は、シチズンが開発した光発電技術エコ・ドライブ。消費電力が大きい高精度ムーブメントを動かすために、省エネICなど電子回路部分も新たに開発している。

これだけの高精度を引き出すために、心臓部である水晶振動子を、重力や振動の影響に強いATカットという特殊な形に切り出し、さらに時間をかけてエイジングして優秀なスコアを出す物だけを選抜して使用。さらに温度による周波数の変化をカバーするために、個体ごとに温度変化の計数を計測し、内部センサーでムーブメントの温度を計測しながら振動数の補正を行う。その他様々な工程を経て実現したのが、「年差±1秒」という精度なのだ。

もちろんこれだけ高い精度に、実用性がないことをシチズンは理解している。しかしそれでも超高精度を追求したのは、研ぎ澄まされた“純粋な1秒”を表現したいという哲学的ともいえる目標があったからだ。

だからこのムーブメントを搭載した「ザ・シチズン キャリバー 0100」は、ホワイトゴールドケースを用いて、価格は180万円もする。これは“年差±1秒”という哲学に対する対価なのだ。シンプルな時計だが、これもまた日本らしいビザールウォッチなのである。

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ザ・シチズン キャリバー 0100

クオーツ(エコ・ドライブ)、18KWGケース、ケース径37.5㎜、世界限定100本。1,800,000円
問 シチズンお客様時計相談室 ☎0120-78-4807
https://citizen.jp/

篠田哲生が断言するビザール度!
視認性★★★★★5
メカニズム★★★★★5
コンセプト★★★★4
プライス★★★★4