大阪の立ち飲み屋が今アツい。一時閉店が惜しまれる「桃谷江川」の実力とは

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桃谷江川
立ち飲み居酒屋・バー


大阪/桃谷
住所:大阪府大阪市生野区桃谷2-17-10 行岡文化 1F
電話:080-5350-0753
営業時間:[月~金] 16:00~LAST
[土・日・祝] 13:00~LAST
※移転先などについては取材時未定

「桃谷江川」が11月で一旦閉め店を移転! 営業中の今、すぐ行くべき店だ!

大阪のカレーが熱い。この夏多くの雑誌やさまざまなメディアで「大阪スパイスカレー」の特集が組まれた。独特の進化を遂げた大阪のカレー。その端緒に関しては本連載でも「ツキノワカレー」を紹介することで以前触れた。例えば昼間営業していないバーを借りてランチタイムだけ営業する「ヤドカリカレー」だったり、その営業形態も東京とは一味違う。飲食店の開業はハードルが高い。もともとプロの調理人でもないが、カレーを作るのが得意だというだけで気負いなくその腕を試せる。このシステムと大阪特有のおおらかさが一大ムーブメントに育った背景にはある。

同じような状況が大阪の立ち飲みの隆盛を支えている。震源地は「裏なんば」と呼ばれる難波駅近くの一帯だ。もともとは大箱キャバレーやラブホテルの立ち並ぶ、怪しく古めかしい歓楽街だったのだが、だからこそ家賃が安いからか、若い人たちが立ち飲み屋を続々と開業させた。

立ち飲みという業態は、いわゆる酒屋で買った酒をその場で飲ませた「角打ち」が発展したものなのだろうけど、おじさんたちがぎゅうぎゅうに詰め込まれ安酒を呷る旧来のイメージからは程遠く、いまやジャンルもスタイルも百花繚乱。レアな日本酒を提供する正統派もあれば、モツ料理のうまい店、洋食やイタリアンの立ち飲みもある。いまや「裏なんば」は今日的な立ち飲み文化の聖地と化している。

日本全国、東京の文化に侵食されている。食においても然り。東京の対局と位置付けられる西の雄・大阪も例外ではないだろう。しかしカレー、立ち飲み、焼肉は東京を凌駕し、大きく引き離していると言わざるを得ない(焼肉に関してはまた別の機会に詳しく語ることにしよう)。

例えば大阪の名店「タンダパニー」で修行した女性が、ヤドカリスタイルで恵比寿に出店し、絶品スパイスカレーを提供するなど、最近カレーについては若干の動きを見せているが、東京が保守的なのか、こと立ち飲みに関しては大阪で体験するあの面白さが伝播して来てはいない。となると大阪に行った時に存分に味わうしかないのだが、今回紹介したいのは聖地「裏なんば」ではなく、郊外の住宅地・桃谷にぽつりと佇む一軒の立ち飲み屋だ。

ちょっとログハウス風の内装なのだが、これは友人がバーをやっていた場所をそのまま居抜きで借りているからだそう。店内に所狭しとメニューが掲示されている。「手ごねハンバーグ 300円」という張り紙が否応なく目に入る。

立ち飲みとは言え何という価格。洋風メニューが多いが、お勧めメニューには「地鶏ささみのなめろう」がある。ボードに書かれた「本日のチーズonポトフ」も気になり過ぎる。まずはこれらをオーダー。

なめろうはアテに特化した絶妙な味。これも300円。ハンバーグはふっくら美味しく、もちろん感動は値段以上。ポトフは洋風おでん。くたくたに煮込まれたキャベツにチーズをかけると絶品。これは他ではお目にかかったことがない味。どれもビールが進んでしょうがない。こうなればパスタも食べたい。嬉しいことにハーフサイズもあるではないか。これまた300円で涙が出てくる。しかしこんな店が近所にあったら堪らないだろうな。大阪立ち飲み文化の層の厚さを感じざるを得ない。

と、ここまで書いて来た時、この「桃谷江川」、11月で店を一旦閉め移転するとの知らせが舞い込んで来た。移転でよかった。新しいロケーションもご紹介する機会を持ちたいと思う。とりあえず桃谷で営業中の今、すぐ行くべき店だ。

梶原由景(かじわらよしかげ):幅広い業界にクライアントを持つクリエイティブ・コンサルティングファームLOWERCASE代表。デジタルメディア『Ring of Colour』などでオリジナルな情報を発信中。

『デジモノステーション』2018年1月号より抜粋。