時計ライター篠田哲生の偏愛的逸品 -Watch-

デジモノステーションに関わる識者やスタッフ陣はモノへのこだわりは人一倍強い。なぜ彼らは数多あるものからそれらの逸品を選んで使っているのだろうか? そこには目利きとして、どうしても譲れない想いや選ぶに至ったストーリーがそれぞれある。表面的な価格などに左右されず、選ぶべき人に選ばれた逸品。真に「安くていいもの」とは、彼らのように永きに渡り、これしかないと愛し、使い続けられるからこそ生み出されるのだ。ここに登場する逸品たちのように、ぜひ読者諸兄にも自分だけの偏愛的逸品を見つけてほしい。

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    篠田哲生

    Occupation :

    時計ライター

    1975年生まれ。講談社「ホット ドッグ・プレス」を経てフリーに。時計学校を修了した実践派であり、国内外の時計取材も数多くこなす。ビザールウォッチの連載を担当しつつ、も、時計の好みはきわめてコンサバ。

時計審美眼を養わせてもらった時計界の逸品

良い時計の条件とは何だろうか?

その答えを自分なりに探し求め、たどり着いたのが、「ロイヤル オーク」です。購入したのは2012年で、それ以降も何本も高価な時計を買ってはいますが、今でもローテションの核になるエースで4番打者の大黒柱。それほどに、自分の“良い時計”の条件を満たしているのです。

この「ロイヤル オーク」は、老舗のスイス時計ブランド「オーデマ ピゲ」の代表作で、1972年にリリース。ドレスウォッチに匹敵するケースの薄さと綺麗な磨きを取り入れつつ、頑強さや防水性スポーツウォッチの要素も併せ持つ時計は、のちに“ラグジュアリースポーツウォッチ”というジャンルを作りました。時計業界に革命を起こしたモデルであり、数多くの“フォロアー”が生まれています。

しかも特徴的な8角形デザインは、誕生以来現在までほとんど変わっていないので、いつまでも古びた感じにならず、長く付き合っていけるのです。個人的なデザインの好みは、船の舷窓をイメージしたというベゼルのボルトが、方向まできっちり合わせていること。実はベゼルのボルトは後ろから止めており、見えている部分は線を入れたナット部分。しかもベゼルはステンレススティール製ですが、ナット部分はホワイトゴールド製なので、若干光沢感が異なる。こういったさりげないデザインは、使っていくほど心に沁みる。こういう時計こそ“名作”にふさわしいのです。

しかもいい意味で普通。現行モデルは200万円を越える高級時計ですが、ケースがコンパクトで薄いので腕馴染みがいいし、カレンダー以外の付加機能が付いていないので故障にも強い。カジュアルスタイルはもちろんのこと、格のある時計なのでスーツにも合わせられる。海外出張のお供にも最適ですし、高い飲食店に行っても気後れすることもない(時計で値踏みされて、高いワインやシャンパンを勧められることはあるけど)。例えるなら、高級SUVのようなリッチなのに気軽なオールマイティさが魅力なのです。

つまり僕が考える“良い時計”の条件とは、平面と斜面、ポリッシュとサテンの仕上げのバランスが上手い。ケースは直径だけでなく、厚みも重要視している。不変のデザインを持っている。そしてシーンを選ばずに使える品格がある。ということだ。この条件を満たす時計は、やはり老舗ブランドに多い。コンサバではあるけれど、結局のところ「老舗の定番」には、良い時計が多いのです。

現行モデルはケースが大型化して(39㎜→41㎜)、若干ボリューム感がアップしています。個人的にはこの39㎜モデルこそが至高だと思うので、一生使い続けることになるでしょう。ちなみに今でも「ロイヤル オーク」の人気は高く、ほとんど店頭に並ばない状況が続いているそう。しかし満足感が一生続くことを考えれば、数年間でも待つ価値はあるのではないでしょうか。

  • No.07
  • Product Name :ROYAL OAK AUTOMATICBrand: Audemars Piguet
    Price: 236万5000円(※現行モデルの価格)
  • photo下城英悟(GREEN HOUSE)
  • design一ノ瀬基行(LO&MARM)