文具&アナログカメラエディター&ライター山﨑真由子の偏愛的逸品 -Gadget-

デジモノステーションに関わる識者やスタッフ陣はモノへのこだわりは人一倍強い。なぜ彼らは数多あるものからそれらの逸品を選んで使っているのだろうか? そこには目利きとして、どうしても譲れない想いや選ぶに至ったストーリーがそれぞれある。表面的な価格などに左右されず、選ぶべき人に選ばれた逸品。真に「安くていいもの」とは、彼らのように永きに渡り、これしかないと愛し、使い続けられるからこそ生み出されるのだ。ここに登場する逸品たちのように、ぜひ読者諸兄にも自分だけの偏愛的逸品を見つけてほしい。

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    山﨑真由子

    Occupation :

    書籍編集・物書き

    1971年東京生まれ。大学卒業後、雑誌編集業に従事。フリーランスの編集者として食、酒場、筆記具、カメラ、下町、落語などモノとヒトにまつわる分野での仕事多数。近著に『職人の手』(アノニマ・スタジオ)

巧く写せて当たり前。
カメラは〝傾かぶく〟ために存在せよ。

私が“中古カメラウイルス”に罹患したのは1992年、うら若き大学生、21歳のときのこと。幼少期からカメラ遊びをしていたものの、最新モデルには興味なく。師匠と仰ぐ“おじさま方”が手にする、クラシカルな金属の塊にそそられていました。きっかけは田中長徳氏の名著『銘機礼賛』だったかもしれません。“写真機偏愛症候群”なる言葉を知り、カメラは道具であると同時に、愛でるため&濃密な交感をするための嗜好品と捉えるようになったのでした。その後の顛末は割愛しますが、偽ライカやイコネッテ、ガミ、サモカなどを手に入れるにつれ、嗜好は「ちょっと変わったモノ」へと真っしぐら。だからか、肝心の「ライカ」にはたどり着けず。なのに、ある日突然、この「ライカM4」がやって来たのです!

あれは12年ほど前のこと、カメラ仲間から「今すぐ現金が必要」という人物を紹介され、「元箱、取説など付属品完備、ミントコンディションのM4を30万円で」と。一瞬躊躇しましたが、M4は“M型ライカの完成型”であり、ここまで状態が美しいものはそうそうないと購入、現在に至ります。この原稿を書いている今も、<ダブルストロークで巻き上げ、シャッタースピードを変えてシャッターを切る>を繰り返し、布幕横走りシャッターの心地よい音に恍惚としています。

レンズはドイツ・ミュンヘンのシュタインハル社が戦後間もなく製造した「オルソスティグマット」を付けてみました。どうです? ふたつの丸いピントレバー、可愛いでしょ。写りも私好みで、滋味あふれる深い描写が得意なのです。

一方の「PEN-F」。特筆すべきは「ボディグリップ」です。市販品ではありません。カメラの大先輩が、私のためにハンドメイドしてくださった唯一無二の一品です。黒檀と紫檀のため、日毎に手に馴染んでゆくのがたまりません。今日はおとなしく純正レンズを付けていますが、戦前の映画用レンズで遊んでもいます。PEN-Fのストラップは70cm、M4は90cmと長さを変えて、二台持ちしやすいように。いずれもインダストリアの半杭誠一郎さんによるレザー製です。

  • No.48
  • Product Name :M4 Black Chrome(1974年製)Type: 機械式レンジファインダーカメラ
    Brand: Leica
    Price: 約30万円(購入時価格)
  • No.49
  • Product Name :PEN-FType: マイクロフォーサーズカメラ
    Brand: OLYMPUS
    Price: 15万円前後(購入時価格)
  • photo下城英悟(GREEN HOUSE)
  • design一ノ瀬基行(LO&MARM)