ノイキャン&パーソナライズサウンド。リスニングの世界を変えていくデジタルチューニング

レビューを見て、これぞ自分にぴったり!と確信して買ってみたら想像と違った…装着状態で音の傾向が大きく変わるイヤホン・ヘッドホンはチョイスが難しい。ところが中には、ユーザーの聴力を測ってベストな音質となるようにチューニングしてくれるイヤホン・ヘッドホンもある。Nuraloopもそんなイヤホンの1つだ。しかも高精度なノイズキャンセリング機能もついた、モバイルリスニングの世界を一歩前に進めようとしているプロダクトだ。

ユーザーの耳に合わせてDSPで音質を整えるヘッドホン

自動音場補正機能を搭載したBluetoothノイズキャンセリングイヤホン。ユーザーの聴力を計測し、ベストな音楽体験となるようにDSPがサウンドを調律する。

リアルなサウンドステージを作り出す上で、スピーカーの放つ音の微調整は欠かせません。スピーカー2台だけのステレオ再生ならまだしも、自然なサラウンド感を演出するには、ボリュームや再生音域を細かくチューニングする必要があります。

そのため、ホームシアターに欠かせないAVアンプや、カーオーディオ・カーナビには、古くからスピーカーの位置関係や部屋・車内の反響状況などを的確に捉えて、DSPを用いてチューニングしてくれる自動音場補正システムが導入されていました。

さて、ヘッドホンやイヤホンとなると、部屋が和室でも洋間でも布団やソファが音を吸うとかフローリングが音を強く反射させるとか考えなくていいはず。ところが2015年にAKGが発表したN90Qには、前述したような自動音場補正システムが入っていたのです。そして2106年には、同様の技術を用いたJBLのEverest Elite 700(2万7000円)が発売されました。

もうびっくりですよ。キャリブレーションしてから音を聴いてさらにびっくりですよ。音の1粒1粒がクッキリとシャープ。数十万円クラスのヘッドホンでしかこの明瞭感は味わえなかった。デジタル処理ってほんと侮れません。

イヤホンにも自動音場補正システムがやってきた

人それぞれ異なる耳の形、耳穴の大きさ長さカーブの強さを調べるため、スピーカーユニットがテストトーンを鳴らして、マイクユニットで反射音を捉える必要がある自動音場補正システム。その構造から、イヤホンでは難しいと(勝手に)思ってきました。

ところが2017年にはスマホメーカーのHTCが、ノイズキャンセリング用マイクを使った自動音場補正システム搭載イヤホンをリリース。使用できるスマホを選ぶ、ヘッドホンタイプほどの補正力はなかったのですが、ここにきてやってきました。「Nuraloop」という本命が。日本での公式販売はまだ先のようなのですが、モニター品をお借りしたので使ってみたところ…面白い作りをしてるじゃないですか、これ。

まずは自動音声補正機能付きヘッドホンからチャレンジしたNura。リリース後、ソフトウェアでノイズキャンセリング機能を追加するなど、デジタル領域における技術力が秀でている。

簡単に紹介しますとコイツ、ノイズキャンセリング機能・自動音場補正システム付きBluetoothイヤホンです。aptX HD対応の高音質仕様で、海外での価格は200ドル。日本円にして約2万1500円ですね。完全ワイヤレス型ではありませんが、再生時間は本体のみで16時間。頻繁に電力チャージすることなく使えます。そう考えると、ワイヤー入りケーブルで耳掛け前提のNuraloopは、移動中を含めたデイユースにぴったり。

音道と共にあるマイク部分。外耳道内の音をキャプチャできるため、反響状態を正確に測定可能。

さて、Nuraloopのもっともたる特徴はマイクの位置にあります。ドライバーユニットの音を鼓膜に届けるための音道内に、マイクがあるんですよ。

ハウジングの形状も独特です。音道部分がカーブを描きつつも長くしっかりとのびたひょうたん的スタイル。極力、外耳道内の反響の影響を受けないように、ピュアなサウンドを送り込み、クリーンな反響音を捉えることを重視した設計だということがわかります。

充電およびイヤホン端子への接続は、それぞれ専用のケーブルを用いる。個人的にはUSB Type-Cコネクタで汎用ケーブルが使えるシステムであってほしかった。

左右のハウジングを結ぶケーブルの中間にある小さなぽっち。この裏側に電極があります。専用の充電ケーブルと繋げてUSB充電、またはアナログケーブルと繋げてイヤホン端子に接続できます。

音量やノイズキャンセリングのレベル調整は、ハウジング外部のタッチパネルか専用アプリで。慣れれば、操作そのものはとても簡単。

しかし。

社外品のイヤーピースが使える仕様を求めたい

多くのユーザーには問題なく、自分だけフィットしない、というケースも考えられる。しかし現状では、ユニバーサル機というには難があるという思い。

前述しましたが、Nuraloopは独特な形状をしています。耳穴の奥までぐりっと突っ込むために。またマイクと鼓膜の位置を近づけるためでしょう。しかしこの音道の形と耳穴のカタチが合わないとなると、かなりの苦労を強いられます。僕がそうでした。

Nuraloopの初期設定時に、ユーザーの聴力や外耳道の反響状態を調査するのですが、何度試しても左側だけ密閉状態になら図に音が漏れ漏れ&スカスカ。これでは調査できないよ。イヤーピース、ちゃんとハマってる? とアプリが急かしてきます。十分近く格闘した結果、アプリにOKをもらえる状態にセッティングできましたが、メガネをかけ直したらまた隙間ができてしまってOh! No!

イヤーピースが薄いから、外耳道の入り口あたりにセッティングするのも難しいし。

左が付属のイヤーピース、右がセドナイヤーフィット・セラステック。厚みの差が著しい。付属イヤーピースは音道を極力奥まで差し込めるようにこの形状となったと思われる。

結果として社外品のイヤーピース、SednaEarfit XELASTEC(セドナイヤーフィット・セラスティック。体温で柔らかくなるから耳穴フィット感最高)を使うことにしましたが、ノーマルのイヤーピースで運よくフィッティングできた時と、聴力測定の結果が異なる結果に。

ううむ。有名どころの商品でいいので、社外イヤーピースを使ってキャリブレーションできるプロファイルを用意してほしい…。

とはいえハマればGOODな静寂音響空間が手に入る

デジタル処理による音質向上の伸びしろを確認するにもいいモデルだ。

世界最高クラスのノイズキャンセリングイヤホンと比較すると、まだまだ甘い。新幹線高速走行時に響く、高周波のノイズは聞こえてきます。それでも空調系のノイズの多くはカットできるので、実用面ではまったく問題ありません。仕事に、Spotifyに、Netflixに集中できます。

聴力測定前の音質は、いくらDSPで底上げするにしてもヤバくね?と思えるものだけに、そこからの伸びしろの素晴らしさがもう涙モノ。複雑さが重層になって怪奇となるシンバルの音に注目してみるとそこまで解像度が高まっているわけではないのですが、サウンドステージの拡張、ボーカルの輪郭を際立たせるかのようなチューニング。これは、実に気持ちいい音です。特にポップスやアニソン、ボーカロイド曲との相性抜群。Bluetoothゆえちょい遅れはありますが、映画やアニメを見るときにも、えっ?最高なんですけど?と新鮮な感動で鳥肌全開。

日本での販売価格がいくらになるかはまだわかりません。しかしAirPods Pro(3万円前後)と張り合えるプライスなら、選択肢の1つとして入れるべきアイテムとなるでしょうね。

Nura
Nuraloop
実勢価格:200ドル
Bluetoothイヤホン
ノイズキャンセリング
自動音場補正機能