伊藤嘉明が
本気の人にだけ伝える戦うヒント
人生万事振り切るが価値! Returns

今月のヒント

安くて優秀なアジア諸国の人材
高くて日本語しか話せない人材
どちらが企業が求めるかは明白だ

かつては憧れの日本も、今は縮小の一途を辿っている

いまでも日本人のなかには、潜在的にアジアの人たちを格下に見ている人が少なくない。給料が安い労働力で、日本人ほど勤勉ではなく、賢くもない。なんとなく、そんな印象を持っていないだろうか。
それは大きな間違いだ。今やアジア諸国の国力は上がり、教育水準も上昇している。経済力では中国にはかなわない。今回の新型コロナウィルスパンデミックでいろんなことが見えたのではないだろうか。IT、インターネットを駆使する力は日本は周回遅れであり、残念ながら絶対に追いつけないだろう。私が知る東南アジアの人たちはとても優秀だ。大学時代、またはビジネススクールで学んだときも、多彩な国の学生と共に学んだ。お国柄の違いはあっても、彼らはみな飛び抜けて優秀だった。労働環境においては人材の流動性もある上、アジアの人たちは勉学面でもビジネス面でもどん欲かつ積極的だ。
昔はその理由の一つに日本の存在があった。いつか自分たちの国も日本のように世界市場を席巻する優秀な企業を生み出したい。日本人が世界中で活躍しているように、自分たちがあるいは自分たちの子どもが世界で活躍していきたい。そうして、東南アジアの国々は急激に成長した。私はタイに深い思い入れがある。生まれ育った国だから当たり前のことだと思う。ただ、私は同時に日本人でもある。子どもの頃、海外から日本を見て、憧れた。だから、タイを含むアジア、そして日本が発展することを強く望んでいる。今、世界的に活躍するアジア企業はまだ数えるほどだ。それでもこれから伸びそうな企業が数多くある。
一方、日本企業は大丈夫か、どこが危ないのか、と聞かれても、VUCAの時代、先はわからない。数年以内に著明な企業が海外企業に買収されても私は全く驚かない。いま、日本企業の多くは、意識不明状態に見える。なんとか息はしているが、少し状況が変われば対応できず、死んでしまうかもしれない。こうやって日本経済はどんどん縮小していく。

日本という単位で考えない。アジアを意識する

すでに日本市場が縮小することは確定している。労働人口も減るし、総労働量も減る。日本は労働集約型のビジネスでは戦えないことは明白だ。ビジネスパーソンも労働集約型の仕事をしているかぎり、現在の仕事は失われる。競合する相手は、あなたの同僚ではない。その前にいまコンビニで働いているアジアの人たちだ。少なくとも現状の日本人ビジネスパーソンよりもポテンシャルが高い人たちがたくさんいる。彼らがコンビニや居酒屋で働いている理由は、日本人や日本企業が彼らのポテンシャルにまだ気づいていないか、目を背けているからに過ぎない。
今現在すでに始まっているように、日本企業とアジア企業の垣根はなくなっていく。シャープも台湾企業であるホンハイの下で再生を目指している。東芝のシロモノ事業も中国企業の美的集団のものだ。同様の例はこれから更に加速的に増える。日本企業が再生を目指すとき、アジア資本は有力な交渉先になる。アジア企業も日本企業がこれまで培ってきた世界的なブランドや技術を継承したい。そこにあるのはWIN-WINの関係だ。
ただ、そこに既存の日本人ビジネスパーソンが活躍するする余地は少ないように見える。当たり前のように2カ国語、3カ国語を操るアジア人材に日本語しか話せない日本人ビジネスパーソンが太刀打ちできるだろうか。しかも、日本人の報酬は彼らのそれよりも高い。公正に判断すれば、企業は安くて優秀な人材を雇う。日本市場だけを考えていると、働く場はそのままなくなっていく。アジアの優秀な人たちにその座を奪われるのは明白だ。新型コロナウィルス流行の影響で多くの人たちが既存の働き方を考え直すということを余儀なくされている。これを機会に、自分たちが働くことを続けるためにはどのようなスキルが必要なのかを再考する最後のタイミングなのかもしれない。


text : 伊藤嘉明
X-TANK CEO。世界のヘッドハンターが動向を注視するプロ経営者。著書『どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力』(東洋経済新報社/1620円)など。