365日走り続ける南井正弘が装着して試す
ランナーズ ギアマスター

華麗にモデルチェンジを遂げたロードシューズのコアモデル!

今月テストしたギア
ALTRA
TORIN4.5 PLUSH
実勢価格:1万8700円
サイズ25.0~32.0cm(男性用)


シューズの踵部分とつま先部分の高低差のことを“ドロップ”や“オフセット”と呼ぶ。この高低差があることで着地から蹴りだしまでの動きがスムーズになると言われてきたが、一方で裸足の時とは異なった状態にあり、ケガの原因のひとつになるとも言われている。が、本気でこれを改善しようとしたブランドは、21世紀になっても皆無であった。陸上競技の長距離種目の元アメリカ代表で、アルトラ ゼロドロップ フットウェアの創設者のひとりであるK. ゴールデン・ハーパーが、自作シューズを用いて研究を始めるまでは。

「怪我に悩まされているランナーたちを、もう一度足の痛みなく走らせることはできないだろうか?」と常々考えていた彼は、「裸足で立っているのと同じ状態の踵とつま先の高低差がないゼロドロップの構造のシューズは、踵から着地しない自然な走り方を実現させ、足の故障を減少させる」という結論を導き出す。だが、ほとんどすべてのメジャーなランニングブランドに、ゼロドロップ構造の靴を開発してほしいと依頼し続けたが、それに応えてくれるブランドはなかった。そんな状況で彼は「だったら自分で作ればいい!」と決断。ソールユニットのヒール部分を削り、ゼロドロップ状態にしたシューズをいくつも製造し、それをランナーに履かせると、故障していたランナーやランニングをあきらめていたユーザーたちから、いくつもの改善が報告されるようになり、ゼロドロップシューズのプロトタイプを作成することに。そして2009年、ゼロドロップシューズを開発するランニングブランド、アルトラが誕生した。

その後の快進撃はご存知の通り。アメリカ市場を中心にシェアを拡大した同社は、オンロードとトレイルの両方のランニング市場で確固たるポジションを築くことに成功した。筆者はこれまでアルトラのシューズを10モデル以上着用してきたが、インスティンクト3.0やエスカランテ2.0といったシューズは、まさにシンデレラ状態。自分の足形にピッタリとフィットしたのはもちろんのこと、ミッドソールの硬度がまさに自分好みで、脚を適度に保護しつつ、脚力を効率よく走力へと変換してくれて、ヘビーローテーションという言葉がぴったりなほどに履きこんだものである。そして今年に入り、アルトラのロードシューズ史上屈指の出来栄えの1足が春に登場するという噂を聞いていた。それが今回紹介するトーリン4.5プラッシュだ。同ブランドのロードシューズのコアアイテムといえるトーリンは、足を優しく包んでくれるアッパーを始めとして、快適な走行感を追求するためのスペックを結集。今回のモデルではミッドソールにQUANTIC™ を採用することで、軽量性と反発性を高次元で両立することに成功しているという。実際に足を入れてみると、人間の足形の徹底研究から誕生したフットシェイプのアッパーは、前足部に適度なゆとりを設けつつ、中足部とかかと部分はピッタリとフィット。ここまでは従来のアルトラでも到達していたが、今回特筆すべきはフォームを内包したシュータン。このパーツのフィット感が比類なきレベルで、走行中のフィット感と快適性がいままでにないレベル。ゆっくりペースから少し速めのKm4分50秒まで、あらゆるスピードで走ってもシューズと足の一体感をキープしてくれた。これまで速めのペースで走るときにセレクトしていたのは、アルトラでいえばエスカランテレーサーであったが、このトーリン4.5プラッシュはそれと同じレベルの走行性能に足の保護性能をプラスしてくれているのがありがたい。さらに公園などの土の路面なら充分にグリップするアウトソールを装備しているのは、舗装路以外も走ることが多いランナーには嬉しいだろう。

アルトラらしさをしっかりと残しつつ、初めてゼロドロップシューズを履くランナーにもピッタリな1足だと思う。

アッパーは通気性とフィット性を高いレベルで確保するために随所で編み方を変えたエンジニアードニットを採用。機能性はもちろんのこと高級感もある素材だ。
ミッドソールにはニューマテリアルであるQUANTIC™を採用。軽量性と反発性を高次元で両立することに成功しており、長時間のランニングでも快適性を失わない。
アウトソールはアスファルトやコンクリートといった舗装路で最高のグリップ性を発揮するパターンだが、ある程度の刻みがあるので、土での走行も問題なかった。

text : 南井正弘
ランニングポータルサイト『Runners Pulse』編集長。某スポーツシューズブランドに勤務し、『カルトQ』のスニーカー部門チャンピオンにも輝いた実績を持つ。