スマホで紫外線殺菌ができる”雑魚”たちの合体スマホが楽しい

今や世界のスマホの半数近くが中国メーカーの製品で占められている。カウンターポイントの調査によると、2020年第1四半期の世界のスマートフォン出荷台数の上位10位のうち、中国メーカーは2位(ファーウェイ)、4位(シャオミ)、5位(OPPO)、6位(Vivo)、7位(Realme)、8位(レノボ)、10位(テクノ)と7社がランクインしている。だがそんな世界レベルの戦いから外れたところで、独自に製品を展開している中国メーカーもあるのだ。

ガテン系スマホに活路を求める
弱小・マイナーな中国メーカー

海外のスマホ販売オンラインストアやECサイトを見ると、日本では知られていないメーカーのスマホが良く売られている。中でもDoogee、Oukitel、Ulefone、Elephoneの4社は「中小メーカー・メジャークラス」といった存在だ。いわば「雑魚」と呼びたくなってしまうこれら4社の製品は海外の家電量販店でも見かけることはほとんどない。販路の中心はネット販売だ。

これらのメーカーは大手メーカーより価格の安い格安スマホを展開することで生き残りを図ってきた。しかし今や大手メーカーも低価格なスマホを次々と出している。シャオミが日本で販売している「Redmi Note 9S」は2万9800円、海外向けの低価格モデル「Redmi 9」に至ってはわずか約1万2000円だ(中国販売価格:799元)。もはやマイナーメーカーは価格でも大手メーカーには勝てないのだ。

シャオミの「Redmi 9」は1万2000円。中小メーカーも勝てない価格だ

そこで彼らはアクティブ系スマホに活路を見出そうとしている。アウトドアでも使うことを意識し、ラバー系素材の本体はオレンジや黄色のカラーリング。タフな仕上げは見た目だけではなくIP68の防水防塵やアメリカ軍の軍用品調達規格のMILスペックにも対応するなど、海や山への旅行どころか本格的な登山にも使えそうな仕上げだ。強固なボディーは、普段街中で使っている最中にポケットから床に落とした程度ではびくともしない。ガテン系な仕事にも十分耐えうるためプロ向きな製品でもある。ニッチな層がターゲットになるが、大手メーカーはこの分野の製品を手掛けていないため市場で十分勝負できるわけだ。

マイナーメーカーは見た目だけではなく中身もタフなガテン系スマホを次々投入

とはいえ小物メーカーたちが競ってアクティブ系スマホの開発に取り組んだ結果、各社とも製品ラインナップが似通ってしまう結果となった。そこで今度はそのアクティブなデザインに工夫を凝らした製品を投入しているが、メーカーが思うほどの差別化はできていない。大手メーカーにはない製品を生み出すことには成功したが、ライバルメーカーと変わり映えのしない製品ばかりが揃うことで「その他大勢」という、メーカーの独自性が打ち出せない状況に陥ってしまったのだ。

SF映画に出てきそうな「眼」を持ったデザインのガテン系スマホも出てきた

そこで各社が知恵を絞って考え出したのが、合体型スマホにすることによる機能の拡張だ。合体式スマホはモトローラが「motomods」というモジュールを多数展開し市場では一定の成功を収めた。しかし2020年になって新しいモデルはでてきていない。マイナーメーカーたちはそんなモトローラの過去の成功にもあやかろうとしているのである。

コロナ後の新時代にいち早く対応
殺菌モジュール合体スマホ誕生

Oukitelの「WP7」はスマホの背面にライトを搭載したモジュールを合体できる製品だ。WP7本体そのものは前述したようにタフなボディーのアクティブ系スマホのデザインだ。ディスプレイは6.53インチ、バッテリーは8000ミリアンペア、カメラは4800万画素と300万画素に加え、800万画素のナイトビジョンカメラを搭載。このカメラは赤外線を利用し真っ暗闇でも動く動物などを撮影することができるらしい。完全なるアウトドアユースを考えたスマホだ。

紫外線ライトを取り付け殺菌ができるスマホ「WP7」

このWP7の背面に装着できるライトモジュールは2つ提供される。そのうち紫外線ライトモジュールは新型コロナウィルスを体験した人類にとって、これからの時代に必須となる機能が搭載されている。それは殺菌機能だ。このモジュールは6つの紫外線ライトを内蔵しており、エレベーターの押しボタンやドアノブ、マスクなどに数秒照射するだけで付着しているウィルスを99.99%まで死滅させることができるという。アルコールなどの消毒液を使いすぎると手の皮膚が傷んでしまうし、指以外のものでボタンを押すと、今度はそれを消毒する必要もある。しかし手元に紫外線ライトを持っていれば皮膚に影響を及ぼすことなく、即座に殺菌ができるのだ。

6個の紫外線ライトでウィルスを徹底的に叩きのめせる

もう1つのモジュールはLEDライト。こちらは2つの大型LEDを内蔵し、1100ルーメンの明るさで200メートル先を照射できるという。バイクや自転車にこのLEDライトモジュールを取り付けたWP7を装着すれば、夜間の山道を走る際も安心だろう。ライトは5つの点灯パターンを切り替え可能で、そのうちの1つはモールス信号のSOSを明かりで発信してくれる。万が一、山中などで遭難してもこのライトがあれば緊急発信をしてくれるのだ。

LEDライトモジュールを付けた雄姿。だがもはやこれをスマホと呼べるのだろうか?

時代の動きをいち早く察知して紫外線ライトモジュールを取り付けたOukitelの発想は素晴らしい。しかし背面に出っ張る巨大なモジュールを付けたスマホをどうやって持ち運べばいいのだろうか。ポケットへのおさまりは悪いし、カバンの中でも場所を取ってしまう。アイディアは優れているものの実際の使い勝手は悪そうだ。「アイディア倒れ」という言葉が似あうスマホと言えよう。

それでも「作ってみる」精神で製品化を果たしたことには素直に敬意を示したい。WP7は世間から注目を浴びることなく失敗作として終わってしまうかもしれない。だが世の中にはこのようなスマホを求めているユーザーも一定数いるはずだ。

売れるかどうかを考えず、アイディアをすぐ製品化したのはすごい

WP7の本体価格は約450ドル、紫外線ライトモジュールが約50ドル、LEDライトモジュールは約35ドルだ。すべて買っても約535ドルと大手メーカーのミドルハイレンジクラスの製品と価格は変わらない。品質に不安な面もあるかもしれないが、耐衝撃性に優れた本体は少なくとも壊れにくいだろうから故障の心配は少なさそうだ。

スタイル重視でモトローラに挑む
合体スマホに本気を出したDoogee

実はOulitelよりも先に合体型スマホを出していたのがDoogeeだ。最新モデルとなるS95は6.3インチディスプレイに4800万画素を含むトリプルカメラ仕様。バッテリーは5150ミリアンペアと巨大だ。本体横にはカスタマイズできる専用キーを備え、カメラのシャッターや夜間に便利なフラッシュライトの一発点灯、あるいはSOS発信など好きな機能を割り当てできる。本体は2メートルの高さから1000回落としても壊れないタフな構造だ。そして背面にはスピーカーモジュールとバッテリーモジュールを取り付けできるのだ。

スピーカーとバッテリーモジュールを取り付けできる「S95」

スピーカーは27mm、6Wのスピーカーを搭載、バッテリーも内蔵し連続10時間の音楽再生が可能だ。一方バッテリーモジュールは3500ミリアンペア。装着すると合計8650ミリアンペアという特大な容量となる。しかもこれらのモジュールはデザインも美しく設計されている。価格は2つのモジュールとS95本体をセットで買っても450ドル程度だ。

スマホ本体との一体感が美しいスピーカーモジュール

モトローラのmotomodsもデザインのいいモジュールが多かった。ただ合体させるだけではなく、合体後の見た目も考えた設計を行うだなんて、Doogeeもなかなかやるじゃないかと言いたくなる。だが実はDoogeeの合体スマホはこれが2機種目。最初のモデル「S90」を2019年頭に発売していたのだ。

S90はバッテリーに加え、トランシーバー、そしてナイトビジョンカメラを背面に合体できるスマホだ。また本体を挟み込むようにして取り付けるゲームパッドも用意された。プロのアウトドアユースからエンタメ用途まで幅広い目的に対応できる欲張った製品なのである。

4つの合体モジュールが用意された「S90」

それぞれのモジュールはS90本体にぴたりと装着できるが、一体感という点ではまだ詰めの甘さが見えていた。そこで後継モデルとなるS95ではより外観を重視した仕上げにすることで「利便性と美しさ」を両立させたのである。わずか1年の間に合体型スマホを改良してバージョンアップさせるだなんて、Doogeeのことを雑魚呼ばわりしてしまった自分が恥ずかしくなる。

合体システムは便利だが一体感を出すほどのデザインではなかった

合体式スマホはモジュールの開発や生産管理、販売面などメーカー側にとっては面倒な製品だ。だがユーザーにしてみれば後から機能を追加できることや「今日は何を取り付けようか」というワクワクした気持ちを与えてくれる。モトローラも事実上撤退してしまった今、マイナーメーカーたちにはこれからも合体式スマホの競争を繰り広げてほしいものである。