SNSの書き込みで死刑判決も!?ネットは人を殺すのか

情報が有機物を物理的に破壊する……本当に? インターネットは人を殺すのか

比喩や、たくさんあるうちの一要素などではなくて、本当の意味でインターネットの情報が人を殺めることはあるのだろうか? モラルやユーザー保護の思考回路はひとまず置いて、世界中の事例を調べた結果思った。

……ありうる。

世界中で猛威を振るうSNS上の自殺ゲーム

自らを殺めるパターンからみていこう。近年世界中で危険視されているものに「ブルー・ウェール・チャレンジ(Blue Whale Challenge)」がある。

詳細はあえて書かないが、プレイヤーは50日間、“指導者”から異なる課題を与えられて毎日クリアしていくことになる。課題はほんの些細なものから始まり、次第に過激なものへとエスカレートしていく構造だ。そして最後に自らの命を終わらせる課題が提示される。

2013年頃にロシアのSNSで流行したのが始まりとされており、現在にいたるまで米国や中南米、欧州やアフリカ、中国などに拡散し、各国で社会問題化している。根絶は難しく、APF通信の報道によると、ロシアでは2016年にSNS上でこのゲームがこれまで以上に猛威をふるった結果、未成年自殺率が昨年比1.5倍超となったという。ゲームの特性上、やはり若者が犠牲になる傾向が高い。

ブルー・ウェール・チャレンジは、いわばインターネットを使った洗脳ゲームだ。課題をクリアする達成感やプロセスを進めていく快感をアメに、判断力を鈍らせていって破滅に導く。

米国オハイオ州の教育省が2017年8月にリリースした、ブルー・ウェール・チャレンジに対する注意喚起文章。現在進行形の脅威として各国で対策が練られている。

2002年の北九州一家監禁殺人事件に、1969年のマンソンファミリーによる連続殺人事件など、洗脳による集団自殺や代理殺人事件は古今東西枚挙にいとまがない。人間は誰だって洗脳されるし、洗脳は必ずしも対面で行う必要はない。場にインターネットが使われただけだ。

自己洗脳といかないまでも自己暗示をかけているような事例もある。

2012年、セミリタイアの夢を託したFXで損を出し、すべてに絶望した男性がブログで始めた自殺カウントダウンがそれだ。自殺を決意しつつも実行に移せない状況を変えるためにか、手持ちのお金が尽きそうな10月末をXデーと決めて、200日以上前から「死ぬまで後●日」で始まる日記を連日投稿。日数は暦どおりに減っていき、投稿は「死ぬまで後1日」を最後に止まっている。

いつ死ぬかを公言し続けることで自らを縛り、最後まで舞台から降りないことで目的を成し遂げた。目的の是非はおいて、ブログが自制心を助けていたのは残された日記を辿っていけばわかる。

SNSの書き込みで死刑判決を受けた事例も

他者から手を下されるパターンを見ていこう。

2017年6月、パキスタンではフェイスブック上で予言者ムハンマドを侮辱する投稿をしたとして、ムスリムの男性が州法廷で死刑判決を受けている。罪状は冒涜罪。すぐさま上告して争う構えを見せている。また、近い事例としては、2012年にSNS上で棄教して無神論者になると宣言したエジプト人男性が、近隣住民から暴行を受けて大学を追われたこともあった。イスラム教には棄教の公表は極刑という考え方があり、この男性も裁判にかけられる身となっている。

いずれにしろ、ネットの投稿が元で所属する社会から命を奪われるリスクを高めたことは間違いない。より直接的な“他殺”リスクとしては、近年はIoT絡みのハッキングが警戒されている。

洗脳もハッキングも意思表明も物理的な距離と無関係にできる

たとえば、スマートホームがハッキングされたとしよう。極寒の夜中、住民が寝静まったときにエアコンを切って窓を開く操作を遠隔で行ったなら凍死してもおかしくない。80度近くに引き上げられた浴槽の湯をかけて深刻な火傷を追う危険もある。さらに、ペースメーカーなどの医療用機器がターゲットにされたら、より深刻な被害が発生することも考えられる。

セキュリティホールを完全になくすことは難しく、その穴はインターネットにつながったどこからでも突くことができる。強度のマイナス思考かもしれないが、それは否定しがたい事実でもあろう。

とはいえ、インターネットというのは基本的には意思を持たないインフラで、つまるところは道具だ。道具は使いようがすべて。
当然のことながら、命を救う目的にも大いに役立つ。こちらの事例のほうが探すのに苦労をしないだろう。いまや、「死にたい」と検索にかければいのちの電話等の相談窓口の連絡先が表示されるし、災害時には凍死や感電死などを防ぐためのノウハウがSNSを縦横する。

使い方を誤ると自他を社会的な死どころか、物理的な死に至らしめる。そして、可能性は開拓していくというリスクがあることを頭の片隅に置きつつ、ポジティブに付き合っていきたい。

古田雄介(ふるたゆうすけ):利用者没後のネットの動きやデジタル遺品の扱われ方などを追うライターで、デジタル遺品研究会ルクシー理事。著書に『故人サイト』(社会評論社)『[ここが知りたい!]デジタル遺品』(技術評論社)など。

『デジモノステーション』2018年1月号より抜粋。