時計ジャーナリストべた褒め!セイコー『PRESAGE STAR BAR Limited Edition』は今絶対手に入れるべき1本

 

見た目、価格、作りの三拍子揃った機械式時計



セイコー
PRESAGE STAR BAR Limited Edition (SARY091)
価格:6万4800円
セイコーウオッチ TEL:0120-061-012

最近は、買える価格帯の機械式時計が熱い。長らく、この分野で強かったのはオリエントとハミルトンだが、最近はセイコーも力を入れるようになってきた。もともとセイコーは、時計のパッケージングがスイスのメーカー並みに上手い。具体的にいうと、普通の機械やケースであっても、完成品になった場合、とてもよく見えるように作れてしまうのである。お金のかけ方にメリハリがあるとも言えるし、何がいい時計なのかというツボをよく分かっている。スイスのある時計メーカーの役員が「今のセイコーはまとめ方が大変うまい」と語ったのも納得である。

そんなセイコーで、最近いいなと思ったのが買える価格帯で、しかも機械式ムーブメントを載せた「プレザージュ」である。日本国内での展開は2011年。それ以前はアジア向けの安価な機械式コレクションという位置付けだったが、’16年に大幅にテコ入れをし、セイコーの基幹コレクションへと格上げされた。

セイコーの機械式時計で有名なのは、「セイコー5」である。これは良質で安価だが、徹底して実用時計の作りを維持している。対してプレザージュには、工芸的だったり、機械の面白さであったり、高級時計から転用されたディテールなどが盛り込まれた。初めて見たとき、これは相当お買い得な時計だ、と筆者は感じたのである。

どのモデルもよく出来ているが、個人的にお勧めしたいのが、新しい『STAR BAR LIMITED EDITION(SARY091)』だ。これは有名なSTAR BARのオーナーである岸久(きし ひさし)氏が考案したカクテルにインスパイアされた限定モデル。文字盤の装飾も凝っているし、機構的にも面白い。加えて価格は、今までのプレザージュ以上に戦略的なのだ。

セイコー プレザージュに加わった限定モデル。カクテル「Sakura Fubuki」をイメージしたプレス仕上げの文字盤や、凝ったディテールを持つ。内容を考えれば、バーゲンプライスだ。自動巻。SSケース。5気圧防水。限定1000本。

ディテールを見ていきたい。文字盤と針に採用されたのは、ダイヤモンドカットされたアプライドインデックスである。表面をダイヤカッターで削って、ピカピカにするこの手法は、長らく高級時計の専売特許だった。例えばセイコーならば、「グランドセイコー」や「クレドール」といった、高級ラインが主に用いてきたものだ。しかしセイコーはこの凝った仕上げを、定価6万円の「プレザージュ」に与えたのである。同価格帯のスイスやドイツ製の時計では、まず見られないディテールだろう。

本作の魅力はいろいろあるが、とりわけダイヤカットされたインデックスは際だって優れている。表面をダイヤカッターで剥くことにより、歪みのない面を持つ。また12時位置から4時位置に置かれたパワーリザーブ表示も、個性的なだけでなく実に見やすい。

さらに驚かされたのが、針の作り込みだ。昔の高級時計よろしく、秒針と分針の先端はわずかに曲げられている。視認性を高めるにはいいアイデアだが、正直、数万円の価格帯で、こんな作りの針を見るとは思ってもみなかった。セイコーの時計は針がいい、というのは世界的な評価だが、彼らはこれを、機械式時計のエントリーモデルにも投入したわけだ。確かに針自体の作りは「グランドセイコー」などには及ばないが、数十万円の価格でも、これほど良い針を載せたものは希だろう。

税抜6万円という価格ながら、高いパフォーマンスを誇る本作。付属する箱も凝っていて、ただの紙箱ではない。箱を開けるときから楽しめるという、高級時計ならではの要素を、この価格帯でも味わうことができる。

「Sakura Fubuki」をイメージした文字盤も完成度が高い。模様は機械彫りではなくプレスでつけているが、きちんとプレスしたためかエッジがしっかり残っている。また、メッキ仕上げのシルバー色も、ごく薄いが、きちんと色が載っている。

個人的にこの時計で気に入っているのは、機構の面白さだ、6時位置には針で日付を示すポインターデイトを、12時位置から4時位置にかけては、同じく針で駆動時間を示すパワーリザーブ表示を載せている。

12時位置から4時位置のパワーリザーブは、筆者の知る限り、世界で初めての採用だ。今までにない機構だが、わざとらしくないし、実用性も高い。加えて、日付とパワーリザーブ針の先端には赤い刺し色を加えて、視認性を高めている。ただし、色味に昔のセイコーとの違いが見て取れる。かつてのセイコーならば、真っ赤な色を与えて、全体のバランスを壊してしまっただろう。対して今のセイコーは、赤い色味を抑えることで、全体に調和を与えたのである。

正直、べた褒めに近いが、この価格で、こんないい時計が出てきたのだから仕方ない。ただ残念ながら、本作を含めて、「STAR BAR」コレクションはすべて限定だ。ご興味のある方は、ぜひ店頭に急がれたし。

広田雅将(ひろたまさゆき):1974年生まれ。時計ライター/ジャーナリストとして活動する傍ら、2016年から高級腕時計専門誌『クロノス日本版』の編集長を兼務。国内外の時計賞の審査員を務めるほか、講演も多数。時計に限らない博識さから、業界では“ハカセ”と呼ばれる。

『デジモノステーション』2018年3月号より抜粋。

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