伊藤嘉明の人生ムダ遣いのペンデュラム

趣味を楽しむとは、誰のいうことも聞かず、地図がない世界を
自分で歩き回ることに似ている。人はそれをムダ遣いというかもしれないが、
やってもいない人からその楽しみを否定される筋合いはない。
伊藤嘉明は過去のムダ遣いから何を学び、何を得てきたのだろうか?

ガジェットマニアで音楽、映画、Audio Visual機器が大好きで、必要以上にいろいろ手に入れてはモノばかりたまる泥沼に住みついて数十年。いろいろ使ってきて、自分の事務所はB&O、自宅リビング、ダイニングはメインどころとしてDenon、Bose、 B&O、YAMAHA、ガレージハウス事務所とガレージはそれぞれPIONEER、Bose、自宅寝室Bose、書斎Bose、という形で、ここしばらくは落ち着いていた。

思い出すのは、自分がまだ幼少の頃に、父がよく聴いていた音楽だ。いや、音楽を思い出すというよりはその空間という方が感覚的に近いかもしれない。マッキントッシュのアンプの目盛り、そのバックライトのブルー。仰々しい大きなカセットリール式のプレイヤーとレコードプレイヤー。自分の背丈ほどある大きなスピーカー。父親が大事にしていたであろうその黒と銀色に輝く機械の塊が、子供心にも特別なすごいものに写っていた記憶がある。クラッシックギターを習い始めたこともあり、中学、高校と音楽をよく聴くようになり、音が日常にあるのが当たり前になった。まあ、聴いていたのはロックやメタルばかりだったが。ほどなくして父からアンプやスピーカー、オーディオセットを譲り受けた。マッキントッシュやテクニクス、今考えると学生としては、とんでもない高価な音楽環境を手に入れたものだ。(気軽に聞くぶんにはサンヨーのブスタンクというカセットデッキもお気に入りだったけど)

大学進学を機に渡米し、初めて親元を離れての寮生活が始まった。餞別にもらったお小遣いで、秋葉原でダブルカセット付きCDプレイヤー、いわゆるバブルラジカセを買って、大事に持って行ったものだ。このバブルラジカセは1980年代後半から1990年前半のバブル時代に家電メーカーが作った、非常に開発費がかかっているシロモノで、今考えるとなんとも贅沢なスペックでおぼろげだけど、そんなラジカセに5万円近く払った記憶がある。アメリカの大学寮でも大活躍したバブルラジカセ、重低音が凄くて、友人らに褒められたり羨ましがられるたびに、日本テクノロジーが誇らしかったものだ。

そんなある日、人生を変えてくれたBoseと出会った。名前が面白いという印象と、開発した人がインド人のエンジニア、Dr. ボーズだと知ってさらに興味を持った。それから101を愛用している友人に始まり、名機で知られる901シリーズを持っていた教授の家まで遊びに行って、しょっちゅう音楽を聴かせてもらったものだ。ドンシャリのすごい重低音に酔いしれていたこの頃に、ボーズのように原音を綺麗にかつ広がりのあるように再生することがいかに凄いことなのかを知った。自分でも201、301シリーズIIIなど、買える範囲で手に入れた。それ以来30年に渡る超ヘビーなBoseファンである。社会人になってからは5.1チャンネルサラウンドシステムにもハマり、ホームシアターにはかなりのカロリーを使ってきた。天井から吊るしたり、何メートルもあるスピーカーケーブルをいかに見えないように這わすかにめちゃくちゃ苦心したり。日本のBoseからは販売していなかったため、わざわざアメリカで買ってきたりしたアクセサリやシステムなど本当に良く構築したものだ。色々なメーカーも試すのだが、こと音響に関しては結局Boseに落ち着く。自称映画マニアだけにオーディオビジュアル環境にこだわる自分だが、実際のところBoseのホームシアター用セットは、今でも4タイプ所有するくらいしっくりきている。他のメーカーとの併用、もしくは切り替えできるように繋いでいるけど、最後はBoseである。当然その流れでスピーカーやヘッドホン、イヤホン等、Bose製品は家中に転がっている。アンプやモニター全般にもこだわりを持って、テレビは当然プラズマ、有機ELと常に最初に高値で買うアーリーアダプター。一時期は絶対にハマってはいけないケーブル類にも逝ってしまったこともある。1mウン万円とか恐ろしい世界だ。あまりにも危険な世界ということもあり、また、車好きな自分としては車の部品代にもお金を使わないといけないということで、片足突っ込んだだけで帰ってきたが、いずれにしてもそんなオーディオビジュアルライフをここ30年送ってきたわけで。

で、冒頭に戻るのだが、ここ数年は一定の熱で収まっていた状態だった。しかし、アメリカで過ごした大学時代にBoseに出会った衝撃に匹敵するくらいの驚きをもらったのがSONOS。久しぶりに新機導入したSONOS Play 5。1台でも充分なのだが、あえての2台。この機種には6つのクラスDデジタルアンプ、3つのツイーター、3つのミッドウーファー、そしてフェイズドアレイ・スピーカーが備わっている。もうここ何年かずっとワイヤーとか、スピーカーケーブルとかが超絶めんどくさくて、シンプルにワイヤレス、WiFiでまとめていたのだが、SONOSもアプリ導入してスマホでセットアップ。ここまでは最近の流れとして他のメーカーのものでも経験済みだったので、正直ナメていました、 SONOS。いや、ビックリです、これ。一本しかつないでないのにこのレベル。もう一本つないだらどうなるか。アメリカとかの広い家だったらもっと満喫できるなぁと聴きながら、スピーカーもっと欲しいから部屋がたくさんある家を買いたくなる逆転現象まで起きそうな、、、、買えないけど。大パーティーとかでも余裕だ。それもしないけど。で、いろんなジャンルで聴いてるのだが、これは30万したデザインも超お気に入りのB&Oの定位置を奪いかねない。おそるべしSONOS Play 5。B&Oが気に入り過ぎて、2台導入していたのに、、、これは家中に増殖しそうな予感。三台目からが本領発揮、と聞いたから気になって仕方ない。そういえばアメリカのWIRED紙でべた褒めしてたのを今更思い出した。で、SONOS Play 5二台をステレオペアリングにし、Trueplay機能で音場チューニングして以来、久しぶりに音楽三昧の生活になっている。当然もっと追求したくなるものでSONOS Moveまで(しかも2台!)我が家にやってきた。そんないくつもあっても意味がないと言う人たち、うるさいです。意味があるかないかはこちらで決めるので放っておいてください。そんなことよりSONOS MoveにもTrueplay機能がついている。スピーカーの位置を変えるたびに、わずか30秒ほどで設置場所に合わせた音場に自動設定してくれる。しかもポータブルに持ち運びできるWiFi &Bluetooth スピーカーなので、わざといろんな場所に置いて聴いてみて悦にいる日々。パワフルに音にかこまれたいときは全部鳴らしっぱなし。じっくり聴き入りたいときはPlay 5だけで浸る。これはもう最高…すっかりSONOSがくれる音楽体験に惚れ込んでしまった。よって、頼まれてもいませんが、勝手にSONOS ブランドアンバサダーに就任いたします。え? それがオチ? うるさいです。あと今号から新たに始まる連載、人生万事振り切るが価値、三たび現る。伊藤嘉明の「人生ムダ遣いのペンデュラム」の始まり。


text : 伊藤嘉明
X-TANK CEO。世界のヘッドハンターが動向を注視するプロ経営者。著書『どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力』(東洋経済新報社/1620円)など。