トラベルプロデューサー・堀真菜実の
本当は教えたくない魅惑のニッポン秘境ガイド

「沖縄の原風景」竹富島で、島民が愛する景色を歩く。

赤瓦の屋根、珊瑚の石垣、白砂の道を通る水牛車。沖縄県の八重山諸島にある竹富島は、古き良き街並みが魅力の島だ。成田から飛行機で約3時間、さらにフェリーを乗り継いでたどり着く。二度目の訪問だったこともあり、島民の方から聞いた話だけを頼りに島を巡ってみることにした。すると、違う風景が見えてきた。

海の中に現れる幻の浜

宿のお姉さんのおすすめはコンドイ浜だった。白い砂と透明度の高い水が美しい人気のビーチだ。「干潮と満潮で全然違う眺めになるんですよ」とのことなので、前回とは違う干潮の時刻に訪れる。到着し、海を見て、驚く。その美しさに、ではない。浜から眺めているはずなのに、海の中にもう1つ浜があるのだ。後から知ったが、潮が引く時にだけ、遠浅の海の底から白砂が現れるのだそう。潮が満ちていくと、海上に長く伸びた陸地はだんだんと形を変え、やがて小さな島になり、ついには見えなくなる。干潮の時にだけ現れ、海を歩いて上陸することができる、幻の浜だ。

神を祀る御嶽(オン)で背筋を伸ばす

「私もときどき、子供と散歩をしているんです」抱っこひもに子どもを連れている私を見て、島民のお母さんがこっそり教えてくれた場所、玻座間御嶽(ウーリャオン)と真知御嶽(マーチオン)。御嶽とは、沖縄で神を祀る聖所のこと。本島では【うたき】と読むが、竹富島一帯では【オン】と発音する。環状道路と観光地に挟まれた位置にも関わらず「トトロの森に入ったような神聖な雰囲気」だと聞いて来た。確かに、この一角だけが生い茂る木々に囲まれ、しんとしている。「沖縄では、鳥居の内側は聖なる場所」と彼女が言っていたことを思い出し、鳥居の外から参拝をする。

竹富島が守り続ける風景

水牛車で案内してくれた「おじぃ」に聞く竹富島らしい風景は、「シーサー・石敢當(いしがんとう)・曲がり道」の3つ。かつて医師がいなかった島で、何よりも恐れられていた疫病から島民を守るための魔除けだったそうだ。

沖縄といえばお馴染みのシーサーは、屋根から家を守る。T字路やY字路の突き当りにある「石敢當」と書かれた石碑は、災難が左右に散るのを防ぐ。そして、わざと曲がって作られた道は、悪いものが奥まで入って来られないための工夫なのだ。言われてみれば、島内にはまっすぐな道がない。どれもやや曲がっており、ずっと向こうまでは見渡せない。

ちゃんと理由があったのだ。石敢當は、他の島でも要所には見られるものの、竹富島ほど現役で残っているのは珍しい。赤瓦の屋根以外にも、こうして竹富島に大切に継承されている景色があることを学んだ。

あえて予定を立てずに島の方の声に耳を傾けると、新しいものが見られた。自転車や車で素通りしていた場所をゆっくり歩くと、歴史が隠れていた。気付かぬうちに、事前に仕入れた情報を現地で答え合わせするような旅が増えていたかもしれない。土地の人からいただく視点は新鮮だ。

集落を見渡すならこちら!
ハーヤナゴミカフェ
〒907-1101 沖縄県八重山郡 竹富町字竹富379
平屋が並ぶ島の集落では貴重な、2階からの眺めを楽しめる隠れ家スポットだ。


text : 堀真菜実
新しい旅を作るトラベルプロデューサー。弾丸世界一周、廃校キャンプなど手掛けるツアーは即日満席。観光局・自治体へのコンサルティングやメディア出演で活躍中。