伊藤嘉明の人生ムダ遣いのペンデュラム

クルマ沼のすべてはギャランVR4から始まった!
人生であと何台のクルマに乗れるのだろうか?

クルマに興味ない人からしたら、タイヤが四つ付いている移動手段以外の何物でもないのがクルマだ。されど、クルマ好きからすると、デザイン、エンジン、走行性能、安全性能、開発ストーリー、生産台数に至るまで、ドラマを探そうと思えばいくらでも出てくるネタの宝庫、ネバーエンディングストーリーだ。

自他ともに認めるクルマ好きの私は、一度好きになったクルマは何十年経とうと好きでいるだけでなく、中古車市場で昔乗っていたクルマを探すことが趣味となっている。いや、趣味というと聞こえはいいが、前世の行いのせいなのかカルマなのか、はたまた呪いにかかっているのかというくらい意味不明の行動をとっているらしい。

実際、今まで気に入って買った同一車種は、サーブ9−3ヴィゲン(合計5台所有。うち同時期には最大4台、同モデル9−3は別途1台)、サーブ9000エアロ(2台)、アウディA4 1.8ターボクワトロ(B5)2台。S4(B5)のべ2台(これは同じクルマ、しかも以前に所有していた個体を15年ぶりに見つけて買い戻す)、ポルシェカイエンV6とターボSの計2台、それから番外編でアウディR8も同一車を買い戻すという、側から見たら無駄遣いを通り越し、完全に頭がいかれたおかしな人がする行為でしかないだろう。

このコラムにも以前書いたアウディS4を15年ぶりに見つけて買い戻した話などは、いやぁ素敵なお話しですね、心が暖かくなりましたよ、と言ってくれた取引先、伊藤さんはとてもロマンチストなんですね♪ 素敵だわ、ウフッとのたまったオカマとか、耳に心地よいコメントをしてくれたのだが、心ない知人などは一言、そんな古いクルマ買っても壊れるだけじゃないですか、と……。いやいやアウディのB5ボディのA4、S4はDTM、いわゆるドイツツーリングカー選手権で大活躍した超かっこいい名車なのだ。それに憧れて一生懸命に働いて中古車を手に入れたのだから、特別な思いがあるのは当然である。

DTMといえばWRCについても触れねばなるまい。そう、なぜならWRCはかっこいいのだ。WRCとはワールドラリーチャンピオンシップの略で、百戦錬磨のスピードキングであるプロレースドライバーたちでさえ、WRCのドライバーは頭のネジが何本か抜けているくらいクレージーだ! それだけ道無き道の超難関コースを派手なスポンサーロゴやステッカーを身に纏った市販化されているクルマが猛スピードでカッ飛ぶ、いやまさに文字通りクルマが空中を飛んでいることも当たり前のラリーである。

このかっこいいWRCで活躍するクルマ、当然私の最初の愛車の選択肢になる。キワモノすれすれのクルマ好きである私の記念すべき人生最初の愛車、アメリカの大学留学時代に乗っていたのは、1990年式三菱ギャランだ。本当はVR4が欲しかったが、アメリカには限定で1991年に1000台だけしか輸入されなかったので、私が買ったのはノンターボ版のGSX。このVR4、そもそもの歴史を辿ると、’80年代までのハイパワー競争マックスだったグループBに変わり、1987年より基本ほとんどノーマルベースで戦うことを前提としたグループAに、三菱自動車が送り込んだ刺客。2ℓターボエンジン、フルタイム4WDシステム! VR4の子孫として自動車史に残る名血統ランサーエボリューション(通称ランエボね)にも、脈々と受け継がれた三菱の名エンジン、4G63。初代V R4は三菱製TD05Hタービンとの組み合わせられたターボ仕様を初めて搭載し、駆動方式はビスカスカップリング式センターデフのフルタイム4WDに加え、4WSやABSなどの当時では最新のハイテクデバイスで完全武装していた。エンジン出力は205ps、220ps、240psと、その馬力も強化されていったじゃじゃ馬である。なんせパリダカで大活躍したパジェロ、ジャッキー・チェンも乗っていたスタリオン、我が愛しのギャランVR4その子孫となるランエボシリーズ……と三菱自動車の全盛期と言っても過言ではない時代だろう。私にとって今でも恋焦がれるクルマが、このギャランVR4なのだ。ギャランで覚えたフルタイム4W Dの雪道や悪路での安定した走りが、私がのちにアウディのクワトロシステムにハマる流れをつくったものと思われる。まぁ、他人からしたらどうでもいい戯言なのだが、とうの本人にとっては自分のルーツを語る上で外せない話なのだからしょうがない。

ということでこのギャランから始まり、今にいたる修羅道。人生であと何台のクルマに乗れるのかな、ということを真剣に考え始めた今日この頃。そうこうしているうちに紙面がなくなってきた。まだまだ語り足りないので、またネタがなくて困ったときに私の修羅道、「人生万事クルマ好きが価値」で、そのうち語ることにしよう。


text : 伊藤嘉明
X-TANK CEO。世界のヘッドハンターが動向を注視するプロ経営者。著書『どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力』(東洋経済新報社/1620円)など。