365日走り続ける南井正弘が装着して試す
ランナーズ ギアマスター

異次元の推進力を買いやすいプライスで実現!

今月テストしたギア

SAUCONY
ENDORPHIN SPEED

実勢価格:1万7600円
サイズ: メンズ 25.0~28.5㎝(0.5㎝刻み)、29.0,30.0㎝
ウイメンズ22.5~25.5㎝(0.5㎝刻み)

アメリカ発祥のスポーツブランドといえば、なんと言ってもナイキが有名だが、その歴史は50年に満たない。アメリカには創業から100年以上経過したスポーツブランドがいくつか存在しており、サッカニーもそのひとつ。1898年、近代五輪最初となるアテネ大会の2年後に創業している。アメリカ東海岸ペンシルベニア州カッツタウンを流れるサッカニー川がブランド名の由来で、日本ではかつてソーコニーと表記された時代もあった。創業から12年が経過した1910年には、川の畔にある2つの工場で日産800足のシューズを製造するほどに成長。同社は‘70年代から‘80年代にかけてのジョギングブームの波にも乗り、ランニングマーケットにおいて確固たるポジションを築くことに成功したが、現在のカジュアルシーンで人気となっているジャズやシャドウといったプロダクトがその原動力となった。

そんなサッカニーはアメリカを中心にシリアスランナーから根強い人気を得ているブランドであり、特にレースの日の着用率はとても高く、多くの大会でベスト3もしくはベスト5以内にランクされるほど。しかしながらその機能性の高さをワールドワイドで上手く伝えているとはいえなかった。その状況を打破することになったのが、今年リリースされたエンドルフィンシリーズである。「エンドルフィン プロ」「エンドルフィン スピード」「エンドルフィン シフト」の3モデルからなるハイパフォーマンスコレクションで、エンドルフィン プロは、カーボンファイバープレートを始めとしたレース時に、ベスト更新を目指すランナーのためのスペックを結集した1足。東京五輪のマラソン競技アメリカ代表を決定するオリンピックトライアルの女子の部では、このシューズを着用したモリー・サイデルが2位となり、その優秀性を証明した。エントリーモデルとなるエンドルフィン シフトは、日々のランニングに最適なスペックをリーズナブルな価格で実現。今回ピックアップしたエンドルフィン スピードはその中間に位置し、上級アスリートのフルマラソンやハーフマラソンetc.レース前の調整用として開発されたプロダクトである。

足を入れてみるとフィット感を重視した全体にスリムなアッパーは、足との一体感を実現。前足部もコンパクトなフォルムだが、よほど幅広の足でない限りは窮屈ということはないだろう。ミッドソールに用いられたPWRRUN PB(パワーランピービー)は、同社の高機能素材PWRRUN+(パワーランプラス)との比較で40%の軽量化に成功したことに加え、衝撃を反発性に変換するエナジーリターン率が88%まで向上。この数値は業界トップクラスで、立っている状態でも素材の柔軟性を足裏に感じるが、安定性を損なっていないところが新しい。走り始めてみると、着地から蹴りだしまでの一連の動作がスムーズかつクイック。しかも着地時のグラつきが少なく、安定性も高レベルにある。最上級モデルのエンドルフィン プロはPWRRUN PBの反発性と内蔵されたカーボンファイバープレート、スピードロールというゆりかご状のソールユニットの形状がミックスされることによって、反発性と同時に転がるような走行感が大きな特徴だったが、このエンドルフィン スピードはカーボンファイバープレートではなく若干柔軟なTPU(サーモプラスチックウレタン)製プレートを内蔵していることにより、着地から蹴りだしの間に柔らかさと跳ねるような感覚が得られる。強く踏み込んだ際の加速性能はエンドルフィン プロには劣るが、他ブランドの上級機種も含めても上位にあり、自然とペースアップ。異次元の推進力を堪能でき、走っていて本当に楽しい。初めて履いた際は通常6kmのランが8Kmに伸びたほどだ。このレビューを書くまでに計5回、42Kmを走ったが、個人的には今年リリースのランニングシューズで、最も走りやすい1足に挙げられるほど。その走行性能を考慮すると1万7600円というプライスは本当にお買い得だと思う。

アッパーは部位によって織り方を変えたエンジニアードメッシュを採用。足とのフィット感と優れた通気性を両立しており、長時間の走行でも快適性をキープする。

ミッドソールに採用されたのはエナジーリターン率が88%という業界トップクラスの反発性を発揮するPWRRUN PB。PWRRUN+と比較して40%の軽量化にも成功。

アウトソール側からもミッドソール素材PWRRUN PBがかなりの面積で視認できるなど、軽量化のため、本当に必要とする部分のみにソリッドラバーを配している。


text : 南井正弘
ランニングポータルサイト『Runners Pulse』編集長。某スポーツシューズブランドに勤務し、『カルトQ』のスニーカー部門チャンピオンにも輝いた実績を持つ。