Life Styles Of People Who Live In A Car 実際にクルマに住んでいる人たちのライフスタイル

CASE 1
PEOPLE とおるん&よしみん夫婦
HOME 2003 NISSAN CARAVAN
BLOG https://everydayfes.com/

自宅を引き払って見つけた”今のしあわせ”のカタチ

約1年半前に自宅を引き払い、日産『キャラバン』に住み始めたとおるんさんとよしみんさんの夫妻。「それまでは2人とも正社員で働いていたのですが、勤務時間の関係で2人で過ごせる時間がすごく少なかったんです。2人とも旅が好きなのに、なかなか一緒に出かけることができず、写真を見せ合うくらいで感動が共有できていなかった」ととおるんさんは振り返る。「一緒にいられる時間がなくて『何のために結婚したんだろう?』と……。2人にとっての幸せは何かを考えて、一緒にいられることを最優先しようということになりました」とよしみんさん。相談の上、2人とも会社を辞め、夢であった世界一周旅行に出かけた。「仕事を辞めることの不安もありましたが、それよりもすれ違いの生活が続くほうが不安だった」と2人は口を揃える。

世界一周は100日以上の船旅だったが、船の中にいる時間が長く、移動の実感があまりなかったことと、日本についてより知りたいと思ったことから次なる旅として日本一周を計画。「できるだけ自由に旅したかったのと、予算を抑えたかったので、色々な人に話しを聞いてバンで車中泊するスタイルを選びました」と話す2人。中古の商用バンに絞って探した『キャラバン』は38万円だった。ベッドなどの内装もDIYし、車検費用などを含めても60万円程度に抑えた。それまで住んでいた3LDKの一軒家は引き払い、荷物は車内に積んでいるもの以外はお互いの実家に預けたり断捨離し旅の準備を整えた。

VANLIFEを始めてからは、暑い季節は北海道に足を伸ばし、同じくVANLIFEを送っている友人カップルとの合同結婚式のために福岡へ行ったりと、全国を股にかけた生活を送っている。「予定はあまり決めないようにしています。宿の心配をしなくていいので、気に入った場所にはしばらく滞在できますし、自由なのがいいですね。昨年はフジロックもこのクルマで行きました。クルマに戻ればそこが家ですから思い切り楽しめましたし、イベント終了後も1泊して渋滞が解消してから移動できたので快適でした」(とおるんさん)。

「次の目的地を決めたり、その日のお風呂や買い物、食事など話し合うことが多いので、夫婦のコミュニケーションがすごく増えました。見たかった景色も一緒に見られるし、今はこの生活が一番幸せだと実感しています」と、よしみんさんが話すように2人はバンに住む生活を心から楽しんでいる様子。仕事はYouTubeで動画を配信しているほか、ライターとして記事を書いたりもしているとのこと。収入は減ったが生活にかかるお金も減ったので困ることはないようだ。「生活費はガソリン代などを含めても月に7〜10万円くらい。家賃がないのが大きいですね」(とおるん)。入浴は全国に温泉があるので選び放題。通販もよく利用するが、コンビニ受け取りができるので不自由はあまりないという。ただ、サイズ制限があるのでソーラーパネルを買ったときは友人宅で受け取ってもらったとか。

VANLIFEを始めてから幸せの基準が変わり、良い温泉に出会えただけで「今日は良い1日だった」と思えるようになったという2人。今欲しいものは何かを聞いたところ、とおるんさんは「ワイドボディのバンだと、居住スペースに余裕ができそう」、よしみんさんは「ポップアップルーフを付けたい」とクルマに関することを揃って口にした。一方で「この生活スタイルにこだわっているわけではないので、求める幸せのカタチが変わればやめるかもしれないですね。あくまで今の幸せがここにあるというだけです」と語るところも力の抜けた2人らしい。

VANLIFEは夫婦のコミュニケーションが増える

同じスペースで暮らしていることと、毎日のように移動していると夫婦の会話が圧倒的に増えたとのこと。目的地をどこにするか、買い物をどこでするのか、食事のメニューなど決めるべきことが多いのでコミュニケーションは当然ながら密になる。お互いのことをより深く知ることができたと2人は話す。

 

DIYで商用バンを住める家に改装!

格安で購入した『キャラバン』は自分たちの手で住める”家”に改装されている。窓にはスタイロフォームという断熱材をはめられるようにし、パネル部分には壁紙を貼った。ダブルサイズのベッドも自作で、下は収納ボックスになっている構造。床は購入した時から板になっていたが、そこに断熱材と床材を貼って快適度を高めている。暑い季節にはリアゲートを少し開けたままにできるように、100円ショップで購入したS字ハンガーを使って引っ掛けられるアイテムを自作した。これを引っ掛けておくと、カギをかけることもできるので夜でも外気を取り入れられるようになったとか。天井にも荷物を入れられるラックを設けているが、曲がってくるので網を2重にしている。





 

ソーラーパネル&ポータブル電源で快適度UP!

旅の途中でソーラーパネルを購入し、屋根に設置。発電した電力はsuaokiの『G500』ポータブル電源に充電できるようになっている。これによって、走行中以外にも充電することが可能になった。

 

VANLIFEを豊かにしてくれたアイテム

最近導入し、快適になったアイテムの1つが除湿器。バンの中は想像以上に湿度が高く、布団なども湿りやすくなっていたが導入によってかなり改善されたとのこと。ポータブル電源で使え、雨の日は2Lの水がたまるとか。ルーフテントも使うようになったのは最近で、寝られる場所の選択肢が広がった。インナーテントを取り付けるなど断熱を工夫している。


CASE 2
PEOPLE 鈴木大地さん
HOME 2003 Mercedes Benz Transporter T1N
Instagram daichi_suzuki.jp

大工の職能を生かした自宅&クルマの2拠点生活

このクルマに住み始めて3年目という鈴木大地さんは、店舗の内装などを手掛ける大工さん。都内の現場に通うことが多いが、郊外に住んでいた際、移動の時間を短縮したいと考えたことから住めるクルマを導入した。「通勤時間は渋滞もあるので、片道2時間くらいかかることもあったので、現場近くで泊まれればその分睡眠時間を削らなくて済みます」。そんなことを考えていた際に出会ったのがVANLIFE。海外のInstagramなどをチェックし、イメージを膨らませていたという。

ベース車として選んだのはメルセデス・ベンツの『トランスポーターT1N』。仕事道具を収めるスペースを確保しながら、リラックスできる空間を作るためにはこのサイズが必要だったとのことだ。「仕事後に休むための場所ですから、車内で立てることが必須でした。そうすると国産車には選択肢がほとんどない。そんなときに程度のいい中古車に出会えたので即購入しました」。

それからは技術を活かして内装をカスタム。「海外のVANLIFEの写真を見ていたので、内装は木にしようと始めから考えていました。見た目の質感にもこだわりたいので、素材選びにも時間をかけましたね。逆に設計図は描けないので、配置とかは現物合わせです(笑)」と鈴木さんは笑うが、コンロを置く棚の高さや内装の質感などはその道のプロならではの完成度。壁は断熱材の上にベースとなるベニアを貼り、その上から板を止めるという3重構造となっている。車内の振動にさらされているはずだが、作ってから3年を経ても全くトラブルもないというから完成度の高さは折り紙付きだ。 車体が大きいだけに、都内の移動では苦労しそうだが、意外なことに取り回しは良いという。「原宿辺りの狭い裏道も平気で通れますよ。立体駐車場には入れないので、その点は考える必要がありますが、都内の一等地に駐めればそこが住所ですから、普通ならとても住めないようなところで暮らせます(笑)」。仕事が終われば近くの銭湯に入り、一杯飲んでそのまま寝ることができるのも、この生活スタイルの魅力だという。心配になるのは駐車場代だが、都内の一等地でも夜間は上限が数百円という場所が多いだのだとか。銭湯が残っているところも予想以上に多く、泊まれるクルマさえあれば都心での生活は快適なようだ。

平日は現場近くで泊まり、週末は自宅に帰るという2拠点生活が基本だが、休日もクルマで出かけることも少なくないという。「友人に呼ばれて四国までキャンプしに行ったこともあります。そのときも泊まるのはこのクルマです。朝、後ろのトビラを開けて良い景色が広がっていると最高ですね。そういう景色を探して週末に出かけることもあります」。-5℃の山の中で泊まったこともあるが、断熱の効いた車内で羽毛布団で寝ているため寒さを感じることはなかったとか。逆に夏場はエアコンが付いていないので、車内で泊まるのは控えているとのことだ。

このクルマを見て、車内の改装を依頼されることも増えているという。「移動するモデルルームとしても役立ってくれています。走行距離が20万km近くになってきたので、新型の『トランスポーター』が気になっていますが、このクルマも修理に結構お金をかけているので愛着もあるんですよね」と笑顔で語る鈴木さんと相棒の2拠点生活はまだまだ続きそうだ。

 

仕事用具の収納とくつろげるスペースを両立

あくまで仕事に使うクルマのため、ラゲッジ部分には大きい電動工具などが収納できるスペースが確保されている。寝心地にこだわったというベッドは、その上に設置されている。観音開きのリアドアの内側にも工具を収納できるポケットが。このように、用途に合わせてレイアウトできるのも内装を自作しているからで、既存のキャンピングカーを購入してもこうはならない。内装は、仕事のあとにリラックスできる空間を目指し、木製にこだわって仕上げられている。


 

DIYでリノベ可能な住宅に住む

現在の住居は足立区の「いろどりの杜」というDIYでのリノベーションが可能な集合住宅。中庭部分に工房を持ち、そこで定期的に住人向けにDIYのレクチャーやワークショップを行っている。クルマの内装を請け負った場合も、この場所で作業をしているとのことだ。



 

大工さんならではの技術が光る内装

木材の素材感を活かした内装は、さすがプロと思わされる完成度。ログハウスの中にいるようなリラックスできる空間に仕上がっている。床の部分は土間をイメージし、土足のまま出入りできる作り。ソーラーパネルから充電できるサブバッテリーも搭載しているが、棚の中にうまく収められており、コンセントの配置などもプロっぽい。2000Wのインバーターも搭載していて、現場で電動工具も動かせるという。車内で使うコンロや食器などはアウトドアグッズを活用していて、スピーカーはカーオーディオから独立したかたちで設置される。


CASE 3
PEOPLE 赤井成彰さん
HOME 2002 MAZDA Bongo
Web https://nariakiakai.com/

自作したモバイルハウスで1年暮らして気付いたこと

2年前まで都内で大手玩具メーカーに勤める会社員だった赤井さんがモバイルハウスに住むようになったのは、都内の高額な家賃を節約したいと考えたことがきっかけだった。ゆくゆくはハワイに移住したいと考えていたため、その資金を貯めるのを目的にタイニーハウスやモバイルハウスに興味を持ったという。ただ、会社を辞めて滞在したハワイでは、体調を崩したり火山の噴火があったりで移住は一旦あきらめて帰国。そこで参加したモバイルハウスのワークショップで、自分の家を自らの手で作ろうと決意した。

とはいえ、それまでDIYで何かを作った経験はなかったというから、初めてのDIYが自分の家というのはかなり思い切った選択だ。貯金も底を突いていたため、製作のための費用はクラウドファンディングで集めたというのが今っぽいところ。それでも、自分の手で作るため材料費の70万円程度で済んだとか。キャンピングカーなどを購入するのに比べると、圧倒的に初期費用を抑えられること、外観や内装などを自分の好みに合わせて製作できるのがモバイルハウスの魅力だ。

製作にかかった期間は約3ヶ月。安く購入したマツダ『ボンゴトラック』の荷台に積み込み、赤井さんのVANLIFEがスタートする。「住民票を置いている実家のある金沢で車検を受けて出発しました。1年車検なので、一度その頃に帰ってくるという予定で」。暑い時期は北海道で過ごし、寒くなってきたら南へ向かう。そんな移動生活をしながら、全国で会いたい人に会うという1年だったという。「途中でモバイルハウスのワークショップを開催したり、イベントに出演したりもしました。日々、家ごと移動する生活は新鮮で楽しかったですね。色んな人と出会うこともできましたし」

そんなクルマとともに移動する生活の中で感じたのは、「平らなところで寝ること」の大切さだったという。「モバイルハウスの中は平らな床になっているんですが、クルマを駐める場所に傾斜があると家ごと傾いてしまいますから(笑)。そこで気付いたのですが、海や川、湖などの水辺には平らな駐車場が多いんです。寝る場所を探すときはGoogle Mapsで水色の場所を見つけるようにしていました」。

気ままな移動生活も楽しかったというが、そんな生活を1年続けた中で気付いたのは「移動するのは毎日でなくてもいいな」ということだった。「すごく景色の良い山の中に泊まっていたときに、ここ数日誰とも話していないことにハッとしたんです。どんなに景色が良くても分かち合う人がいないと物足りないなと。そんな経験から、僕のようなVANLIFEを送る人たちが長期滞在できる拠点を作ろうと考えました」。

そこから赤井さんは神奈川県相模原市の山の中に土地を見つけ、クルマを止められる平らなスペースと、炊事や仕事のできる共用スペースを備えた「モバイルヴィレッジぼちぼち」という拠点の構築に力を注いでいる。まだ、構築中の段階だが、すでにこの場所に集まってくるVANLIFE仲間も多い。全国でも同時多発的にこうした長期滞在できるVANLIFEスポットを作る動きが始まっているという。

とはいえ、赤井さんもずっとこの場所に留まると決めたわけではない。「夏は涼しくて良かったのですが、冬はかなり寒いらしいんですよね……。そうなると南のほうに行きたくなるかもしれません(笑)」

 

自ら製作した世界一落ち着ける空間

一から自分で作っただけに、このモバイルハウスは「世界一落ち着ける空間」だと語る赤井さん。こだわったのは、縁側のようなスペースがあることと、天窓から光を取り入れること。日が昇っている間は外光が入って、リラックスできる空間に仕上がっている。ソファにもなるマットを敷き、その上で寝袋に入れば気温がマイナスでも問題なく眠れるとのこと。折り畳み式のテーブルを出して、その上でコンロも使える構造だ。ウロコのような外板は1200枚あり、友人たちが切り出してくれたとのことで、このクルマの特徴になっている。




 

移動生活を快適にするアイテム

後ろが全く見えない構造のため、バックカメラを装着。これによって運転が格段に楽になったという。屋根の上にはソーラーパネルが設置されており、その電力をポータブル電源に充電している。使用する電力はこれだけでまかなえるとのこと。

 

クルマに住む人たちが集える拠点を構築中

1年間の移動生活を経て、構築している「モバイルヴィレッジぼちぼち」には、様々な人たちが集う。上の写真はホンダ『スーパーカブ』で引くリアカーハウスで仕事をしている漫画家の小栗千隼さん。下はホンダ『N-VAN』で移動する整体院「松友庵」を営む松山貴俊さん。移動する生活スタイルの輪は確実に広がっている様子。

  • Text増谷茂樹