手軽に“土鍋ごはん”実現する『かまどさん電気』の秘密を探る【伊賀焼・探訪記】

天保3年から伊賀焼の伝統を引き継ぐ長谷園とは?

ごはん好きのなかでは有名な土鍋がある。伊賀焼の炊飯土鍋『かまどさん』だ。ガスコンロに乗せたあと、湯気が吹き出してしばらくしたら火を止める。あとは20分蒸らすだけで、美味しい土鍋ごはんが炊けるのだ。そんな『かまどさん』で炊いたごはんの美味しさを場所を選ばず、より手軽に炊けるようにした『かまどさん電気』。2つの『かまどさん』の美味しさの秘密を知るため、伊賀焼窯元・長谷園を訪ねた。

「古琵琶湖層」の土が良質な土鍋を産む

京都から車で1時間、名古屋から1時間半ほど走った山間部、田園風景が広がるなかに『かまどさん電気』の土鍋を製造している伊賀焼窯元・長谷園はある。『かまどさん電気』の発売を約1カ月後に控えた1月末のある日。大きな壺に貯められた水も凍り、ちらちらと雪が舞い散る頃、『かまどさん』の故郷を訪ねた。

裏山から長谷園全景を望む。

ここ、伊賀焼の歴史は長い。発祥は今から約1300年前、奈良時代に窯が興されたと言われている。伊賀焼が発展したのはこの地で良質な陶土が採取できたことにある。伊賀の陶土は400万年前に生息していた生物や植物の遺骸が多く含まれる堆積層で「古琵琶湖層」と呼ばれる地層から産出される。この土を高熱で焼成すると遺骸の部分が燃え尽きて細かな気孔が数多くできる。この気孔が伊賀焼ならではの高い蓄熱性を生み出すのだ。また、耐火性に優れるほか、遠赤外線効果を発揮するため、食材の芯までしっかりと熱を伝え、美味しく料理できるというわけだ。

伊賀焼は長谷園の『かまどさん』をはじめとする様々な土鍋で有名だが、歴史を紐解くと、かつてはさまざまな焼き物を作っていた。

奈良時代から始まる初期には神具や日用雑貨が焼かれ、桃山時代には当時の伊賀国領主の指示により、古田織部などの指導の下に茶陶が焼かれていたという。

そして、長谷園は天保3年に誕生。時代に合わせて作る製品を変化させながら、2000年に手間なく美味しいごはんを炊ける『かまどさん』を完成。発売以来、売れ続けており、伊賀焼の良さを広めているのだ。

当主がお住まいの母屋も2014年より国登録有形文化財となった。

長谷園の歴史に刻まれたさまざまな建物や窯が残る

『かまどさん電気』について語る上では、『かまどさん』について触れないわけにいかない。そして『かまどさん』は長谷園の長い歴史が生み出したものだという。伊賀焼のふるさと、長谷園を訪れるとそれがわかる。

100年以上使われてきた長谷園の登り窯。16室に分かれた窯に下から順番に火を入れていく。日本国内に現存している16連窯はここだけだとか。2011年より国登録有形文化財に。

長谷園は築窯以来、伊賀焼の伝統と技術を現代まで継承してきた。長谷園の敷地内にはそんな歴史を記録するさまざまな施設が残されている。なかでも絶対に見逃せないのが国登録有形文化財としても登録されている「登り窯」だ。

これは天保3年(1832年)の創業時から昭和40年代まで実際に使われていた焼き窯で、山の斜面に沿って、傾斜を付けられた窯のこと。下から順番に火を入れていく構造となっており、熱が自然に上に向かうため、ひとつ下の窯に火を入れると、上の窯に効率良く熱が伝わり、火を入れやすくなるという仕組みだ。

当時は一度火を入れると、職人が交代で、20日間程寝ずの番をして薪をくべ続けたという。現在は工房の中にあるガス窯で多くの陶器や土鍋が焼かれているが、年に数回は登り窯近くにある現役の焼き窯で今も薪をくべて焼かれているという。赤松の薪で焼くことで、陶器に灰がかかり、伊賀焼ならではの紋様や色で彩ることができる。

粘土質の陶土に加え、燃料となる赤松が豊富だったことも伊賀焼の発展に繋がったようだ。

大正レトロの空間で休憩できる「大正館」。

もう一つ長谷園で歴史を感じさせる建物が大正時代に建てられた「大正館」だ。当時は事務などを行う本社機能を持った空間だったようだが、現在は来客者向けの休憩できる場所として解放されている。ここでは長谷園で焼いた、伊賀焼のカップでコーヒーが飲めるのだが、そのカップは持ち帰ることもできるのがうれしい。

工房では毎日多くの焼き物が作られている。

このほか広大な敷地の中には、陶土から鍋やお皿、カップなどを成形するろくろ場や、様々な加工と焼きを行う工場などがある。

現在長谷園では『かまどさん』に代表される機能土鍋を中心に、日常利用できる器など様々な製品を製造・販売している。

年に数回使っている4連登り窯。

そしてもうすぐ発売される『かまどさん電気』用の土鍋も、すべてここで作られている。製造工程の一部は機械化されてはいるものの、多くは手作りだ。上質の土を捏ね、成型して焼成するという行程は約200年前から大きく変わることはない。『かまどさん電気』の美味しさの秘密を求めて窯元を訊ねたら、そこにはモノ作りの原風景があった。

『かまどさん電気』のルーツ、炊飯土鍋『かまどさん』を知ってますか?

伊賀焼窯元・長谷園を有名にしたのが2000年に発売された炊飯土鍋『かまどさん』だ。人気の秘密はその簡単さと美味しさにある。それまでも土鍋でごはんを炊くファンは多かったが火かげんが難しく、焦がしてしまったり、火の通りが悪いなんてことも起きた。しかし、『かまどさん』なら沸騰してしばらくした後に火を止めるだけで美味しく炊ける。難しい火かげんを気にすることなく、それでいて甘みのある、絶品の食べ応えに炊けることで、累計80万個を売り上げた大ヒット商品なのだ。

火かげん要らずで吹きこぼれなく美味しく炊ける

長谷園
かまどさん三合炊き
公式通販価格:1万800円

吸水性の高い伊賀の土を使った炊飯専用土鍋。火が当たる部分は肉厚成型で、熱をしっかりと蓄える仕組み。二重の蓋により、おねばをごはんに戻しながら、吹きこぼれを防ぐ。他に一合、二合、五合用を用意。

 

『デジモノステーション』2018年4月号より抜粋。

関連サイト

かまどさん電気(シロカ)
伊賀焼窯元 長谷園