手軽に“土鍋ごはん”実現する『かまどさん電気』の秘密を探る【開発インタビュー】

『かまどさん電気』の開発を断ったってホントですか?

開発に4年以上がかかったという『かまどさん電気』。最初は積極的ではなかったという7代目当主長谷優磁さんと8代目当主長谷康弘さん、さらにシロカ副社長の安尾雄太さんに開発の経緯と『かまどさん電気』への思いを聞いた。

左側が試作段階の『かまどさん電気』の加熱部。そして中央が『かまどさん電気』用の土鍋。そして右が『かまどさん』。同じ3合用だがシルエットなどが異なる。

『かまどさん』ファンのため大手メーカーとは組まない

2000年に発売され、その便利さとおいしさで大ヒットとなった炊飯土鍋『かまどさん』。そして今年、満を持して発売される『かまどさん電気』。その開発には2つの物語が交差する。

オーブンやコーヒーメーカーなど、様々な調理家電を手がけるシロカには炊飯器の開発構想があった。まずは土鍋から研究しようと、日本各地の土鍋メーカーにアプローチするところから炊飯器開発は始まった。

「何軒か見てまわったんですが、決め手にかけるなと考えていました。そんなとき、担当から『一社断られました』と言われたんです。断る会社に興味がわき、早速アポを取って会いに行きました」(シロカ副社長 安尾雄太さん)

この断った会社こそ長谷園だ。すでに『かまどさん』で高い評価を得ていた長谷園では以前にも大手家電メーカーから炊飯器への協力を依頼されたことがあった。しかし、土鍋への考え方に合わないことが多く、断ってきたという。

「大手さんはIHヒーターを使って、プラスチックにしてという仕上りからの逆算。美味しさの追求じゃない。それならウチじゃなくていいでしょと断ってきました」(長谷園 7代目当主 長谷優磁さん)

長谷園にはすでに『かまどさん』を喜んで使ってくれている人がいる。そして、オール電化などで使えないという声も聞こえてくる。『かまどさん』をそういう人に使ってもらえる家電にする必要があった。

8代目が試作していた、『かまどさん』を使った電気炊飯器。熱源の周りに石綿を巻いて密閉する仕組み。残念ながらこれでは炊けなかったそうだ。

また、長谷園ではガスコンロの『かまどさん』を開発したあと、電子レンジでごはんが炊ける伊賀焼のおひつ『陶珍』やIHヒーター対応の土鍋なども産みだしていた。その開発の経緯でIH加熱は土鍋炊飯に向かないという結論に達していた。

「実はウチでも『かまどさん』の家電の開発はしていたんです。でもうまくいっていませんでした」(長谷園 8代目当主 長谷康弘さん)

シーズヒーターでの炊飯器開発が始まった

断られたからといって簡単に諦める安尾さんではない。7代目の言うとおり、IHヒーターではなく、シーズヒーターを使って『かまどさん』でごはんを炊く方法に挑戦することにした。まずは長谷園で研究していた試作品からテストをするが、熱量が足りずごはんは全く炊けない。

「シーズヒーターで炊くということは1万円ぐらいの安い炊飯器と同じ仕組みということです。家庭の電気では1200〜1300Wしか出せないという制約があり、それでは土鍋に熱が届かない。かといって密着度を上げていくと、今度は土鍋の熱で加熱部が溶けていく」(安尾雄太さん)

果てのない挑戦だった。光が見えたのは2017年の夏。密着させて熱を加え、蒸らし行程に入ったあとはファンを使って急速に冷やしていく、そんな構造を生み出した。長谷園も電気用に密着性を高めるため、土鍋の形状を最適化、陶土の配合も変えたという。中でも大変だったのが土鍋と加熱部との接合だ。土鍋は焼きの時に膨張するので5mm程度の大きさの違いが出る。しかし密閉率を高めるためには5mmの差は許容できない。長谷園とシロカの間で最後まで調整は続いた。

そして昨秋。『かまどさん』を生み出し、その味にこだわり続ける長谷園7代目も納得する『かまどさん電気』が完成した。それは安尾さんが長谷園をはじめて訊ねてから4年目のことだった。

『かまどさん電気』が完成し談笑する3人。開発の過程では意見の食い違いや、焼き物と精密機器の特性の違いにより、声を荒げる日もあったと言う。それでもシロカと長谷園双方の努力により『かまどさん電気』は誕生した。

 

『デジモノステーション』2018年4月号より抜粋。

関連サイト

かまどさん電気(シロカ)
伊賀焼窯元 長谷園