「努力は夢中に勝てない」。ビームス 土井地博の遊びゴコロあふれるワークスタイル|d.PEOPLE

ビジネスもオフタイムも隔てなく、遊びゴコロを忘れずに人生を楽しんでいるオトナたちに、遊びについてインタビューするこの企画。記念すべき第1回目は、“ビームスの顔”として多方面で活躍をされている、土井地博さんにご登場いただいた。
土井地 博/どいじひろし 1977年生まれ、島根県出身。大阪のショップスタッフを経て、メンズPR担当として上京。PR業務のほか、宣伝広報にも広く携わる。「フジロックフェスティバル」をはじめとする音楽イベントやアートイベント、出版物などの企画のほか、2017年10月からはラジオ番組のDJも務める。ビームスグループ全体の宣伝・販促を統括するディレクターとして活躍している。

Appleグッズのコレクションは日本一!?

――“ビームスの顔”として様々なメディアで土井地さんをお見かけする機会が多いのですが、改めてオンタイムのお仕事について教えてください。

土井地:肩書き的には宣伝広報統括部の部長ということで、社内の様々な部署の宣伝と販促部門、広告の取りまとめをしています。加えてコミュニケーションディレクターとして、ビームスの中と外を引き合わせて、情報や商品、話題といったものをそれぞれに提供する架け橋の役割もあります。それから、うちの代表(設楽洋社長)がアイデアマンで、あれやりたいこれやりたいというアイデアが次々に出てくるので、それを具現化するのも仕事のひとつですね。

――今日はオフタイムの過ごし方ということで、ハマっているコトやモノについて教えていただきたいと思っています。色々とお持ちいただいているようですが、ご紹介いただけますか?

土井地:まずは、企業がノベルティとして作っている鉛筆やボールペンですね。かなりの量があるので、その中の一部を持ってきました。このAppleの鉛筆はもう作っていませんし、珍しいものも結構ありますね。美術館や企業系のモノは、昔から集めています。
同じく企業系ですけど、このグーグルのフリスビーもシリコンバレーの本社でしか売っていないモノなんですよ。昔から企業ロゴとかフォント、タイポグラフィーが好きなんですね。

――そういった企業モノのグッズは、どのようにして集めているんですか?

土井地:仕事で企業や美術館へ行くことが多いので、行った先で探すという感じで。コンプリートしないと気が済まないということはありません。eBayで落としたいモノもないですし。行った先でのメモリーというのか、それを見たらその時のことを思い出せるレベルのコレクションです。

そんな集め方ですけど、企業モノではAppleグッズはもしかしたら日本で一番持っているかもしれないですね。マグカップ、パーカ、Tシャツ、キャップは非売品のニューエラのものや、他にも水筒、便箋、色鉛筆、社内食堂の最初のメニューなんてのもあります。Appleの人も驚いていましたよ。といっても、これも執着があるわけではなく、「これ欲しい!」っていう人には、あげたりもしました。

――何かに絞るということではなくて、「集める」ということそのものが好きということでしょうか。

土井地:そうですね、その感覚が強い。集めるものも直感ですしね。スノーボールとかキーホルダーも集めた時期があります。スノーボールは相当な数を持ってます。でもあれ邪魔なんですよ、意外と。あとは、リンゴの置物もすごい数あります。素材も色々で、大理石、ガラス、木製、真鍮、素焼きっぽいものとか、とにかくたくさん。奥さんには、「これ、どうするの?」って半ば呆れられています(苦笑)。

マニアなスタッフたちを束ねる監督的な役割

――いろんなモノを集めてしまうんですね。そういうコレクター気質の人は、ビームスでも珍しい存在ですか?

土井地:いや、それが僕だけじゃないんですよ。本当に十人十色で振り幅がすごい。僕がどうというより、みんなで高め合っているような気がします。一例を挙げるならば、バンダナのコレクターは世界のナンバー1と2が社内にいます。1780年代アメリカのジョージ・ワシントンの選挙活動で配られたノベルティのバンダナとか持っていますからね。そういうスタッフがたくさんいますから、僕らは日々勉強させてもらってます。

――そういうスタッフの方々の日常が切り取られて1冊の本にまとめられているのが、宝島社『BEAMS AT HOME』シリーズの書籍なんですね。

土井地:以前、ある雑誌の自転車特集で、社内スタッフから誰か出そうというときに、普通なら社長とかプレスとかバイヤーが誌面に出がちですけど、社内から広く募ったんです。そしたら、自薦他薦問わずバンバン挙がってきて(笑)。こんなにいるんだと。これはちゃんと座標軸を切ってジャンル分けして集めたら、すごいファイリングになるだろうと思いました。それをまとめたのが『BEAMS AT HOME』なんです。

――ご自身のコレクションもそうですし、社内にもジャンルを問わずコレクターや、その道に精通したスタッフの方がたくさんいる。そのことが、社内の中と外を繋ぐコミュニケーションディレクターとしての土井地さんのお仕事に、何か影響を与えていますか?

土井地:匠からサブカルとか、コアな部分とマスな部分の両方の振り幅があるから面白いと思っていて、それが“ビームスっぽさ”に繋がるところはありますね。そんな中で、僕自身は野球に例えるなら10年前は3番か4番かわからないですが、そういうポジションにいました。でも今は、彼は守備がうまいとか、肩が強いとか、ホームランを打てるとかを踏まえて座組みを組むのが社内で一番僕が向いているのかなと。そうやってチーム編成を整える監督のような立場で、オーナーや球団代表と話しをして、ゲームメイクしていくという仕事の仕方かなと思います。

何かに夢中になる方法とは?

――ちなみに、オンとオフの切り替えはどのようにしているのでしょう。

土井地:正直、僕はオンオフの境界がないんですよ(笑)。常にオンオンです。唯一あるとしたら体動かすこと。週1、2回はジムに行くので。でも、ジムでも着るものも聴く音楽も日中とあまりテンション変わらないので、ほとんどオンオンですね。

でもオフタイムの趣味ということで言えば、食べ歩きと町探索は趣味ですね。もともと地理が好きで、小さいときから親に山登りに連れていってもらって中学の頃には国内の3000m級のベスト10を制覇しました。その頃から、全国を旅する際には紙の地図をずっと眺めていたので、それが影響して地理が好きになったんです。これが仕事にも活きていて、 “2冊目のガイドブック”というコンセプトでビームスから本を出しています。要するに普通のガイドブックに載っている王道のスポットではない、そういう本に一切載らない店や場所を紹介しているんです。1冊目が沖縄で、その後、神戸も出しました。あと最近はフリーマガジンで別府の本も出しています。

――まさに趣味であり、好きなことが仕事になったということですね。

土井地:よく社長の設楽と話すのは、“努力は夢中に勝てない”ということ。どれだけ勉強して、どれだけ情報があって、マニュアルを覚えても、すごく夢中な人には勝てないと思うんです。だから、大切なのはいろんなことに夢中になるということなのかなと思います。

――夢中になるとか、好きになるための方法なんてありますか?

土井地:僕自身、10代の頃とかは好きな音楽もすごく偏っていて、いわゆる邦楽とかはダサいと思ってました。でもあるとき気づいたんです。売れているものには、必ず理由があるなって。例えば、山下達郎さんがなぜ売れているかって、よくよく調べると、達郎さんって日本のレコードはほとんど持っているというほどのレコードコレクターです。そういう人が作る曲って、単にリズムや歌詞がいいとかだけではない、奥深い面白さがある。だから、こだわりを持って極める楽しさもアリですが、もうちょっと間口を広げて、売れている理由を見つけに行くと面白いし、好きになるキッカケもあると思います。

インタビューを終えて

仕事と好きなことの線引きを明確にせず、好きの延長線上にビジネスがある。社内の情報を世の中に向けて発信する急先鋒として、マルチに活躍する土井地さん。そのワークスタイルには、オンオフの切り替えなしに、いつでも遊びゴコロを忘れない自由さが垣間見えた。まずは、自分の中にある「夢中」に目を向けてみるのもいいかもしれない。