このマシン、凶暴につき……KTMの『1290 SUPER DUKE R』走りにシビレる

KTMは「READY TO RACE」を標語に公道モデルでもかなりトンガッた性能のマシンをリリースしているオーストリアのメーカーだ。元々はオフロード車を得意としており、モトクロスやラリー、エンデューロのカテゴリーで数々の好成績を収めてきたが、近年ではオンロードでも高性能のマシンを次々に投入している。

そんなKTMのストリート向け車両の頂点に位置するのが『1290 SUPER DUKE R』。獰猛なモビルスーツを思わせるようなスタイリングが印象的だが、それ以上に中身のスペックは過激だ。エンジンは1301ccのV型2気筒で、最高出力177PS。195kgという軽量な車体との組み合わせは、各メーカーのスーパースポーツに勝るとも劣らないパワーウエイトレシオを実現している。

非常に特徴的な『1290 SUPER DUKE R』のライト。ライトの枠部分が縁取られるようにLEDで光る有機的なデザインとなっている。
車体を押さえ込んで走るアップライトなハンドル。
75°の狭角V型エンジンは、1301ccで177PSとハイパワーだがスリムでコンパクトだ。

跨がってみると、車体はかなりコンパクト。サイズ的には他社の400ccクラスと同等と思えるほどスリムでホイールベースも短い。141Nmという最大トルクを発揮するエンジンがこんな車体に搭載されているのだから、アクセルを全開にしたらどこかへ飛んでいってしまいそうだ。

エンジンパワーに対して車体が軽量・コンパクトなため、加速は俊敏。アクセルを開けた瞬間に弾けるようにダッシュする。

実際に走り出せば、そのパワーは過激の一言。4気筒のスーパースポーツなら、エンジンの回転が上昇していくに従ってパワーも盛り上がってくるものだが、大排気量の2気筒エンジンはトルクの塊のように、アクセルを開けた瞬間に弾けるような加速が味わえる。

走行モードは穏やかなほうから「レイン」「ストリート」「スポーツ」「トラック」の4種類。「スポーツ」でも十分すぎるくらいパワフル。

「こんなの、とても全開にできない……」と思いきや、少し加速に目が慣れてくるとだんだんアクセルを開けるのが楽しくなってくる。“フレンドリー”とはとても言えない過激な特性だが、意外なことに扱いやすい側面も持っているのだ。

オレンジとホワイトに塗り分けられたフレームはデザイン上のポイントにもなっている。剛性は高くしなやかな特性を併せ持つ。
サスペンションは前後ともWP製。路面をしっかり掴んでくれるような特性で、扱いやすさに一役買っている。

その要因は、ハイパワーで高トルクのエンジンをしっかりと受け止める車体と足回りにある。まず、フレームだが、鉄製のパイプをはしご状につなぎ合わせた独特のトレリス形状が採用されている。このフレームが高剛性ながらしなやかな特性を持つので、圧倒的な加速のなかでもゴツゴツしすぎず、路面からのショックをいなしてくれ、乗りづらさを感じることがないのだ。

試乗して、最も感動したのがフロントのブレーキシステム。ブレンボのラジアルマウント式で、絶大な効力とコントロール性を両立する。
マスターシリンダーもブレンボのラジアル。指先でフロントタイヤの接地感を調整できるような操作性を有する。

そして、もう1つは素晴らしく効きが良く、コントロール性にも優れるブレーキ。ホイールベースも短く、キャスターの角度も立った車体にレーシングスペックのブレーキを組み合わせているので、試乗前は「フルブレーキを掛けたら前転してしまうのでは?」と思っていたのだが、実際に乗ってみると高速からのハードブレーキングでもとてつもなくコントロールしやすい。確かに、強めにブレーキを握ると、ほぼフロントタイヤの1輪だけで車体を支えているかのような挙動になるものの、指先で緻密に制動力をコントロールできるので、その状態でも不安感はゼロに近い。

かなりおっかなびっくり乗っているのだが、それでもスゴく曲がる。しかも、コーナリング中の安定感も高い。

ちなみに、フロントへ荷重がかかった状態で車体を傾けると、スゴい勢いでマシンの向きが変わる。コンパクトなホイールベースと、エンジンの上に乗っているような前乗りの乗車ポジションが効いているのだろうか。確かに、最近のレーシングマシンはライダーの乗車位置が前寄りで、フロントから曲がって行くような特性を持っていると聞くが、まさかストリート向けのネイキッドマシンで、その特性を再現するとは……。

実際乗ってみてわかったのはこのマシンの過激な性能を公道でフルに引き出すのは不可能だろうということ。ただ、短い試乗時間でもその一端は確実に感じることができた。トンガッた性能を持ちながら、それをエントリーユーザーでも感じられるよう、上手くチューニングされている。それもそのはず、実はこのバイク、アメリカ・コロラド州で開催されている「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」という公道を閉鎖して4300mの山を駆け上がるレースで、コースレコードを樹立して優勝しているのだ。しかも、ライダーのクリス・フィルモアはこの年が初参戦。初めて乗るコースでも安心してアクセルを開けて行けるような特性だからこそ、こうした成績を収めることができたのだろう。

こちらは、その「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」でコースレコードを記録した際の映像。ガードレールもなく、コースアウトしたら崖下……というシチュエーションでの全開走行が手に汗握る(特に3分10秒過ぎの崖に向かってテールスライドしていくシーンが……)。

なお、扱いやすいとは言ったが、過激なスペックのマシンであることは間違いないので、試乗を終えた後はかなり冷や汗混じりの汗をかいていた。普通のマシンでは飽き足らず、汗をかくような走りを味わいたいというライダーは、ぜひともチャレンジしてみてほしい。

関連サイト

1290 SUPER DUKE R 2018(KTM)