磨き抜かれたボバースタイル——トライアンフ『ボンネビル ボバー ブラック』には革ジャン&エンジニアブーツが似合う

Triumph(トライアンフ)——現在の社名はTriumph Motorcycles(トライアンフ・モーターサイクル)——と言えば、イギリスの名門バイクブランド。カフェレーサー的なマシンをイメージする人が多いかもしれないが、近年、“ボバースタイル”と呼ばれるアメリカン・テイストのモデルが人気を集めている。

今回は、ビンテージなカスタムマシンのように仕上げられたボバースタイルの『Bonneville Bobber Black(ボンネビル ボバー ブラック)』に試乗してみたので、その魅力を紐解いてみたい。

「ボンネビル ボバー」シリーズの標準タイヤは19インチサイズだが、『ボンネビル ボバー ブラック』では前後共に16インチへと小径化されたタイヤを装着する。フロント310mmのダブルディスクブレーキだ。
フラットなバーハンドルにバーエンドミラーという組み合わせ。カスタムマシンのような雰囲気を醸し出している。

ところで“ボバー”というのは、1940〜50年代のアメリカで流行したカスタムスタイルの1つ。同じくカスタムのスタイルとしてメジャーな“チョッパー”に対して“速さ”を重視している点が特徴だ。ルーツはその当時のアメリカで盛り上がっていたドラッグレースなどに参戦していたマシンということになる。アップハンドルを特徴とするチョッパーに対して、ボバーはハンドルだけでなく車体全体を低く抑えたスタイル。『ボンネビル ボバー ブラック』でも、低くフラットなハンドルに加えて前後16インチのタイヤ、バーエンドに装備したミラーなどで車体全体が低い仕上がりとなっている。

フレームに直接マウントされているかのようなリアホイール、そしてそれに沿うようなフェンダーもボバースタイルの定番だ。
リアサスペンションはシート下に装備。薄く見えるシートや、斜めにスラッシュカットされたマフラーも雰囲気を盛り上げてくれる。

「ボンネビル ボバー」シリーズ最大の特徴が、リジッドフレームにフェンダーを直付けしているように見えるリア周りだ。ちなみにリジッドとは、リア・サスペンションがなく、フレームで直にホイールを支える構造のこと。ボバースタイルが流行った当時は、リア・サスペンション自体が存在していなかったため、現代のカスタムマシンでもサスペンションを取り払ってリジッド構造を採用したものが多い。「ボンネビル ボバー」シリーズではサスペンションを備えるものの、リジッド構造のようにしか見えない点が驚きだ。

実はトライアンフのバイクは、当時のアメリカでスピード・ジャンキーたちに愛され、多くのマシンがボバースタイルにカスタムされて走り回っていたのだという。そもそも「ボンネビル」というネーミングも、伝統的にバイクの最高速チャレンジが行われていたアメリカ・ユタ州ボンネビル・ソルトフラッツに由来する。1956年に当時の世界最速となる時速345kmを記録したことを記念して発売されたマシンがシリーズのルーツ。アメリカでの栄光ある歴史をオマージュしたのが「ボンネビル ボバー」シリーズなのだ。

空冷のように見えるバーチカル(直立)2気筒エンジンだが、実は水冷式。ライドバイワイヤ、トラクションコントロールなど、最新のスペックを備える。
燃料噴射も電子制御のインジェクションだが、古いキャブレター風のデザインに細かいこだわりが感じられる。

メーカー自らが手掛けたボバースタイルのカスタムマシンといった趣のある『ボンネビル ボバー ブラック』だが、もちろん単にクラシカルな雰囲気を纏っただけのマシンではない。パワーユニットや電子制御など、中身は最新スペックで仕上げられている。トライアンフの伝統に則った直立したシリンダーの並列2気筒1200ccエンジンは空冷に見えるフィンが刻まれるが、実は最新の水冷式。最高出力77PSを発揮する。現代のマシンらしく、トラクションコントロール機構も備えているので、滑りやすい路面でも恐れることなくアクセルを開けられそうだ。

真っ直ぐ伸びた腕や、シート下のすき間など、カスタムマシンを駆っているようなルックスは目立ち度も高い。

実際に跨がってみると、ボバーの文脈に沿って、腕が真っ直ぐに伸びた低いライディングポジション。薄っぺらいカスタムパーツのように見えるシートはクッション性も良く、お尻が痛くなるようなことはない。そしてアクセルを開けると、トライアンフらしい弾けるような鼓動感の伴った加速を味わわせてくれる。「ボンネビル ボバー」シリーズに合わせ、中速域の加速重視にセッティングされたエンジンが一役買っているようだ。

低い姿勢で地を這うように曲がっていく姿には独特の迫力がある。ホイールベースが長いのでコーナーリング中の安定性は良好。

ロー&ロングな車体はコーナーが曲がりにくそうなイメージだが、実際には曲がりづらさを感じることはなかった。確かに深く寝かすようなコーナーリングをしようとすると、ステップを擦ってしまうが、そもそもコーナーを攻めるような性格のバイクではない。街中や高速道路を普通に走るのであれば、気にする必要はないだろう。

そして、立ち上がりで力強く加速していく感覚は爽快そのもの。カウルがないためスピードを出すと風圧が掛かるものの、低いライディングポジションで風を切って走るのはむしろ気持ちがいい。上体が起きすぎないポジションなので、体を持っていかれるほどの風圧を感じないのもポイントだ。ビンテージなカスタムマシンのテイストを最新技術で実現した『ボンネビル ボバー ブラック』。革ジャンにエンジニアブーツで、全身で風を感じながらスピードを楽しむのが正しいスタイルだろう。

関連サイト

Bonneville Bobber Black(Triumph Motorcycles)