SF映画のような近未来的デザイン。早すぎたスマホ『Pogo』を今こそ再評価

今月のヘンタイ端末はこれだ!

Pogo Technology
Pogo
販売価格(当時):約5万4000円(299ポンド)

近未来のデザイン使いやすいUI搭載
時代が設計思想に追いつかなかった

まだスマートフォンという言葉もなかった2001年に、突如世の中に現れたのが『Pogo』だった。タッチパネルを備えたPDAは世の中にあったものの、単体で通信できるスマートフォン相当の端末はほんの一握りしかなかった。しかもそれらの製品は画面サイズが小さく、ギザギザの目立つアイコンが表示されているなど、見た目のいいものとは言えなかった。

『Pogo』は当時としては大型な約4インチのディスプレイを採用。解像度は320×480ピクセルで基本アプリを3×3のタイル状に並べた、現在のスマートフォンを彷彿とさせる見た目をしていた。メールやWEBブラウジング、メモリーカードに入れた音楽の再生、内蔵ゲームなどができ、アプリが追加で入らないという点以外は、スマートフォンとそう変わらないことができたのである。画面内のデザインも美しく、おそらく2007年にiPhoneが登場する以前のデバイスとしては、最も美しいユーザーインターフェース(UI)を持った製品だった。

中身が美しいだけではなく、外観もぶっ飛んだデザインになっている。長方形の四隅をそれぞれ角のように伸ばし、そのフォルムはSF映画に出てきてもおかしくないだろう。しかしこれはたんなるデザインではなく、片手で持った時に手のひらにフィットし、落としにくくなるというメリットがある。また、本体を落としてしまっても、角の出っ張りが衝撃を吸収し画面が割れにくくなっているのだ。さらには角にアンテナを内蔵し、電波感度も高めている。

このころの端末は画面を指先でタッチして操作することはできず、スタイラスペンを使う必要があった。『Pogo』のペンは右下の角に内蔵され、伸び縮みする細長いピンのような形状をしていた。このペンを使って画面をタッチする操作は、まるで未来の端末を使っているように見えたに違いない。

『Pogo』はイギリスで販売され、初年度に5000台が売れたという。WEBサービスの登録者は1200人で、残りのユーザーはゲームや音楽プレイヤー、そして通話端末として使っていたようだ。それもそのはずで、『Pogo』が対応していたのは2G回線を使った高速データ通信だったが、当時はまだ料金が高く毎月の支払いは数千円かかったそうだ。本体は299ポンド(当時)と安めに抑えつつも通信キャリアとの契約が必須で、単体で買っても使うことができなかった。

後継モデル『nVoy』も開発されたが、ユーザーが増えなければ新製品を出す余裕はなかった。『Pogo』は結局2年間販売されただけで市場から撤退してしまったのだ。コンセプトは優れていたものの、通信回線の遅さとランニングコストの高さが販売の足かせになってしまった。また、近未来的な本体デザインも異色の存在すぎたかもしれない。

とはいえもしも『Pogo』が大ヒットしていれば、iPhoneを含む今のスマートフォン業界そのものが大きく変わっていたに違いない。そう思わせるほど『Pogo』は2018年の現代でも十分通用しそうな製品なのだ。

残念ながら、手元にある製品はバッテリーが経年劣化してしまい、本連載では電源を入れた形で写真を撮ることができなかった。ぜひその画面は“Pogo Technology”と画像検索して、画面内のデザインを確認してほしい。

山根康宏(やまねやすひろ):香港在住のジャーナリスト。世界の携帯電話事情を追い求め、1年の約半分を海外で過ごす。携帯電話1500台、SIMカード500枚以上を所有するコレクターでもある。

『デジモノステーション』2018年8月号より抜粋。