アップルマニアのm-flo ☆Takuが読み解く今年のWWDC。速度アップの裏に秘めた狙いとは?

m-flo ☆Takuのare you Apple holic ?

音楽界きってのガジェットマニアと称される☆Taku Takahashiが、アップルの話題をディープに語る連載。
6月4日に開催されたWWDC 2018では新製品発表といった派手なトピックスはなかったが、その内容に☆Takuは強い興味を持ったという……。

地味だけど、やるべきことをやったWWDCでの新発表

──では、今回はWWDC(☆1)の発表内容について、特に大きなiOSとmacOSのアップデートについて、感想を聞かせていただければ。まずはiPhone、iPad用の「iOS 12」についてお願いします。

最大の目玉となる速度アップについては、素直に素晴らしいと思います。昨年は、iOSが古いiPhoneの速度を落としていたことで批判されましたから。ただ、僕はどうしても、アップルが今になってなぜこういったことをし始めたのかを深読みしてしまいます。

☆1 WWDC

例年6月に行われるアップルの開発者向けイベント。冒頭の基調講演では次世代OSの概要が紹介される。基本的にはソフトウエアの発表が中心だが、かつては初代『iMac』など、伝説的ハードウェアが発表されたことも。

──確かに速度アップするということは、古い端末の寿命が延びるということですから、アップル的にはおいしくない話ですよね。昨年まではむしろその逆をやろうとしていたわけですし……。なぜでしょう?

僕はこれがアップルがそう遠くない未来に、また、途上国向けの超廉価モデルを出す予兆なのではないかと考えています。確かにそれによって買い換えサイクルが長くなる恐れはあるのですが、それよりも新興市場で新しい顧客をつかむことを重視したのではないかと。

──『iPhone 5C』の時は、比較的上位機に近い高性能でしたが、それゆえに値段もそこそこで結局、途上国で売れなかったという失敗をしてしまいましたからね。2〜3世代前くらいのスペックに落として、中国製格安スマホに迫る価格を追求するというのはありそうです。

個別の機能に言及すると、ARKit2(☆2)は、発表された瞬間にAR開発者が苦い顔をしただろうなと思いました(笑)。ものさしアプリなど、これまで一所懸命に作ってきたアプリが一瞬でOS基本機能に組み込まれてしまったわけですから……。ただ、作った人はかわいそうですが、これによってARがより実用的に進化していくことを考えると仕方のないことなのでしょう。

☆2 ARKit 2

アップルのAR(仮想現実)プラットフォーム最新バージョン。顔認識精度向上や複数名での空間共有などといった機能強化や、AR向け3Dオープンフォーマット「usdz」の発表など、実用化に向けて大きく進化した。

──今回のアップデートで、いよいよARアプリが本格化していくと期待されていますが、☆TakuさんはARがどんなことに使われていくと思いますか?

気になる家具をARで自分の部屋に配置してみるとか、まずはECの分野で活躍しそうな気がしています。もちろん、それ以外にも様々なイノベーションを引き起こしていくでしょう。

──ほかに「iOS 12」で気になる機能はありますか?

FaceTime(☆3)が最大32名までの同時ビデオ会議に対応したのが気になっています。僕も海外とのやり取りに使っているんですが、国土の広いアメリカではビデオ会議のニーズがすごく大きい。こうしたサービスは既に存在していますが、話者の顔が大きく表示されるなどといったアップルならではのUIが素晴らしい。そのほかにも様々な機能追加がされていますが、それで速度が遅くなっていない、むしろ速くなっているというのだから文句はありません。私は評価しています。

☆3 FaceTime

今回の最大の目玉は、32名までの同時通話が可能な「グループFaceTime」。新しい「Memoji」アプリを使って、オリジナルアバターを作成し、それをかぶり物のように顔に合成して通話するといったことも可能となる。

──「macOS Mojave」についてはいかがですか?

ダークモード(☆4)が最高です(笑)。いや、真面目な話、寝る前に使う時には画面を暗くしたいし、何よりDJプレイ中は光が明るすぎないようほうがいいので、思っている以上に実用性のある機能。あと、将来的にiOSのアプリを動かせるようにするというのも個人的には歓迎です。例えば、インスタのアプリはMacでも使えるようにしてほしい。ほか、これまでスマホに持ち替えてやっていたちょっとした作業をMacの画面上でできるようになったら便利だろうと思います。

☆4 ダークモード

iPhone向けにはiOS 11で導入済みの、UIのカラーリングを黒基調にする機能。実は現在のMacでもメニューバーとドックはダークにできるが、macOS Mojaveでは、ウィンドウの地色なども含め、全てを暗くすることができる。

──実現するのは来年以降のようなので、今から楽しみにしておきたいですね。ちなみに今回の発表会、いつものように採点すると何点になりますか?

82点。やるべきことをきちんとやった発表内容には満足しています。ただ、プレゼンテーションにサプライズが足りない。かつてのステージ上にビル・ゲイツが現れた時くらいの驚きがほしい(編集部注:1997年、スティーブ・ジョブズのアップル復帰後初となる基調講演において、宿敵・マイクロソフトとの提携が発表。ビル・ゲイツが衛星通信で挨拶した)。開発者向けイベントなのでそんなものはいらないという人もいるでしょうが、それでもやっぱりお祭り感がほしいな、と。

──次のイベントに期待しましょう。次は新世代iPhoneの発表イベントですかね?

いや、その前にMacBookをアップデートしてほしい。さっき、iPhone廉価版の話をしましたが、それはMacにも言えること。今どきPCに10万円も出したくないという人たちに向けた、より低価格なMacBookを一日でも早く投入すべきだと思っています。

☆Taku Takahashi(m-flo,block.fm)/音楽家、DJ。1998年にVERBALとm-floを結成。m-floデビュー20周年となる2018年は、オリジナルメンバーのLISAが復帰し、3月に「the tripod e.p.2」をリリースした。7月にはアメリカ・ロスでの公演、8月には『FUJI ROCKFESTIVAL 2018』への出演も発表。個人では加藤ミリヤ、MINMIなどのプロデュースを務め、テレビドラマ『信長協奏曲』『人は見た目が100パーセント』などの劇伴を担当するなど、その活動は多岐に渡っている。自身が運営するダンスミュージック専門インターネットラジオ「block.fm」は、開局から6年目の今も音楽の新たなムーブメントを発信し続けている。

『デジモノステーション』2018年8月号より抜粋。