ティーバーテンダーに聞く!ゼロから始めるおいしい日本茶講座【日本茶レボリューション】

これまでの常識を覆す、新しくて深淵なる“日本茶”の世界
【日本茶レボリューション】

ペットボトルの日本茶が登場して今年で28年。自販機には必ずといっていいほど日本茶があり、もはや“自分で淹れる”のではなく、“買う”のが当たり前 ———— もしかすると……自分で淹れるどころか、親が淹れている姿も見たことないなんてヒトもいるかも。時代とともにライフスタイルが大きく様変わりし、あれこれ便利になったはいいけれど、「湯を沸かし、ゆったりとした気持ちで日本茶を淹れ、それを憩いながら飲む」という時間が失われてしまっているのでは? だからこそ、そんな時間と様式を取り戻そう……というのではなく!(いや、それもあるが)今、“新たな魅力ある嗜好品”として日本茶への注目度が高まっている。茶葉の選び方、抽出方法、そしてそれらをどうアピールするか? そのあたりがなんとも斬新で好奇心をくすぐられてしまうのだ。だが、そこには代々受け継がれてきた、真摯な茶葉づくりがあってこそ!まさに温故知新でレボリューションな“ジャパニーズ・ソウルティー”こと日本茶ライフ、はじめませんか!

ティーバーテンダーが教える日本茶講座

Part6 最後の一滴においしさが凝縮されている日本茶の極意

日本茶のおいしさや、生産の背景がわかると、いよいよ“自分で”おいしく淹れたくなってきた!そこで日本茶の魅力を伝えるプロに基本の技&知識を伝授いただいた!

【教えてくれる人】
松本貴志さん:カネ十農園・ティーバーテンダー

お茶づくりに魅了され、バーテンダーから茶師に。お茶を深く味わうためのアイデア豊富。ダンサーの顔も持つ。

Q 日本茶にはどんな種類があるの?
A 主にこの12種類。

⚫︎煎茶
茶葉を摘んで、すぐに蒸すと発酵が止まる。その後、揉みながら乾燥させた緑茶の一種で、もっともよく飲まれているお茶。

⚫︎深蒸し茶
煎茶の蒸し時間=30~40秒の倍の時間をかけて生茶葉を蒸したお茶。渋みが抑えられ、葉が細かくなるので濃い緑色に。

⚫︎玉露
新芽の開きはじめ、摘むまでの20日間ほど、茶園を覆って陽に当てずに栽培。渋みより旨みが豊富になった高級緑茶。

⚫︎玄米茶
水に浸して蒸した玄米を炒り、同量の煎茶と番茶を加えたお茶。炒り玄米の香ばしさが特徴。カフェインが低く、健康的。

⚫︎焙じ茶
煎茶、番茶、茎茶などを強火で焙煎した(焙じた)お茶。淹れると茶色に。カフェインが煎茶の半分で、カラダにやさしい。

⚫︎粉茶
煎茶の製造過程で茶葉を葉と茎に切り分けるときの「粉」を集めたもの。お湯に溶けないため網目の細かい茶こしで飲む。

⚫︎茎茶
煎茶や玉露の仕上げ過程で、新芽の茎だけを集めたお茶。とくに玉露の茎は、「かりがね(雁が音)」と呼び、珍重される。

⚫︎抹茶
玉露と同じく遮光して育てた茶葉を蒸し、揉まずに乾燥する。茎や葉脈を除いたのが碾茶で、これを石臼で挽いたもの。

⚫︎粉末茶
煎茶を粉末にしたもの。インスタントティーやティーバックに使用。水に溶けない粉茶や、抹茶とはまったくの別物。

⚫︎番茶
煎茶と違い、若葉でなく成長した茶葉を摘んだもの。摘採時期・品質・地域などが日本茶の「番外」の意味ともされる。

⚫︎かぶせ茶
玉露のように茶園を覆うが、期間は1週間程度。日光を遮断して新芽を育てるため、旨みを増した濃い緑色のお茶になる。

⚫︎芽茶
煎茶や玉露の仕上げ工程で、芽の先の細い部分を採ったお茶。一番茶・二番茶などの高級茶から選別され、旨みが豊富。

Q 代表的な品種を教えて?
A なにはなくとも、やぶきた!


お茶の木はツバキ科の多年生植物で、緑茶、紅茶、烏龍茶もすべて同じ木の新芽を摘んで加工している。緑茶の品種は約60種以上あるなか、圧倒的にシェアを占めるのが「やぶきた」で、なんと全体の8割も!

Q シングルオリジンってどういう意味?
A 単一農園の単一品種。

ひとつの農園によるひとつの品種のみでつくられた茶のこと。元来、宇治や狭山など産地の名が付いているため、一箇所の農園の茶葉だけでできているかと思いきや、複数の農園や品種の茶葉をブレンド(合組)しているのが一般的なのだ。

Q ズバリ、おいしく淹れるコツは?
A 茶葉の質、温度、時間の3つ!

日本茶は温度によって浸出する香味成分が異なる。渋み成分のカテキンは80℃以上、旨み成分のアミノ酸は50℃以上でとけ出すため、茶葉に応じて温度帯を変えよう。茶葉の分量、抽出時間は、茶葉のパッケージ通りに!

Q どんなお茶も淹れ方は同じ?
A 手順は同じ。種類によって湯の温度を変えて。


「茶葉の分量」「適した温度」「正しい抽出時間」———— この3点をきっちり抑えれば失敗はなし。先述したが「温度」はおいしさの決め手。沸騰したばかりの高温はNGで、湯沸かしポットから直接、急須に湯を注ぐことも避けよう。

基本の道具として
1.温度計 2.スケール(なくても可) 3.湯のみ
4.茶さじ(ひとさじ分の量を把握しておくといい) 5.茶葉 6.ケトル 7.急須
カネ十煎茶特選茶園

Q 水にも凝ったほうがいいの?
A 軟水がおすすめ。

「カネ十農園表参道」で使用される茶器のひとつ。急須は、無形文化財に指定されている「玉川堂」に別誂えをした松本さんオリジナル。湯のみと茶托は「マルナオ」による紫檀でできたものだ。

日本茶は旨み・渋み・苦みのバランスを楽しむもの。硬度が高いと苦みが抑えられてしまうので「軟水」を。日本の水はほぼ微酸性の軟水のため、水道水でも問題ない。市販のミネラルウォーターもいいが、外国産の場合はカルシウム・マグネシウムなどを多く含む「硬水」のため、使わないほうがいい。静岡県でつくられた茶葉なら、静岡県の同じ土壌の水を使うとベスト。

煎茶の淹れ方

1.

茶葉を用意。湯150ccに対して、煎茶は6g程度(茶さじ1杯分)。

2.

沸かした湯を急須に注ぎ、急須を温める。煎茶では温度は80℃前後で。

3.

2の湯を器に注ぎ、温める。

4.

急須に茶葉を入れ、3の湯をすばやく入れ、蓋をする。

5.

40秒経ち、茶葉がふっくらしたら器に注ぎ、最後の一滴までしっかりと注ぐ。

焙じ茶のコツ

茶葉6g、湯160ccで。焙じ茶は旨み・渋み成分が少ないため、温度は90℃と高温で香り立ちよく淹れて。蒸らし時間は30秒と、煎茶よりやや早めに。
玄米茶のコツ

茶葉6g、湯160ccで。玄米茶の場合、玄米と番茶、煎茶の割合が均等になるように。温度は85℃、蒸らし時間は35〜60秒。香ばしさを出すなら長めに。

Q 茶葉はどうやって保管すればいい?
A 湿気を避けること。密閉できる容器がベスト。

日本茶は、温度や湿度、空気や光などの影響を受けやすく、劣化しやすいため、なるべく少量単位で購入し、2週間〜1カ月程度で使い切るようにしよう。開封後は、茶缶など密閉性&遮光性ある容器に移して冷暗所に。その際、パッケージの口を閉じて、缶で保管して。長期間使わないのならば、チャック付ビニール袋に入れて冷蔵庫へ。使うときは常温に戻してから。でないと、温度差で茶の鮮度が損なわれてしまう。

Q 茶葉を使いきれそうにもない。いいアイデアある?
A ブレンドしたり、アルコールに加えたり……と自由自在!

「茶葉には賞味期限がある」ということは、その期限内に飲みきらねばならない! ということ。まもなく期限切れ、はたまた、せっかく入手したが「ちょっと好みと違った」という場合におすすめなのが“ナニかと合わせてしまう”こと。水出しした茶を炭酸水やトニックウォーター、ジンと混ぜてもいいし、煎茶ならば、ラフランスのスパークリングワインと混ぜて(1対1の割合で)、レモンやキウイフルーツをあしらっては? カクテル感覚であれこれアレンジ、お試しを。

Q 茶葉に賞味期限はあるの?
A あります。

パッケージは情報の宝庫。

茶葉のパッケージに記載されている賞味期限。これは封を開けずに直射日光を避け、熱くならない涼しい場所に保存している場合のこと。おもに袋詰めしてから1年(※6カ月のものもあり)。冷凍保存ならば、2年程度は風味はほとんど変わらないだろう。ちなみに日本茶は紅茶や烏龍茶とを異なり、製造時に酸化発酵工程がないため、保存時に“酸化による品質劣化”が想定されるので、おいしく飲める期間が短くなっている。

日本茶のおいしさを伝える言葉

水色
抽出した茶の色のことで<すいしょく>と読む。煎茶は「金色透明・明るい黄色」がよしとされる。

香気
300種類以上の香気成分が含まれており、煎茶では「爽快な若葉の香り」と「こうばしい香り」のバランスが重要。

滋味
淹れたお茶の味の意。旨みと渋みがほどよく調和されているものがよく、良質のものほど旨みが強調されている。

茶殻
茶を淹れたあとに残る茶殻で品質がわかる。青々とした緑色で、葉の毛羽立ちがなく整っているものがよしとされる。

日本、いや世界で唯一の“ティーバーテンダー”
松本貴志さんが考える、日本茶の魅力とは?


昼間は「カネ十農園ブランド」の茶をメインにしたカフェ、夜のバータイムには、茶をいかしたさまざまなカクテルを提供する「カネ十農園 表参道」。畳でできた天板をしつらえたカウンターは全17席。茶畑もつくられ、いずれはお茶摘み体験もできるそう。

さらには隣接のモッツァレラチーズ工房によるフレッシュチーズとのペアリング日本茶や、お茶を使ったチーズも考案中!? そんな日本茶への好奇心をくすぐるショップを切り盛りするのが松本貴志さんだ。ダンサーであり、バーテンダーとして活躍したのち、「土づくり」をしたいと思い立ち、縁あってカネ十農園に。

おいしい茶に魅せられた松本さん曰く、「われわれ日本人は“間”や“空間”を大切にしている民族です。現代人は忙しなく過ごさざるをえないでしょうが、お茶を淹れる、そのお茶をいただくという時間を持って、ゆったりと過ごしていただければ」

ライフスタイルに一服の茶を取り入れる“きっかけ”がここにはある。

カネ十農園 表参道

CAFE&BAR


表参道 6/27 オープン
住所:東京都渋谷区神宮前4-1-22
電話:03-6812-9637
営業時間:10:00〜21:00
休み:月

 

『デジモノステーション』2018年8月号より抜粋。