え、コレ本当にケータイ?B&Oとサムスンがコラボした16万円オーバーの高級携帯電話【2007年】

今月のヘンタイ端末はこれだ!

B&O(サムスン)
Serenata
販売価格(当時):約16万円

世界最高の音質、数字キー無し操作、スライドギミックの美しい高級携帯

音にこだわった携帯電話やスマートフォンはこれまでいくつも製品化されているが、音響メーカーとコラボした製品は多くない。

2007年にサムスンがデンマークの高級オーディオブランド・バング&オルフセン(B&O)とコラボレーションしてリリースした携帯電話『Serenata』は音楽性能だけではなく、その特異なデザインとギミックだけでも歴史に残る製品だ。見た目はスマートフォンに見えなくもないが、システム的には携帯電話である。

この『Serenata』は当時の流行も取り入れた最先端の製品でもあったのだ。ディスプレイは2.26型の正方形で、当時としては大型。その上にはiPodのようなジョグホイールを装備する。このジョグホイールで数字や文字を入力するため、『Serenata』には10キーが存在しない。

さらには本体には4GBのハードディスク(HDD)を内蔵しているのだ。当時はまだメモリカードが高価だったことからHDDを採用したのだろうが、落下の恐れもある小型端末にHDDを搭載するのは勇気のいることだ。筆者の知る限りHDD搭載端末は2005年登場の『Nokia N91』のみで、他社でHDDを搭載するメーカーは無かったのだ。

そして本体をスライドさせると背面からスピーカーが現れる。こんなデザインの携帯電話は『Serenata』以外には見たこともないはずだ。

このスピーカーはギミックを楽しむ見掛け倒しのものではなく、音楽を再生するとこのサイズからは想像もできない美しい音色を響かせてくれる。アンプはB&OによるICEporwを搭載。スピーカーはもちろんHi-Fiサウンド再生に対応する。

内蔵HDDには約1000曲の音楽が保存可能だったので、一般的な消費者ならば手持ちの音楽をすべて『Serenata』に保存して持ち運ぶことができただろう。

価格は約1000ユーロで、当時のレートで16万円となる。今の『iPhone X』よりも高価だが、高級オーディオ機器であり、しかもデザインと質感にも優れていることを考えれば安いほうなのかもしれない。

本体は外周をツヤを抑えた樹脂素材とし、フロントや背面に金属素材を採用している。金属製のホイールは回転も滑らかで上下左右四方向へのクリックも小気味よくきまる。背面のスタンドも精度高く開き本体を適度な角度で立ててくれる。PCとの接続は金属製のクレードルを使い、本体下部の端子経由で充電や音楽データの転送が可能だ。

サムスンはB&Oブランドで2005年に最初のコラボ端末『Serene』を発表している。両者の技術を合わせることで世界一の音楽携帯電話を作り上げ、携帯電話販売シェアトップのノキア、2位モトローラを追い抜こうと必死だったのである。

しかし2代目コラボ製品となる『Serenata』の前にアップルから初代iPhoneが登場。iTunesの音楽を自在に聴けるスマートフォンとしても大きな人気となった。『Serenata』の高音質という売りはオーディオマニア向けのものとなってしまったが、本気で作り上げた高級品だけのことはあり、サムスンのブランド力を高める効果は十分あったのだ。

山根康宏(やまねやすひろ):香港在住のジャーナリスト。世界の携帯電話事情を追い求め、1年の約半分を海外で過ごす。携帯電話1500台、SIMカード500枚以上を所有するコレクターでもある。

『デジモノステーション』2018年10月号より抜粋。