“実は誰でも悩みがある”って教えてくれる『おしっこちょっぴりもれたろう』|親と子のブックシェルフ

本は、未知なる世界へと連れていってくれる身近なアイテム。とはいえ、毎日たくさんの本が発売され、さらにはかつての名著とも併せると……その数は果てしなく、どう選んでよいものやら。“わが子のため、自分のため”に、家に連れて帰ってあげたい1冊──。今回は、『おしっこちょっぴりもれたろう』をどうぞ。

生み出す絵本が次から次へとヒットする、ヨシタケシンスケさん。クスッと笑えて、子に寄り添い、オトナも納得な“ヨシタケワールド”に親子でファンという方も多いはず。この『おしっこちょっぴりもれたろう』も、そのタイトルからして、子どもは「おしっこの話!?」と興味津々に。となると……いわゆる幼児向け? 下ネタ? といぶかるかもしれないけれど、いえいえとんでもない! たしかに“おしっこ”がキーワードなのだけれど、それは物語のきっかけにすぎなくて。世の中にはいろいろな悩みがあって、密かにみなそれを悩んでいるということに気づかせてくれる1冊なのだ。

おしっこをちょっぴりもらしてしまうものの、「ちょっとなんだからいいじゃないか!」と胸を張り、もれたろうは、お母さんに見つかる前に外へと出かける。「洋服を着ちゃえば、傍目には“もれ”ていることなんか分からない」と悟ったもれたろう。さらには「自分以外の人も“もれ”ているのではないか?」と、ハッと思い付き、町を尋ね歩く。

そもそも、おしっこが“もれちゃう”のは小さな子ども=もれたろうと同世代。なのに、もれたろうがリサーチするのは、その年代とも限らない。なんと、もれたろうはいきなり、年配の紳士に声をかける。「なんだキミはしつれいな」と憤られるが、その紳士の表情からするに……もしや“もれ”ているのでは? と読み手は思う。それなりに齢を重ねた身には、ハッっとするに違いない。そうなのだ、“もれ”は、小さな子どもにも、そして大きなオトナにもデリケートな問題なのだ。

本書は全48ページ。もれたろうの“冒険ことリサーチ”はあっという間に大団円を迎える。そのひとつひとつをここで紹介するわけにはいかないので、あとは実際に手を取ってから。

生きていれば、誰しもがナニかに悩んでいるし、ナニかしらに困っている。そこに、他人が気がつくか気がつかないかは……人それぞれ。いや、気づかないからといってガッカリする必要はなし。だって、一見、誰も悩んでいるようには見えないのだから。でも、そこにふっと気がついたら、手を差し伸べてもいいんじゃない? なんてことを、もれたろうは教えてくれた。でも「差し伸べなくたっていいんだよ」って、もれたろうは言うかな。

『おしっこちょっぴりもれたろう』(PHP研究所)
ヨシタケシンスケ 作・絵
価格:1080円