今年で120周年!パリモーターショーではルノーやプジョー、BMWのコンセプトカーが百花繚乱!

 

今月のテーマ
#13 Paris Motor Show

世界初のモーターショーとして、1898年に初開催されて以来、長い歴史を誇るパリ国際モーターショー、通称、”パリ・サロン”。120周年を迎える今年は、自動車のみならず、モビリティやテクノロジーまで守備範囲を広げて、移動の最先端を見せるショーへと変貌した。移動の自由を重視するフランス発のモビリティの未来を紹介する。

自動車を発明したのは実はフランス人

自動車を発明したのは、実はフランス人だ。18世紀にフランス陸軍のニコラ=ジョセフ・キュニョー大尉が、蒸気機関で動く砲台を積んだ車両を発明したのが、世界初の自動車とされている。不出来な試作車だったようで、テスト走行中に事故を起こしてしまったらしいのだが、それはさておき、1898年に世界初の自動車レースを開催したのもフランスでのことだった。1893年に世界初のナンバープレートを導入したのも、フランスなのである。

そんなふうに、自動車の初期の歴史を繙くと、当時のフランスが技術立国であり、自動車の開発でもリーダーシップを発揮していたことがわかるだろう。だからこそ、世界で初めてモーターショーを開催したことにも頷ける。

早速、モーターショーの会場に足を運んでみよう。会場のあるポルト・ド・ヴェルサイユが位置するのは15区と、パリのはずれではあるが、パリ自体がコンパクトゆえに、中心地から地下鉄やトラムで気軽に行ける。

まずは、このショーの主役であるフランス車メーカーから見ていこう。2040年までにガソリン車もディーゼル車も販売を禁止すると宣言しているだけあって、電気自動車のコンセプトカーが百花繚乱といった様相だ。

日産、三菱といった日本車メーカーとアライアンスを組むルノーは、AI、自動運転、電動化といった新技術をふんだんに盛り込んだコンセプトカーを立て続けに発表するという、非常に華やかなプレゼンテーションだった。

ルノーではこれまで、2017年9月のフランクフルト・ショーで「Symbioz」、2018年3月のジュネーブ・ショーで「EZ-GOコンセプト」と、国際格のモーターショーごとに“ロボットカー”のコンセプトを発表してきた。

1968年にデビューした過去の名車、プジョー『504クーペ』からインスピレーションを得たエレガントなクーペ・スタイルのボディ。室内は、木目調パネルとベルベット製のシートを備える。正面の49インチスクリーンに加えて、ドアに29インチ、サンシェードに12インチと、それぞれにスクリーンが搭載されており、ロータリーセレクターと6インチタッチスクリーンを使って車両の操作系統にアクセスできる。

今回のパリで発表された「EZ-ULTIMO」をもって、ロボット・カー三部作を完成させたのだ。簡単に言えば、自動運転の機能を積んだ超高級リムジンであり、パリのようなメガシティを訪れる人に向けて、プレミアムな体験やプライベートな移動空間を提供する。

地を這うようなスポーティなデザインだが、アクティブサスペンションを採用することで、車高を調整できる機能も持つ。4輪操舵によって、最小回転半径は5.8mと、全長×全幅×全高=5700×2200×1640mm、ホイールベースは3880mmの大柄なボディから想像するよりは、はるかに小回りが効く。専用アプリ「EZ-ULTIMO」で1日、1時間といった単位でオンデマンド利用ができ、高級ホテルや航空会社の送迎用に使わることを想定しているという。

いかにも未来の乗り物といった雰囲気のエクステリアデザインは、パッと見ただけではどちらが前か後ろなのかすら迷ってしまう。ルノー曰く、フランス芸術のエレガンスさを盛り込んだデザインで、大理石や木材といった高級感のある素材を採用するなど、おおよそ従来のクルマの概念からははみ出している。

ルノーは商用車にも強みを持っており、パリ・サロンの直前にドイツ・ハノーバーで開催された商用車ショーで発表した『EZ-PRO』もパリに持ち込んだ。自動運転の機能を搭載したワンボックスの商用EVで、物流分野でのラストワンマイルでの使用に加えて、シェアモビリティにも対応できるフレキシブルな設計だ。配達時間と場所を指定して、コンシェルジュによる受け取りに加えて、スマホでのワンタイムキーを使えば、『EZ-PRO』自体がロッカーとなって荷物を受け取る指定もできる。

過去と未来が融合した近未来のコンセプトカー

1基のモーターを積む電気自動車であり、近い将来、パリへの乗り入れが規制されるエンジンは搭載していない。レベル4以上の自動運転の機能を備えており、AIの採用によって、より自然な運転ができるという。乗員は向かい合わせに寛いで座れるシート配置になっている。

ドアがスライドするとともに、ガラスバルのルーフも跳ね上がる格好で、乗り降りもエレガントにできそうだ。運転手もいないプライベートな空間で、最大でも3人までで乗り合って、外の景色を眺めながらリラックスしてパリを観光することができるなんて、贅沢の極みと言っていい。

ルノーと並ぶフランス車の両翼であるPSAプジョー・シトロエン・グループからも、未来を感じさせるコンセプトカーが目白押しだった。プジョーからは、“未来のドライビングプレジャー”を提供すると謳う『e-Legendコンセプト』が登場した。

電動化、コネクテッド、自動運転といった次世代技術を満艦飾なのは言うまでもないが、その外観は、過去のプジョーの名車に数えられる『504クーペ』を彷彿とさせるモダーン・クラシックなデザインを与えられている。

内装でもウッド素材やベルベットを使ったクラシックな雰囲気を演出する一方で、装備はかなり未来的だ。49インチのデジタルスクリーンとオーディオシステムがぐるりと乗員を囲むようにデザインされており、自動運転モードのときには、大型スクリーンでデジタルコンテンツを存分に楽しめる。

もう一つ、プジョー、シトロエンに続く、第3ブランドとして2015年に独立した「DS」からも注目のコンセプトカーが登場している。新世代のDSとして、日本にも上陸したばかりのフラグシップSUVの『DS 7クロスバック』にPHV版を追加したことに加えて、続く第二弾として、『DS 3クロスバック』のワールド・プレミアと、そのEV版たる『E-TENSE』を発表したのだ。

実のところ、スペックだけでこのクルマを語るのは、限界がある。『DS 3クロスバック』とも共通するが、ポップアップ式のドアハンドルは、近未来感を演出すると同時に、ネイルをした女性ドライバーがエレガントにドアを開けられるための配慮でもある。室内を見回すと、高級ブランドのバッグのように丁寧なステッチが施されたとトリム類が目に留まる。

アイシンでは、2018年1月にアイシン・グループ取締役社長に就任した伊勢清貴氏が登壇。『DS7クロスバック』のプラグインハイブリッド仕様である『E-TSENSE』に採用された1モーター式PHV用トランスミッションのワールドプレミアを行った。

フランスが誇るスーパー・スポーツカー、ブガッティのなかでも、 420km/h もの最高速を誇る『シロン』……かとおもいきや、100 万個以 上のレゴ・ブロックを作って組み立てられたもの。ただのレプリカかと 思いきや、これまたレゴ用のモーターを組み込むことで、20km/h とい う低速ながらブガッティの公式テストドライバーであるアンディ・ウォ レス氏がテスト走行をしている。タイヤとシートベルトとブレーキ以外 は、すべてレゴで組み立てられており、リアスポイラーやスピードメー ターも可動する。

フランスらしい柔軟さが未来の移動を自由にする

ドイツ車勢も、パリでは電動化に舵を切ってみせた。BMWでは、大黒柱である『3シリーズ セダン』のワールド・プレミアと『X5』のが大きな話題をよんだが、同時にハラルド・クルーガー会長自らが登壇し、今後の電動モビリティの開発スケジュールをアナウンスしたことも印象的だった。

Vice President Development Electrified Drivetrains
「2008年からiシリーズのプロジェクトをスタートしてきました。その後にPHVのラインナップも広げ、さらに今後も電動モビリティの充実をはかり、販売も強化していきます。BMWでは、これまでエンジン車の走りの魅力を追求してきたように、電動モビリティならではの”駆け抜ける歓び”を追求していきます」

左/BMW『X5』のHead of Projectを勤めるJohann Kistler氏、右/Product Managerを勤めるMarco Moeller氏。
「コネクティビティ、ドライバー・アシスタントシステムなどの最新技術をアップデートし、内外装ともに高級感を重視しています。来年には、PHVの発売も予定しています。ミッドサイズのスポーティなSUVの元祖ゆえに、デザインでも、走行性能でも、“BMWらしさ”を重視しています」

2019年にMIN『エレクトリック』、2020年にSUVのBMW『iX3』、2021年には自動運転機能を搭載すると想定される『BMW iNEXT』、同年に2021年にBMW『i4」と、矢継ぎ早にラインナップを拡充する方針。

「3シリーズ」には、BMWの次世代表示および操作システムとなる「BMWオペレーティングシステム7.0」が搭載される。直感的に操作できることを重視して、わかりやすい配置や構造にこだわって設計されており、さらにカスタマイズできる表示とすることで、適切な情報をドライバーに伝えられるという。メーターパネルには、ナビが組み込まれており、センターコンソール上のコントロールディスプレイには、カスタマイズされた情報が表示される。iDriveコントローラー、タッチ式、音声入力、ジェスチャーといった多様な操作方法から選ぶことができる。

メルセデス・ベンツは、電動車ブランドのEQ初となる『EQC』を発表した。全長×全幅×全高=4761×1884×1624mmのボディサイズの割に、パワートレインや電池を床下に潜ませる構造ゆえに、室内は広々とした印象だ。EQ専用インターフェイス「MBUX」を搭載し、音声コマンドで起動すると、車輌情報の表示はもちろん、ナビや運転モードの設定も可能だ。

今年初となる試みで、市街地でエコカーに乗れるイベントが用意されていた。その中から、フランスの自動車部品メーカーであるヴァレオが持ち込んだデモカーに試乗した。今回試乗したのは、48Vシステムを積んだ2人乗りの小型EVとPHVのテスト車だ。

ヴァレオ2人乗りEVでは、自社製48Vシステムに自社製モーターを組み合わせることで、最高速は100km/hに達し、1回の充電で150kmの走行が可能だ。

48Vシステムを積んだテストカーの開発を担当したLouis Allen氏。48V化するメリットの一つは、充電時間の短縮にある。欧州で一般的な家庭用の200V電源を使えば、4−5時間でフル充電が可能だ。40kWhのバッテリと15kWの電気モーターを積んでおり、約60kmの航続距離を確保。70km/hまではEV走行が可能だ。

パリのような混雑した町中をスイスイと走るには、超小型の2人乗りピュアEVは最適だ。もう一台、市販の『ゴルフ』に48Vシステムを組み込んだPHVにも試乗した。渋滞するパリの町中では、ストップ&ゴーが多く、電気モーターの力強いトルクが頼もしい。

フランスでは、古くから「移動の自由」という考え方があり、それはつまり、「誰でも、いつでも、好きなときに、好きなところに移動する」権利があるということだ。

自動車の発明は移動を飛躍的に自由にしたことは間違いないが、さらに今、移動そのものを消費するモビリティとして、次世代の移動を考え始めるにあたっても、非常に重要な考え方だ。

しかも、フランスという国は柔軟に新しいものを取り入れていくことに長けている。パリサロンでは、近い将来、手に届く形で、快適でクリーンな移動を手に入れられることを感じさせてくれた。しかも、ときにはラグジュアリーであったり、移動の楽しさに溢れていたりと、未来の移動がカラフルになりそうな予感を運んでくれる。

ヴァレオのR&D部門を率いるジャン-フランソワ・タラビア氏。同社では、電動化だけではなく、自動運転の機能も独自開発している。自社開発した自動運転の機能を搭載したデモカー『Drive4U』では、より人間らしい運転を目指して、高速道路での走行や信号でのストップ&スタートはもちろん、交差点やロータリーのように高度な判断が必要な場所でも、工事中や表示に不備のある道路でも走行ができる。

フェラーリは、台数を限定して生産する「ICONA」シリーズを発表。その第一弾として、『モンツァSP1』/『モンツァSP2』を発表した。いずれもフェラーリ『812スーパーファスト』と同じ6.5リッターV12エンジンに10psのスープアップを施し、“バルケッタ”と呼ばれる簡易的なオープンボディに搭載する。写真の『SP1』はシングルシーターで、『SP2』は2人乗りとなる。

川端由美(かわばたゆみ):自動車評論家/環境ジャーナリスト。自動車の環境問題と新技術を中心に執筆するほか、海外の展示会取材も積極的に行なう。International Engine of the Year選考委員なども務める。

『デジモノステーション』2018年12月号より抜粋。