亡き家族のLINEアカウントが別人のものに!? 故人の個人情報は今後どう扱われるべきか

亡き妻のスマホのLINEがある日突然リニューアル

亡くなった人のブログやSNSアカウントの追跡調査をしていると、まれに次のような日記に出合うことがある。

「昨日、妻のスマホを開いたところ、LINEのホーム画面が違う方のお名前に変わっていました。もう妻のスマホからは認証ができず、グループの退会などはできません。以前から友だち登録している方は、どうか個別に削除してください」(※一部要約)

3年近く前に亡くなった女性の闘病ブログに今年の冬頃掲載されたものだ。本人の没後は夫である男性が引き継いで管理しているが、新たな投稿は少なく、納骨を済ませた後は命日や年末などの節目に短文をアップする程度に留めている。

だから、三回忌(没後2年)を数カ月過ぎたこの日記はタイミング的にも異彩を放つ。「昨日」という書き出しからも、急いでアップしたかった思いが読み取れる。

さて、こんなことは本当にあるのだろうか?

ある。しかも、これからはさほど珍しくない現象となるかもしれない。

電話番号は数年で再利用される ひもづきのLINEも吊られる

亡くなった人のスマホや携帯電話は、そのままにしていると月額基本料の支払いが続く。あえてそのままにしているケースもあるが、多くの場合は遺族がキャリアショップなどに赴いて契約解除の申請をして、電話番号を手放すことになる(引き継ぎやMNP申請も可能だが、ここでは割愛)。

その電話番号はキャリアの手に戻った状態でしばらく塩漬けになる。総務省の「電気通信番号規則」第4条には「電気通信番号の効率的な使用を図ること」とあり、解約済みの電話番号は基本的にいつか再利用されるルールで運用されている。

しかし、解約直後の番号をいきなり割り振ると、間違い電話が多発して混乱を招くこと必至だ。明確な期間が決められているわけではないが、冷却期間として2〜3年程度の間を空けるのが業界の通例となっている。

しかし、通信キャリアが管理しているのはあくまで電話番号のみ。LINEなど他社が運営する紐付きのサービスの行く末までは見ていない。そちらは個別に解約手続きをとらないと、電話番号に紐付いたまま宙ぶらりんとなる。

おそらく冒頭の事例では、女性の没後まもなくにLINEと端末はそのままでスマホの通信契約のみを解除したのだろう。電話番号は通信キャリアに戻されたが、LINEのアカウントは故人が登録しているまま。それから2年以上が経過し、冷却期間の終わった電話番号が新しい誰かのものとなり、その誰かがLINEの利用を思いつく。

LINE側はこの時点で電話番号の持ち主が変わったことを知る手立てがないため、新しい持ち主のLINE画面には元の女性が使っていたままのページが表示されることになる――。だから、初めてのLINEが中古物件状態になっていて驚いたという人も相応数いるのではないかと思われる。

こうした事態を防ぐには、電話番号に紐付けられたサービスのアカウントを把握して、通信契約の解約前に各サービスの終了や引き継ぎ手続きを済ませるしかない。しかし、ノーヒントですべてこなすのは、たとえ仲の良い家族であっても容易ではないはずだ。

となると、ゆくゆくは個人情報の漏洩やプライバシー保護に関わる深刻な問題として世の中に広がっていくかもしれない。あるいは、そうした紐付けを絶つ“デジタルシュレッダー”のようなサービスを生むきっかけになるのかもしれない。

いずれにしろ個人的には、「自分のものと思っているものが実は借り物」という案外よくある現象を端的に示す事例として、ただただ興味深い。

お墓も多くは借り物 ブログやSNSのURLももちろんそう

自分のものと思っているものが実は借り物。身近なものでは、職場にある机やパソコン、もしくは菩提寺に管理してもらっている先祖代々のお墓などが典型例だろうか。インターネットが絡むとほとんどが該当するので、デジタル方面は枚挙にいとまがない。

そのなかでも注意しておきたいのはSNSのアカウントかもしれない。退会した後に、以前使っていたアカウントやそれに伴うURLが再利用されるか否かは運営側のスタンスにかかっているからだ。

たとえばTwitterは「アカウントを削除した日から30日が経過すると、削除したアカウントのユーザー名やメールアドレスを別のアカウントで使用できます」と明記している。30日間の猶予期間を過ぎた後は、以前使われていた文字列が誰でも再利用できるというわけだ。

Twitterのヘルプセンター。抹消すると30日後に解放されるため、中身を全削除して鍵をかけたうえで保持する作戦をとる遺族も少なからずいる。

フォローや過去ツイートがそのまま引き継がれるわけではないが、過去に貼ったリンクが1ヶ月後にはまったく知らない誰かのアカウントにつながっているといったことも普通に起こりうる。

一方で、GoogleやYahoo!、アメーバのように、元のユーザーが抹消した後は永久的にアカウントの文字列を使わないスタンスのサービスも多い。ただし、極論でいえば、これらのサービスが撤退したらドメインを解放することになるので、その下層に連なるユーザーページのURLも誰かの手に渡る可能性はゼロとはならない。インターネット上において絶対安住の地というのは存在しないということだと思う。

Googleアカウントのヘルプ。本人による再利用の可能性を考慮して、アカウントの削除処理から実際の抹消までには一定の猶予期間をおいている。

まあ、古代ローマの昔から「万物は流転する」などと言われているわけで、絶対的な所有という感覚自体がかりそめだ。ただ、かりそめが溶けるタイミングはモノによってバラバラ。LINEページの件は、そのタイミングが数年で訪れるということに過ぎないということなのかもしれない。

古田雄介(ふるたゆうすけ):デジタル遺品の現状を追うライターで、デジタル遺品研究会ルクシー理事。著書に『故人サイト』(社会評論社)『[ここが知りたい!]デジタル遺品』(技術評論社)など。

『デジモノステーション』2019年1月号より抜粋。