故人サイトの閉鎖後、“跡地”に全く別のサイトが…!?他人事ではないドメイン再利用事情

闘病ブログがナゾの治療法サイトに、“永田”が“長田”に・・・・・・
ドメイン切れを起こしてもURLはネット上から消滅しない

前回、故人のLINE画面が数年後に赤の他人のものになりうる事例を取り上げたが、故人が残していったサイトも同じように“居抜き物件”化する可能性がある。とくに生前から人気があり、レンタルサーバーなどで独自ドメインを使っていたサイトほど、狙われるリスクが上がる。

高校1年時に発症した白血病と闘ったある男性の応援サイトは、男性の没後3年ほど経った2011年秋にレンタルサーバー会社の簡素なページに切り替わった。それから1年が過ぎた頃には、ドメイン切れページで有名なリュックを背負った女性の写真つき英文画面となり、2013年には薄毛対策の新手の療法を伝えるページが表示されるように。

以降3年間は動きがなかったが、2016年春からは「Forbidden(閲覧禁止)」という注意書きだけのページとなり、現在までサーバーへのアクセスが禁じられた状態となっている。

元衆議院議員・永田寿康氏のホームページは2006年に議員辞職してしばらく後に閉鎖され、2009年初頭に亡くなった後も長らくドメイン切れ状態となっていたが、2011年に突然「注目民主党議員総合情報比較HP【nagata-h】」というほぼトップページだけの日本語サイトに変わった。

以降もコンテンツページが追加されないまま放置され、2013年末に「長田の思いつき」というブログ形式のサイトにリニューアル。ブログは永田議員との関連性がほぼなく、健康食品や痛風の治療法、低予算で開く結婚式の広告など、とりとめもない記事が散発でアップされていたが、この記事を書く直前にすべて消去されて、2018年末時点では完全なブランクページとなっている。

「http://www.nagata-h.net/」の変遷。永田議員の公式サイト時代から、ドメイン切れページを経て議員関連情報をうたうサイトとなり、まもなくして名前以外は無関係なブログ「長田の思いつき」に変化。現在は再びブランク状態となっている。

現存しているものでは、ポップな文体で肺ガンと闘う日々を綴った奥山貴弘さんのサイト『TEKNIX』が印象的だ。2005年4月に33歳の若さで亡くなった後も、闘病記に新風を巻き起こしたサイトは多くの読者に愛され、遺族や周囲の協力もあって8年以上もインターネット上に存在し続けた。

残念ながら2013年5月に閉鎖となったが、そこから間髪入れずに「肺癌になってしまったら」というサイトがオープンしている。管理しているのは、同病を患って奥山さんの書籍に刺激を受けたと語る人。関連性はあるが、直接の面識はないことが読みとれる。

これらのサイトは何度も中身が変わっているが、当然ながらURLは同じまま。URLが生きているということは、かつてのサイトに対してつけられた数多のリンクやブックマークなども切れていないということだ。どうしてこういうことが起こるのだろう?

人気サイトのオールドドメインは構造的に再利用されやすい

根本にあるのは、サイトのアドレスはどこまで行っても借り物という事実だ。

サイトの閉鎖などで契約を解除したページのアドレスは運営元に管理が戻るが、ドメインをレンタルサーバーで借りていた場合は、数ヶ月のブランク期間を過ぎると再び売りに出されるのが普通だ。提供会社にもよるが、「.jp」なら1カ月ほど、企業向けの「.co.jp」なら半年程度、「.com」や「.net」などなら2〜3カ月で開放されるケースが多い。

提供会社が売りに出している段階では、新規も中古も料金に違いはないが、ドメインごとに値踏みする仲介業者に買い取られてしまうと、モノによってビンテージ価格がつけられることになる。

長らくアクセス数が多かったサイトの「オールドドメイン」なら、前述のとおり膨大なリンクが生きているし、優秀な運用実績も付いてくる。Googleによるサイトの評価基準が複雑になった現在においても、往年の人気サイトのドメインは閉鎖したあともなお人気が衰えない。

つまるところ、アクセス数が多くて運用期間の長かったサイトは、閉鎖しても延々と再利用される可能性が高い。

かつての人気はドメインに染みこみ、元の持ち主の知らないところで好きなように利用される。元サイトの内容はもはや重要ではない。引き継ぐのも、まったく無視するのも自由だ。永田元議員のサイトなどは、最後は申し訳程度に「ナガタ」の響きを残しただけになったが、この手のオールドドメインではよくある悲哀といえる。

インターネット上の空間を本当の意味で所有するのは無理

契約解除後に再利用されるのは電話番号と同じだが、電話番号は原則として元の持ち主の履歴を背負わない仕組みになっている。そういう意味で、ドメインの再利用事情は現実の不動産のほうが近いかもしれない。

手放した土地や物件はもう元の持ち主の自由にはできないけれど、住所は変わらない。それに店舗だったりしたら、常連さんがいることもあるだろう。飲食店や書店、コンビニなどなど。オーナーが変わって離れる常連さんもいるだろうが、そのあたりはあまり気にせず立ち寄るという人もいるはずだ。その場合、新店舗のオーナーは旧店舗が育てた「定期的に立ち寄る習慣を持つ常連さん」という資産も無償で引き継いだことになる。

いずれにしろ、インターネット上の空間は本当の意味での所有はできない。土地のように購入することもできない。基本的には賃貸か無償貸与ということになるし、契約者が死亡したあとに遺族に引き継げない規約のサービスも少なくない。

つまるところ、インターネット上に永久はない。人生スパンでみたらとても一時的な場だ。居抜きの件も含めて、そう捉えて向き合うのがちょうど良いと思う。

古田雄介(ふるたゆうすけ):デジタル遺品の現状を追うライターで、デジタル遺品研究会ルクシー理事。著書に『故人サイト』(社会評論社)『[ここが知りたい!]デジタル遺品』(技術評論社)など。

『デジモノステーション』2019年1月号より抜粋。